第15話 楽しいレベル上げの時間

 来た道を戻っている最中、帰りにでも解体しようと思っていた大犬の死骸がなくなっていた。

 代わりに牙らしきものが置いてあるのみ。

 ……これはあの大犬の牙なのか? 死骸があった場所にあるから、たぶんそうなんだろうな。


 それにしても、何故に牙だけ…?俺以外に人はここら辺に居ないハズ。つまりは自然消滅?

 ウサギの死骸を吊るした時は消えなかったし、ダンジョンだと時間で消えるのかな?

 でも、毛玉の毛は残ってるから、持ってった物は残るっぽい。

 これはなるべく解体しないと。でも、落ちてる牙の状態はすごくいい。

 こういう素材だけ欲しかったらほっとくのもありかな?


 俺は一旦ダンジョンを出た。

 あの時は恐る恐る降りてたので5分くらいかかったけど、今は1分くらいで出られちゃった。

 もう夕方になっていた。

ウサギのうちの一匹の肉を2/3程食べ、眠りについた。



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 次の日。つまりはこの世界にきて5日目。


 HPとMPが全快になっていた。

 昨日、朝ごはん用にと残しておいた夕飯と同じウサギの肉(1/3)を食べる。調味料が欲しい。今、一番欲しいものは調味料。

 朝ごはんを食べ終わったので、ダンジョンに再突入!


 ………あれ?

 昨日、大犬が居たハズの場所に毛玉が居る…!? もしかして、ダンジョンって、敵がリスポーンするの?


 ………ん?

 だとしたら倒し放題?素材入手し放題?


 マジで!


 マ ジ で !


ひゃっほおおおおおおおおおおおおぅぃっ!


 今、はたから見たら、俺の顔はニヤニヤしていて気持ち悪いことだろう。

 ドラグナーストーリーでレベル上げを楽しんでる時に美花に『何ニヤニヤしてるの?気持ち悪い…』って言われたのをふと、思い出す。

 だが、ここには誰もいない。

 ずっと叫びたかった一言。死んでから叫ぶことになるとはね。



「楽しい楽しいレベル上げの時間だぁぁっ!!」



 ……ふぅ。


 それでも、まず色々と考えなくてはいけないことがある。今のMPで倒せる敵の数と復活サイクルだ。

 さらに、今は素材などは外に放置している状態。本当に袋がないと、いつの間にか魔核とかなくしちゃいそう。


 まずはMPの問題なんだけど、大体わかってるのは、今だったらウォーターエミッション二回とレベル5のウォーターボール一個で毛玉と大犬は倒せるだろうということ。

 レベル13になったからね。魔力もこのダンジョンに入ったときより30上がってる。


 合計一匹28MP。今のMP158だ。5匹倒せる。

 うーん、でも、あまり無理をするとなぁ……。これ、ゲームみたいだけど、ゲームじゃないし。4匹でやめとこう。

 さらにMPは一時間寝たら、Wと同じ数のMPが回復する。普通に過ごしていたら、MPは一時間でWの1/10回復。食事をとっても若干回復する。

 要は精神的にリラックスした分だけ回復するのだ。これ、実は一昨日確認してたりする。


一割で一時間。時計がわりにもできるよ。

だから、一割回復するたびにダンジョンを見に行けばいい。あぁ、最悪、今日は徹夜かもしれない。


 何はともあれ、まず、今回のノルマを達成しよう。毛玉を1匹倒したから、あと3匹だ。

 毛玉から毛を刈っておく。触り心地がかなりいいんだよ、コレ。サラサラモフモフ~!

 そのあと、また毛玉1匹を難なく倒す。


 そして、昨日初めて毛玉と対峙した場所に着いた。そこにはあの大犬と、その大犬が居る足元に青い何かが落ちている。なにこれ?


大犬はとりあえず倒し、それを間近で見てみる。

 ……青い肉?


 そういえば、大犬の牙が落ちていたことから、牙が正確な採取すべき部位だとすると、毛玉のいた場所にこの青い肉。

 これが採取すべき毛玉ちゃんの部位なのかも。

 とりあえずもっとこう。今回はあと1匹倒すぞ。


 一定の距離をまた進むと、今まで一本だった道が二手に別れていた。

 一方が宝箱とかあるかもしれない。

罠だったらどうしようとか考えないことにした。


 さて、どっちに進むかだけど、俺の長年のゲーム経験から言って正規ルートが、真ん中と見せかけてのもう一方のはず。いや、わかんないけどもね。

 俺は宝箱狙いでまっすぐ進むことに決めた。

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