二人だけのビーチ

「青い海っ! 青い空っ! 白い砂浜!」

「SSSランクの魔物っ、普通の生物はいないっ!」

「えへへー、つまり二人っきりだね」

「ねーっ」



 俺と美花は、二人っきりでプライベートのワールドのプライベートビーチにやってきていた。

 みんなを誘ったりもしていない、完全な二人きり。

 今日は二人だけで海を堪能するっていうコンセプトなんだ。


 皆んなでワイワイするのもいいけど、たまには大好きな人と二人で綺麗な海を眺めるのもまた、オツなものだよね。

 まあ、日常的に美花と二人っきりの方が多いんだけどね。



「それにしても、本当に綺麗な海よね……あ! でももちろん有夢の方が綺麗だけどね?」

「それ、俺から美花に言うセリフじゃないの? ふつー」

「……ふふ、じゃあせっかくだからそっちで聞こうかな」

「ん、すっごく綺麗な海だけど、美花の方が何倍も綺麗だよ!」

「えへへー」

「えへへー」



 うーん、俺たちって相変わらずバカップルだね。

 ……おっとと、いけない。このままイチャついてたらそれだけで時間を食ってしまう。せっかく海に居るんだから、それらしいことしなきゃね。



「よし。なんか、海らしいことしようね」

「海らしいことね……じゃ、こっち来て有夢」

「うん」



 美花が海辺から離れ、砂地の少し奥まった場所まで歩いていった。そして、そこにビーチパラソルとマットを敷いたあと、一本の筒を取り出す。どこからどう見ても日焼け止めだ。



「やっぱこれだよね!」

「紫外線をカットできるバリア貼ってるから必要ないんだけどね。まあ、これも一興かな」

「前も後ろもお願いねっ! 変なとこ触っていいから……! 触りまくっていいから!」

「うん、そう言うだろうなとは思ってたよ」



 美花は俺に向かって真正面を向きながら、ここに来る前に今回のためだけにあしらえた新しい水着ビキニをすっかり脱ぎ去って、マットの上にうつ伏せになった。


 手を出してこい、ということなんだろうけれども、今の俺はすっかり海で遊びたい気分だから、ほどほどに。

 

 そうして全身に隈なく日焼け止めを塗ってあげると、美花は不服そうな顔をしながらお礼を言ってきた。



「むぅ、ありがと……」

「……あー、俺もせっかくだし美花に日焼け止め塗るの頼もうかな」

「いいの? へっへっへ、そうこなくっちゃ……!」



 そういうとすぐ笑顔になる。わかりやすくていいね。

 そのかわり俺の身体が美花の戯れの犠牲になるけど……。



_____

___

_



「はぁ……堪能した!」

「そ、そっか」



 めっちゃ……堪能された。たぶん二時間くらいずっと。

 これじゃあいつも部屋でベタベタしてる俺達と何も変わらないじゃないか。

 結局まだここに来て、海を眺めるのと日焼け止め塗るのしかしてないよ。



「よぉし美花、海らしいことしようね。泳ぐのと、砂遊びするのと、スイカ割りするの……どれがいい?」

「じゃあスイカ割りで!」

「よし、そうしよう」

「ふふ、有夢から目隠ししてね」

「……変なことしちゃメだからね?」

「しないよ、たぶん」



 これは……たぶんするね。変なこと。

 まあいいや、どんとこいって気持ちでいこう。結局、俺は美花から何されても嫌じゃないしね。



「あ、目隠しの布は普通のと、私の今着けてる水 ──── 」

「普通ので」

「仕方ないなー、わがままなんだから」

「えぇ」



 どっちの話なんだか。

 美花はニコニコっと笑うと、わざとらしく体を密着させながら俺に目隠しを被せてくる。うん、お願いした通りちゃんと普通の目隠しだ。

 そして手に普通の棒を握らされ、準備は万端。



「じゃあ、スイカ置くね」

「んー」



 美花が十数歩だけ歩く音と、その先で微かな何かを置くことが聞こえる。

 それ以外の音は聞こえないから、わかりやすい悪戯は仕掛けてなかったようだ。



「よし、いいよ! さぁ、有夢! おいで!」

「じゃあ行くよー。手拍子とかのヒントは?」

「ふっふっふ……私のこと大好きな有夢なら、私の気配だけで辿り着けないかしら? もちろん、スキルは使っちゃダメね」

「……ん、もちろん余裕だよ」



 嘘はついてないよ。

 なんとなーく美花が居そうな方向に歩いて行くだけでいいんだ。俺だからできることだね。

 


「お、本当についた。えへへ、さすが有夢。私のこと好きすぎるね」

「もちろん。さ、スイカはどこ? どの方角にあるの?」

「私の胸元にいい感じの大きさのがふたぁつ……」

「それそのまま鵜呑みにして棒ふったらDVになっちゃうね」

「それは困る。えっとね、そこから右斜め下に数歩かな」

「おっけ!」



 美花の指示通りの場所で棒を振り下ろすと、カチッと音がした。

 その瞬間、砂が荒れたような嫌な予感のする物音がして……そこから次々と俺の全身に砂が張り付いていったんだ。



「え? わ、ちょ、なにこれ!」

「ごめんね有夢、急に砂遊びしたくなっちゃったの。今からこう……ほら、よくあるでしょ? 砂で頭だけ出して体埋めるやつ。それするから!」

「えぇ⁉︎ う、や、砂がお臍に入った!」

「ありゃ……我慢してねっ」



 こうして俺は美花に砂で拘束され、それ以降目隠しプラス頭だけ出した状態で色んなことされた。

 ……せっかくの海なのに、結局ひと泳ぎもしなかったんだ。

 つまりいつも通りだね!







#####


お久しぶりです。Ss侍です。

久方ぶりに脳みそが消え去ったような、ただひたすらイチャつく回を書きましたが……私、昔からこんなの書いてたんですねぇ。


話は変わりますが、本作は皆さまのおかげで、なろう版Levelmakerが累計4000万PVを突破致しました。

本当に、本当にありがとうございます!

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