閑話 親友のファーストコンタクト(翔)(リクエスト)

 リルが俺の部屋から筋トレ中に俺のアルバムを持ち出して眺めながらにやけていやがった。結構頻繁ににこういうことするんだよな、こいつ。



「リル、俺のアルバムみて楽しいか?」

「楽しいよ!」



 今見ているアルバムは俺が赤ん坊の頃から幼稚園に入るぐらいまでの間のやつだ。ぶっちゃけ三歳以下の記憶は強烈なもの以外ほとんど残ってねーぞ。



「ショーはイケメンだから子供の頃は可愛いね」

「そ、そうか?」

「おっ……これはあゆちゃんとミカちゃんだね! ……はぁぁわぁぁ……なにこれ、こんな子供が存在するのかい!?」

「ああ、それな」



 リルが目を潤ませ、口元を緩ませながら注目したのは俺と有夢と美花のスリーショットの写真だった。正直、今の俺が見てもあの二人の子供の頃は天使そのものだと言える。



「これは成長したらあんな美人になるわけだよ、二人とも」

「全くもって同意するぜ」

「……ところでさ、ショーとあゆちゃん達って最初から知り合いだったわけじゃないんだよね? 家も近いわけじゃないし」

「ああ、会ったのは幼稚園いはじめてからだな」

「ファーストコンタクトってどんな感じだったの? 仲良くなっていった経緯も知りたいけど、まずはそっち興味あるよ」



 あー、俺と有夢と美花のファーストコンタクトか。たしかにリルに話してなかったな。ちょくちょくどんな思い出があるかは教えてるが。……思い出せるかな、俺。いつのまにか有夢達といるのが当たり前になってたからな……。



「ちょっと記憶を探るぜ……」

「アイテム使って思い出せない?」

「やってみる」



 さっそく記憶の想起が良くなる薬を作って飲んだ。だんだんと記憶が蘇ってくる。……あれは、確か幼稚園が始まってから四日後のことだったか。



____________

______

___



 俺は遊び道具がたくさん置いてある部屋で遊んでいたんだ。その部屋にはブロックやミニカー、塗り絵や絵本、ぬいぐるみに音のなるおもちゃの楽器、それと据え置き型の教育ゲーム機が置いてあったな。あとこの部屋は歌を唄うのにも使う部屋だったから、ピアノとその椅子が置いてあったっけ。

 据え置き型の教育ゲームってのは、子供の頃から機械に慣れさせるのを目的とした当時最新鋭の機器だったはず。今じゃ当たり前になってるが。

 そうだ、俺はあれを……筋トレに使っていた。重さは何十キロだったか。あの頃から身体能力に自信のあった俺は持ち上げて下ろしてを繰り返して遊んでいたんだ。子供にとっては相当重いものだったからな。……つーか、そうやって遊ぶ俺のせいで次の年から全国で地面に固定されることになったような気がするんだが。

 とにかくそんな本来とは全く違う遊び方で俺はその据え置きゲーム機で遊んでたわけだな。そこに現れたのが有夢だった。有夢はゲーム機を引っ掴んで上げ下げする俺をじーっと眺めてたっけ。



「……」

「はちじゅーいち……はちじゅーに……はじゅ……よん? さん? あ、はちじゅーさん……!」

「……」

「……? きみどうしたの、これで遊びたいの?」

「あ……うん! いーい?」

「じゅんばんこだもんな、いいよ!」



 第一印象は他の子達よりめちゃくちゃ可愛い女の子だったな。まだ美花はいなかった。たしかこの時は別の部屋に居たはずだ。

 俺たちの通っていた幼稚園は男子は青色、女子はピンク色のスモッグを着させられるんだが、有夢はしっかりと青色だった。俺はなんでこの子、女子なのに青色のスモッグなんだろう、きっとワケがあるんだろうななんて考えてたっけ。……以降、夏にプール入らされるまでガチで女子だと思い続けたな。ま、有夢だから仕方ないよな!



「これどおやってあそぶかわかる?」

「これはなー、あ、よこにセツメーついてるよ」

「ほんとだ! ……ふむぅ、ねぇ、キミ」

「なーに?」

「ボクといっしょにあそぼ? これいっしょにあそべるみたい」

「いいよ!」



 他にやることなかったってのもあるが、有夢を超可愛い女子だと思い込んで幼稚園生ながらこんな可愛いこの子誘いを断る選択肢はないって考えてた記憶がある。

 ちょっと横長の椅子に二人で隣同士で座ってな。この頃から有夢は見た目通りというか、今も変わらずというか、元から人懐っこい上に仲良くなりたいって思った相手にはグイグイくるから、この初対面で隣同士で座った時もまるで俺に半ば抱きついてんじゃないかってくらい近づいてきてたな。少し頭を揺らすとほっぺた同士がくっつくんだ。あの頃のあいつのほっぺたはプルンプルンの権化。……今のアリム状態にちかいかそれ以上の肌触りだ。



「あ、この、あいうえおあーりゅ……ぴーじー? ってやつ面白そうだね! やろ!」

「お、おお、うん!」

「えへへー」



 もちろん俺はその年の夏になるまで有夢を女の子だと思ってたからな、内心喜びまくってたな。……ま、有夢だから仕方ないけどな! 

 これが俺と有夢のファーストコンタクトだ。それ以降、一緒に遊ぶようになって……ってかんじだったな!



____________

______

___




「と、いうわけだ」

「なるほど、話を聞く限りじゃとってもあゆちゃんらしいし、ショーらしいね、お互いに」

「まあ三つ子の魂百までっていうしな、基本的には変わってないんだろ俺たち」

「わふわふ、特にショーがゲーム機で筋トレ始めた部分だね。ショーらしさが滲み出てるよ」

「そ、そうか」

「それともう一つ」



 リルは何故だかニヤニヤしてる。なんか嫌な予感がするニヤけ方だ。……何を言ってくるのかと思ったら、俺の腕に胸を押しつけるように抱きついてきやがった。



「子供の頃から、すごく真面目そうなのに実はむっつりっていうのは変わってないんだね?」

「ぬ……!」

「わふー、ショーがショーらしくて私は嬉しいよ!」



 何も否定できないから困る。



#####


幼稚園に普通は機器に慣れさせるための据え置きゲーム機なんてありません。たびたび忘れがちになりますが、Levelmakerの世界は『地球』ですら次元が違うお話です。

例えば桜が登場当初つけていた『盲目でも見えるようになるメガネ』など。もしかしたらアリム達の地球は、宇宙進出も進んでるかもしれませんね。


(リクエスト一覧)

・アリム×翔

・アリム×父親

・アリム×リル

・アナズム女子メンバーによる女子会(アリム有)

・有夢×翔 (出会った当初) 【済】

・翔×リル(新婚生活)

・侍(幻転丸)×翔 (武人談義)

・有夢家父×カルア 【済】

・ウルト×シヴァ

・ローズ×ラハンドやガバイナ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る