第1017話 北からの訪問

 とりあえずはこれ以上被害が広がらないようにしつつ現段階で誘拐されてる人を把握する、ということで決まった。

 ……今思ったんだけど、なんで俺はミカと二人だけで来てるんだろう。よく考えたらこういうのって、もっと専門的だったり才能的に解決できるエキスパートがウチにいるじゃない。カナタとお父さんと、ショーのお父さん。リルちゃんのお父さんも悪くない。本来ならこういう場にはそういう人たちを呼ぶべきなんだ。うん、国王様が良いって言ったら次からはそうしよう。

 会議が終わった感じの流れになったので、俺は国王様の元へ提案しに行った。



「国王様!」

「どうしたアリム」

「あの……次からこういう会議するとき、連れて来たい人達がいるんです。もっと作戦とかをたてるのがボクより上手い人達なんですけど」

「アリムの家族の誰かか?」

「はい、弟とお父さんと……ショー、つまり弟じゃない方の賢者のお父さん、あともう一人です」

「そうか、じゃあもし次会議することがあれば連れてくるといい」

「はい!」



 ふー、これでたくさん頭使わなくてよくなるね。頭のいい高校行ってるからってこういうのが得意ってわけじゃないからね。なんにでも得意分野っていうのがあるし、その分野が得意な人に任せちゃえばいいよ。

 多少肩の荷が降りたところで、カルアちゃんと一時間くらい遊ぼうと思ってミカと一緒にいの一番で出ようとしたその時、この会議室のドアがノックされた。叩き方からしてそう大して慌てた様子ではない……かな?



「どうした? はいれ」

「失礼します! 他国からの馬車がお見えになりました」

「そうか。タイミングがいいな。それで……どこの馬車だ?」

「はっ! それが……エグドラシル神樹国のようで」

「なに、あの国から使者が?」



 え、エグドラシル神樹国から? 珍しいこともあるもんだね。確かに俺が色々告白した日から国王様は一応手紙やらメッセージやら送ってたみたいだけど、本当に来るとは。敵対国って言っても過言じゃないほど仲が悪い国だったのに……いや、正確にはどことも仲良くしないのがエグドラシル神樹国だったはず。やっぱり統治する人が変わると色々変わるんだね。



「お、この魔力……あの国のSSSランク二人とも来てるな」



 ギルマーズさんがそう言った。となるとカナタに色々教えてくれたっていう……雷使いのおじさんと召喚魔法使いのお爺さんだっけ。んー、カナタとサクラちゃんとショーを呼ぶ準備をしておいた方がいいかもしれない。



「有夢、様子みにいこ?」

「だね」

「じゃあみんなで行きますか」



 てな訳で会議室にいた人達でぞろぞろと、来賓者用の馬車停泊地に向かった。こんな大人数でなくとも、出迎えるのっていつも大臣さんと普通の兵士数人なんだけどな。相手が相手だから仕方ないかな?

 馬車停泊地にはたしかに一台新しく馬車が止まっていた。まだこの停泊地で見たことない国旗のものだ。ちなみに国を代表してやってくる馬車はみんなどこかしらに国旗の模様が描かれてたり旗が飾られてたりする。そういう馬車ってまずSランクからSSランクの実力を持つ騎士や冒険者が乗ってるから山賊などに襲われることがなくなるんだって。

 そうこうしてるうちに馬車からギルマーズさんが言った通りの二人と幾人かの偉そうな人と兵士が出てきた。みんなより国王様と大臣さんが数歩前に出て挨拶をする。



「遠くからよくおいで下さりました」

「ん……あー、たしかこの国の大臣さんですかい。で、こちらはメフィラド国王様」

「よく来てくれた。トール、ヘイムダル」

「ほっほっほ、久しぶりじゃのう」

「今は冒険者としてより国の管理の方が大変だそうだな」

「そうじゃわい。国王が死んでから一時的に国の指揮をしとったら、なし崩しでそのまま政治の一端を任されとる。まあ、ワシらだからこうしてこの国に来れたのかもしれんがの」

「積もる話もあるでしょうが、まずは皆様、城内へ」

「そうするかの」

「……なんかやけにゾロゾロ人が……おお、ギルマーズか!」



 やっぱり冒険者に国の垣根はあまりないみたいで、ギルマーズさんと国王様が冒険者として二人と話してる。ヘイムダルのおじいさんが言った通り、この国の有力者と顔見知りの二人だからこそこうしてやってこれたんだろう。

 神樹国一行は城内へと入っていく。俺たちもそれについて城内へ戻った。屋内に戻ってからはそれぞれ自分の仕事に戻っていった。



「じゃあ久しぶりにカルアちゃんと遊びに行こうか、ミカ」

「まって、なんとなくだけど、国王様と神樹国代表との話し合いに私たちが必要な気がするの」

「呼ばれたら行けばいいんじゃない?」

「それもそうね。なんか思い出話もたくさんある感じだったし、二時間くらいはカルアちゃんと遊べるかもね」



 というわけで予定通りカルアちゃんの部屋へ。こんな状況でしかも短時間しか遊べないかもしれないって告げても、とても喜んで迎えてくれた。最近は俺たちと遊べない分、リロさんやミュリさんが相手になってくれていたらしい。

 もう子供じゃないから気にしなくていいのにってカルアちゃん本人は言った。たしかにそうかもだけど、なんとなく気になるんだよね、カルアちゃんって。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る