第36話 村の英雄達の回復
なんか、病室がうるさい。グレートポーションなんて何個でも作れるのに。ほら、もう10本できたもん。
ダダダダダダダダダダダーッ!!
ルインさんとオルゴさんが慌てた様子で来る。怪我人が、あまり動かないで欲しいな。
「あれ、ルインさん、オルゴさん、安静にしてなきゃダメじゃないですか……」
「おめ、おめ、おめ……これ……作ったって……本当なの……か?」
オルゴさんの手には、歪な形のフラスコの中に入っているグレートポーションが握られている。
まだ飲んでなかったの……。
オルゴさんの問いに答えるため、さっき作り終わった10本のグレートポーションをみせる。
「うわー、うわー……えぇ…本当かよ……」
嗚呼、オルゴさんが壊れた。ルインさんも相当慌てているが、無理に冷静さを残そうとしている。
ルインさんが口を開いた。
「こ……これが……何かわかる? ……アリムちゃん?」
「ポーションです!」
「いや、うん。そうなんだけどさ。君がね、作ったポーションは、拳ぐらいの大きさの宝石は買えるぐらいの価値があるものなんだよ?グレートポーションなんて、本当は作るのに時間と労力と専門の魔法具が無いと作れないのに!」
「え? そうなんですか?」
「そうなんだよっ、君は! すり鉢と濾し器だけで作ってるよね。凄いことなんだ! わかるかい?」
「いえ、あまんまり…」
「君は、伝説上の人物と同じことしてるんだよ?」
マジかよ。本当に調子乗り過ぎたね。
「アリムちゃん……君は、何者なんだい?」
うー、こういうこと聞かれるのが嫌だったから今まで本気出さなかったのに~~っ! やっぱり聞かれたー!
とりあえず、しらばっくれよう。
「覚え……て……ないで…す」
「そうだったね……。でもそれも、明日には王都に出発するから明々後日の昼には役所に聞けると思うんだ」
うまくしらばっくれれた。まぁ、聞いても出てくるわけないんだけど。
それよりも、明日なのか。もう明日出ていくのかな?
リロさんは大丈夫なのだろうか。
「え……休まないで良いんですか?別にボクは次の馬車でも……」
それにはオルゴさんが答えた。
「あのなぁ、アリム。そのポーションがありゃリロでも今すぐ完全復活して動き回れるぜ……?」
「じゃあ、予定通り明日ですか」
「まぁ…まぁ、そうなんだが。念のために聞くけどよ、本当にソレ、使っても良いのか?」
「勿論ですっ、そのために作ったんですよ!」
その言葉を聞くと、オルゴさんとルインさんは互いに無言で頷き合い、ぐびぐびとグレートポーションを飲み干した。
すると、なんということだろう。オルゴさんの傷が全て、みるみる塞がっていくではありませんか……。
「まったくよ、とんでもねぇ代物だぜ」
「リロさんとミュリさんにも飲ませて下さいね」
「わかってるよ。アリムちゃん、ありがと」
そうして二人は病室に戻っていった……。
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回復したリロさんが俺を抱きしめる。
「ねぇ、ねぇ、ねぇ! アリムちゃん、アリムちゃん! 私が危なかったの助けてくれくれたって本当っ?」
ちょ……リロさん……大き……胸が…あだっで…ぐるじぃ……。
「あ、ごめんね、苦しかったね。ねぇ、それで……本当なの?」
「え…えぇ……まぁ」
「すっご~~~~いっ!!」
また強く抱きしめられる。今度は顔に胸がくる。ヤバイ息できない。
しかも、いま俺は女の子だからな。興奮なんて……いや、するかも。
「ねぇ、リロ! それくらいに……アリムちゃんがぁ……苦しそうです」
「あっ、ごめん。大丈夫?」
「は……はひ…大丈夫れす……」
ミュリさんナイス。マジでマシュマロで死ぬとこだったぜ。
そんな俺らのところにジーゼフさんが来た。
「村の英雄の皆様方……」
「そんな、英雄だなんて……」
英雄だと言われたことに対してミュリさんが言った。しかしジーゼフさんは本気のようだ。
「いんや、英雄ですじゃ。もし皆様が居なかったら村は壊滅しておった。本当にありがとうございますじゃ。この件は報酬に上乗せを…………とは別に、是非とも御礼がしたい。命を張って村を守ってくれた5人の英雄達を讃える宴をな。今夜、宴をしようと思うんじゃ」
ん? 5人? ってまさか、俺か?
「ジーゼフさん、5人って?」
「アリム、お主に決まっておるじゃろうて。」
「ええっ!? ボク!?」
「あぁ、そうだとも。村の者に怪我人が出なかったのも奴を倒せたキッカケを作ったのもお主じゃからな。…………グレートポーションは流石に腰を抜かしたがのぅ」
「………はい……」
「まぁ、それはともかくじゃ。宴を開く。もう村のみんなは準備を始めておる。ふぉっふぉっふぉっ……あ、皆様方は休んでいてくだされ」
そう言い残して、ジーゼフさんは医務小屋から去っていった……。
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