陰謀

 美花ちゃんが、端的に言って狂ってしまった。

 いや、それだけならまだ良かった。付き合ってはいなかったくせに、どれだけ美花ちゃんがあゆちゃんのことを愛しているかなんて誰でも見たらわかったから。大好きな人に突然死なれたら……ああなるのもわからなくはない。


 なにより火野や桜ちゃん達が宥めたことで、学校までは来れるようになったかもしれないという情報を掴んでいた。

 ……なのに、なのに。どうしてこうなってしまったの。


 まさかまだ高校生にして一ヶ月以内に同級生のお葬式に二回も参加しなければならないとは夢にも思っていなかった。

 あゆちゃんの時と同じ。お坊さんがお経を唱え、その先には遺体が入った棺桶と天使と見間違えるほど美しい顔が微笑んだ遺影がある。


 あゆちゃんの後を追った自殺。誰もが最初はそう考えた。私だってただの事故なんかよりも先に、その説が思い浮かんだ。だってその可能性の方が美花ちゃんの性格上高いから。

 しかしうちのお父さんと、火野の親父さんを中心とした新聞・警察の二組が調べに調べ上げた結果、無人トラックの暴走による事故死であることがわかった。美花ちゃんは歩道の端で立ち止まってスマホを確認しただけ。その瞬間に轢かれた。


 そこまでわかったのはいいのだけれど、このお葬式が始まってもその暴走トラックがどこの会社のものかさっぱりわかっていない。ナンバーすらわからない。そんなことってありえないでしょ?

 しかもどのような道順を辿って美花ちゃんが居るところまで辿り着いたかも不明。だってそのトラック、美花ちゃんを轢く瞬間をとらえた監視カメラ以外に映って無いんだもの。


 それだけじゃない、不可解なのは、それだけじゃない。あゆちゃんの……あゆちゃんが亡くなるに至った植木鉢を落とした人。これもわかっていない。

 なぜなら植木鉢を落下させた人の住んでいたであろうアパートはベランダにそう言ったものを飾るのを禁止されており、その上、確認できる限り、住民は全員それを守っていた。


 ここまで謎が多いだなんて、普通はありえない。それこそ都市伝説とかそういうレベル。だから昨日の夜、私とお父さんでちょっと話し合って自分たちなりの答えを出した。

 あゆちゃんと美花ちゃんは暗殺されたのだと。それが一番符に落ちる。


 あの二人はその美しさ、可愛さからなにも体や貞操だけを狙われ続けていたわけじゃない。命を狙われたことも何度もあった。

 例えば……美しいまま剥製にしたいからと犯行に及ぼうとした人もいたし、殺してからパーツごとに分けて売り捌くと言っている人も居たって聞いたことがある。顔の皮を剥いで自分に貼り付けるんだっていう女の人も……。そういう行き過ぎた狂気的かつ組織的な変態に狙われた可能性が非常に高い。むしろそうじゃないと説明がつかない。



「ごめん、ちょっと外いくね……」

「さくら……」



 お経などがおわって、各々少しだけ休める時間になったその瞬間、桜ちゃんが目を抑えながら走ってどこかへ行ってしまった。その後を叶くんが追う。どうやら美花ちゃんを一緒に励ました火野も、の二人が気になって追うみたいだ。


 火野は今どんな気持ちなんだろう。私にとっては友達が二人も亡くなって、ひどく辛く苦しい……泣いても泣いてもどうしたらいいかわからない気持ち。でも火野は……? 親友であり幼馴染である二人が、訳のわからない死に方をした時の感情なんてわからない。


 それから数十分後、私達は火葬場へ移動することになった。でも、親御さん達がひどく慌てふためいており、大騒ぎしている。

 というのもどうやら桜ちゃん、叶くん、火野の三人が戻ってこないらしい。スマホを所持したままの火野に何度も連絡を入れているのに出ない。そもそもこの施設の何処にいるかすらもわからないらしい。


 そして結局、三人は葬儀が終わっても戻ってこなかった。

 次の日もその次の日も、戻ってこなかった。結局行方不明者として全国に報道されるまでに至ってしまった。


 ありえない。三人の性格上、二人の後を追ったということはまずありえない。そして誰かの手によって連れ去られたという可能性もありえない。だって火野がいるから。あいつは銃を持った人間五人を素手で圧倒できる超人染みた強さがある。

 どんな説を立てても、どんな仮説を設けても、三人が忽然と消えてしまった謎は解明できない。

 一つ言えるのはすべての事件は関係があって、私たちが考えてるより途方もなく大きなものが動いてるとしか……。


 いつしかあゆちゃんが亡くなってから、三人が行方不明になるまでの一連の騒動は幻転地蔵に継ぐ新たな都市伝説としてこの街で語り継がれるようになった。

 中にはネットで動画としてまとめ上げたものを配信し、面白おかしく話す人もいる。美男美女だけが忽然と消えた訳だからネタとしては上々だものね。そーゆーのは速攻でお父さんに告げ口して、圧力でその人のアカウントごと消させてるけど。


 残された私達はどうしたらいいんだろう。




_____

___

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「はっ……!」

「さ、さなちゃん、大丈夫?」

「ちょっとそこの椅子に腰かけなよ……?」



 みんなが私の顔を覗き込んでいる。

 死んだはずのあゆちゃんと美花ちゃんが、行方不明になった桜ちゃん、叶くん、火野が。そして……何者かわからなくなったリルちゃんが。美花ちゃんは私の背中をさすり、あゆちゃんは何処から取り出したのかさっきまでなかったはずの大きめの椅子を指差している。



「あ……あ……み、みんな……」

「うん?」

「生きてる……いぎでるよおおおおおおお! うわあああああああ!」



 私は一番近くにいた美花ちゃんに抱きついた。




#####


##雑談##


レーティング版の新話が書き上がってないので、もしかしたら来週も投稿ないかもしれません。申し訳ないです。あれ書くのすっごく楽しいんですけど、書いてるとなぜか疲れるのですよ。普通の話書くのより数倍体力持ってかれます。


それはそうと、あつ森が発売されて一週間以上経ちました。ハマりすぎて正直、今回の話を投稿できるかどうか危うかったです。


そしてあつ森のマイデザインで書籍版のアリムちゃんの服を私が作ってみました。私のTwitter(@Ss_Novellist)からぜひ見てみてください。

絵は得意な方ではないですが、私の力の及ぶ範囲内で再現はできてる気にはなってます!


もしTwitterまで見に行くのが面倒でしたら、あつ森の仕立て屋にある装置から、作品を探す→「MO-8D2P-CCK4-WLFM」と入力して確認してみてくださいね!


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