第1019話 神樹国代表への説明

「おはよーございます」

「おお、来たか」



 朝の九時ごろ。会議室。今から神樹国から来た人たちに今起こっている出来事や、今までの事実を教えるらしい。やっぱり昨日は旅してきて疲れていることを考慮して大まかな説明以外聞かせてないみたい。もうそろそろ同じ内容を言うのは面倒になってきたんだけど、ま、相手は全員どっかの国の代表であるわけだし仕方ないよね。ちなみにミカはカルアちゃんと一緒にお部屋でお留守番。



「相変わらず可愛らしいの」

「でも今回はこのアユム・ナリウェイが鍵なんだろ?」

「ぼぼぼぼ、ボクはア、アユムじゃなくてアリムです!」



 やば、心臓飛び出るかと思った。トールって人は人の名前よく間違えるらしいけど、間違えた先が本当の正解だったとは本人も思うまい。



「神樹国でも勇者アリムの人気は凄まじいものなんじゃよ」

「ああ、もし一般道にポツンと立ってたらものの一分で人だかりができるだろうな」

「そろそろ本題に入ろうか」

「それもそうじゃな」

「ではアリム、頼む」



 国王様から頼まれたので、俺は必要なことを全部話した。もういろんな国のいろんな代表さんに話しすぎてすっかり内容暗記しちゃったよ。

 今回はだいたい事の顛末から事実まで全部話すのに1時間くらいかかった。今までに加えて誘拐事件についても説明しなくちゃ行けなくなっただけでなく、神樹国側にとって勇者と同じ存在である賢者がみんな俺の身内だっていうことに驚かれたりしたんだ。



「はぁ……いや、大変なことになっているのはわかったが……おいおいおい、えぇ、するてぇとなにかい、お嬢ちゃんは今世の賢者達と同じ出身で、しかもあのカナダの実の姉だっていうのか」

「すまんな、そちらに食いつくべきじゃないのだろうが、ワシもそっちがきになるわい」

「なに、二人とも一週間くらい滞在するつもりだったのだろう。時間はたっぷりある。聞きたいことから聞けばいい」

「メフィラド国王……そうさせてもらおうかの」



 実際数ヶ月間カナタやサクラちゃんをお世話してたのはこの人たちだし気になるのは仕方ない。国王様も許したし、気の済むまで俺たちのことについてもっと詳しく話してあげよう。



「えっと、アリム・ナリウェイがカナタの姉で、ミカ・マガリギがサクラの姉じゃったかの」

「そう、その通りです」

「だが確かに考えてみりゃ、サクラとミカ・マガリギは納得できるな。うん、ミカ・マガリギの髪を二つ結びにすりゃ、髪の色は違うがあの子になる」

「じゃがあのカナタの姉がアリムとはのぅ……驚いたの」

「……姉弟逆じゃないのか?」

「いやぁ……あはは、よく言われます……」



 ぐっ、俺がお兄ちゃんなのに。カナタの方が大人びてて基本は冷静で俺と比べたらの話だけど童顔の程度がマシだからって! 身内だけの話なら思いっきりほっぺた膨らませてたね。



「まあしっかり者という点は共通しとるか」

「じゃあよ、ジョーとあいつが連れてた狼族の子はどうなんだ?」

「ジョーじゃなくてショーですね。ショーはボクとミカの幼馴染です。リルちゃんは元からアナズムの住人ですね」

「そうか……ん、まてよ?」

「どうしました、トールさん」

「あいつ美女ばっかり周りに置いてないか?」



 それには国王様含めその場にいた全員が頷いた。やっぱりこの事実がバレたらショーはこっちでもそういう扱いされるのか。ハーレム大魔王は異次元すら越える。すごいね、本物のハーレム職人だ。



「あんな誠実そうに見えて、若いのに中々やりおるのぅ……」

「ボクとミカはショーとはそういう関係じゃないですよ、普通の幼馴染です! ショーはリルちゃんっていう本命いますしね」

「なんじゃ、あの狼族の子が本命なのか」

「でも別世界同士だろ? それって大変なんじゃ」

「まあまあ訳あって大丈夫なんです、それが」

「アイテムマスターの力を使えばなんとでもなるということかのう」

「そんな感じです」



 そういえば、この戦いが終わったらどうなるんだろう。向こうの世界とこっちの世界、割と自由に行き来できるって結構大勢の人にバレちゃったからな。行きたがる人とか絶対出てくるよね。特にラーマ国王とか。俺もカルアちゃん連れていってみたいし……あ、でも向こう行ったら勝手に地球人としての歴史が作られるんだっけ、リルちゃんみたいに。ならポンポン人を送るわけにもいかないな。



「ワシも行ってみたいのぉ……どんな世界なんじゃ?」

「……実は私も興味あるんだが」

「なんだ、メフィラド国王も行ったことないのか」

「となると、アナズムからチキューとやらに行ったのは狼族の子だけか」

「食いもんとか気になるな」

「じ、じゃあ今日の昼食はボクが地球の料理でもお作りしましょうか」

「ほ、いいのか!」



 ……なるほど、料理や文化の一部だけ伝えるという手もあるか。アイドル業続けながらお料理やさんにでもなる? 

 いや、それはいいとして質問があまりにもポンポン出てくるからちょっと本題に入れるかどうか怪しくなってきたな。時間がないわけじゃないと言ってもあるわけでもないしなぁ……。

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