閑話 大規模女子会再び 2 (リクエスト)

 止めた時間の中で水着に着替える。ミカのせいで俺までビキニだ。体型的にスクール水着の方が良かったんじゃないだろうか。と言うか。



「……そんなガン見されたら着替えられないんだけど」

「いいからいいから」

「いいからじゃなくて……」

「私のことは気にしないで」



 仕方ないので素早さを限界まで使って超高速で着替えた。なんかミカがふくれっ面してるけど、本人が気にしないでって言ったんだから気にしないでおこう。ミカは時間停止を解いた。



「あれ、アリムちゃんいつのまにかお着替えを!?」

「ボクはその……先に水温とか安全とか確認してこようと思って。みんなこのマジックルームの中に更衣室あるからそこで着替えてね」



 俺が言ったことに従ってみんなゾロゾロとマジックルームに入っていく。特にアナズムに住んでるタイプの子たちは見たことないものがたくさんあることに興奮してるようだ。そんな中、すでに更衣室へ移動したはずのリルちゃんから俺にメッセージが届いた。



【わふわふ、あゆちゃん】

【なぁに、リルちゃん】

【あゆちゃんその……水着着て大丈夫なのかい?】

【ん? 可愛いでしょ?】

【わふ。そうだね、可愛いね。それなら問題ないか……】



 どうやらリルちゃんは俺が本来男なのにそんなノリノリでビキニ着てなんとも思ってないのかききたかったんだと思う。大丈夫、なんやかんや俺は特別だからね。

 しばらくして全員が揃った。何が楽しいのか、示し合わせたのかは知らないけどプールの淵に俺含め全員ずらりと並ぶ。成長期の子もいるから前回こういう付き合いした時とは若干風景が変わってるけど、大まかな部分はいっしょ。リルちゃんとリロさんがすごく目立つ。

 自分を含めて言うのも何だけど、こうして見るとこの女子会、顔もスタイルもめちゃくちゃ優れてる人しかいない。アナズムがすごいのか、それとも類は友を呼ぶってやつか。多分後者だな。



「入っていいのか? アリム」

「うん、いいよ、みんな入ろ!」



 みんなで着水。まだちょっと時期的に早いけれど、冷たい水が心地いい。気温も暑く設定してるから途中で飲み物やアイスクリームを出さなきゃな。



「あの、アリムちゃん」

「何ですかミュリさん」

「……アリムちゃんといると安心します」



 近づいてきたミュリさんの目に生気がない。理由はわかってる。そして唯一俺がミュリさんに近い体型だから安心しきっているんだろう。かわいそうに。



「あの、ミュリさん」

「はい?」

「ボクまだ成長途中で、あの、本当の年齢は十七歳なんですけど、この身体自体の年齢は十三歳のままなので……」

「あっ……み、未来がある……」



 あえてトドメを刺しに行く。まあ現時点でミカと差がついてるし、リルちゃんのストレッチで追いつける保証もないんだけど。

 そのあとミュリさんはこのメンバーの中で一番大きなものを揺らしながらやってきた(にも関わらず身体は細い)リロさんにウォータースライダーに行こうと連れていかれた。ミュリさんは涙目になっていた。



「あーりーむー」

「ひゃん!」

「へっへっへ」



 そろそろ来ると思ってたんだ、このセクハラ魔。どうやら今日のセクハラ被害第一号は俺みたい。もしかしたら更衣室の中ですでに何人かやられてるかもしれないけど。



「さっきからどこ見てるの?」

「みんなの体型」

「私だけ見てって言ったじゃない! ぷくーっ!」

「や、でもリロさんとかリルちゃんとかアリムとしてみても羨ましいし」

「気持ちはわかるけど。でも肩凝るだけよ、本当に」

「まあね。でもリルちゃんなんか……」



 リルちゃんがいる方に目をやる。ローズとサクラちゃんとマーゴさんに囲まれていた。

 俺は今回、サクラちゃんとリルちゃんに関しては水着姿すら初めて見たわけだ。サクラちゃんはリルちゃんに教えられたストレッチのおかげか知らないけど、とても中学生とは思えないスタイルをしている。ミカが頻繁に、将来、自分よりスタイル(特に胸)が良くなるって言ってるけどそれも間違ってないと思う。カナタがどんな反応をするかミカが気にしてるのもわかるよ。

 それより、もうこの女子会の間では全員に広まってるストレッチを編み出したリルちゃんが、言葉が出てこないほどすごい。まるで芸術品だ。モデルとかそういうレベルじゃない。人間、ここまで完璧に仕上げることが可能なのかと目を疑うほど。美容の神って言っていいかもしれない。うん、いい意味で化け物じみてる。



「すごいね、リルちゃん」

「あそこまで露出したの見るの初めてだっけ。やばいでしょ」

「うん、やばい。めっちゃやばい。ああなりたい」

「私、頑張ってリルちゃんみたいになるからさ、もっと私を見て?」



 ミカは上目遣いをしながらそう言った。いままで大元であるリルちゃんと比較する機会はなかったからわからなかったけど、こうして見るとミカってばかなり努力して近づいていってるみたいだ。

 にしてもミカはおかしなことを言う。ミカを見てない時間なんてこういう時くらいで、一日のうちの半分以上は一緒にいるのに、これ以上なんてどうすればいいんだか。まあ見てほしいって言うなら見てあげよう。



「じーっ……」

「もっと見て! ……どの部位も元の私には劣るけど!」

「……アリムちゃん、ミカちゃん、何してるんですか?」

「わっ!」

「わわっ!」



 突然カルアちゃんがやってきた。今の姿のミカと近い体型をしてる。ちょっと前まではアリムの方に近かったのにね。このまま順調にいけばカルナ王妃くらいになるのかな。……なんか置いていかれた気分。



「二人で見つめあって……あっ、お邪魔してしまいましたか!?」

「い、いやいいんだよ。ね、ミカ」

「うんうん、私たち恋人だからちょっと隙があるとこうしてイチャイチャしちゃうのよね」

「そうですか、いつものですか。……ところでお聞きしたいのですが、あのぐるぐる回ってるプールはどういったものですか?」

「あれはわざと水の流れを作って身を任せて遊ぶんだよ」

「なるほどー!」



 いやぁ、女子会中なのに抜け駆けは良くないね。みんなで遊ばないと。俺とミカはカルアちゃんに連れられてみんなの元に戻っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る