第89話 王都に到着
私達は王都に入り、宿屋[ヒカリ]に着いた。残念ながら、今の私には王都の街並みを見るなんて、心の余裕はなかった。
宿屋では黒髪の好青年が迎えてくれた。
「話はアリムちゃんから聞いてるよ。ガバイナさん。アリムちゃんはこれを置いていったよ」
と、宿屋の主人が取り出したのはルビーのような色をした液体。
見た目的にポーションではないっぽい。
「恩に着ます。ラス……ん"っ。ウルトさん」
「いんや、御礼ならアリムちゃんに言ってくれよな」
「ところで…そのアリムは、今どこに?」
「あれ、聞いてないか? あの娘いま、マンティコラの討伐に向かってるぜ。帰ってくるのは、早くても明日になるんじゃないか?」
え…………でも待てば会える。明日には会えるんだ。
…アリムが有夢だとは限らない。それはわかってるつもり。でも…でも…。
ガバイナさんは、その赤い液体をラハンドさんに飲ませた。
すると、なんということだろう。飲んだ瞬間、ラハンドさんが飛び起きたんだ!
あの薬、危なくないよね?
「ヒャッハーーー! 気分がいいぜぇぇ!? いったい、これはどうなってんだぁぁぁぁ!?」
「さあな。アリムが作った物だから、毒ではないだろ」
「ん? そうか。あぁ、そうだ。ガバイナ、助かったぜ、ありがとよ」
「何を言う。昔からの仲ではないか。アリムにも感謝しろよ」
「あたぼうよ!」
「「はっはっはっはっはっはっ」」
男の友情ってやつ? 本当に仲がいいんだね。
ラハンドさんは今度は私達に御礼を言った。
「マーゴ、ゴッグ、ミカっ! ありがとよ。看病してくれてよ」
「私…私には背中をさすることしかできなかったの…」
「俺なんて、助けてもらったのになにも……」
「私もです」
「いやぁ、オレはお前らが無事だったらそれでいいんだぜぇぇぇ! それとラス…おっと、ウルトの旦那、ありがとうごせぇやす、突然来たのに」
「いやいや、構わないさ。ガバイナさん、ラハンドさん、そして、俺の仲じゃないか」
「そうですねぇ…」
あれ、あの黒髪の好青年、もしかしてラハンドさん達より歳上だったりするのかな?
二人とも敬語だし。でも仲は良さそうだし。
黒髪の好青年……こと、ウルトさんは、私のことをラハンドさんに聞いた。
「ラハンド…。この娘は?」
「この娘は森の中で救出したんでさぁ。しかし…記憶が喪失しているようでして」
「そうか、それは……君、災難だったね。お名前は?」
私は名前を答える。
「ミカって言います」
「そうか、ミカちゃんか。アリムに負けないくらい可憐な顔してるね。きっと、彼女と仲良くなれるよ」
「はい」
もし、アリムが有夢だったら、既に仲が良いってことになるのかな?
自惚れじゃないよね? 仲良いって思ってるの、私だけじゃないよね?
折角、有夢と再会できるかもしれないの。いつ、いつ私の気持ちを…………………。
あ。アリムって話を聞く限り女の子じゃん。
そう、考え、私の顔が絶望にそまり、周りの人たちに心配がられた時に、この宿の戸が開いた。
戸に立っていたのは、赤髪のとても愛くるしい美少女だった。
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