第988話 魔神に相談

「で、数日ぶりに我に話しかけた理由はなんだ?」

「SSSランクの魔物が大量に出現してたのが、止まったのは知ってるでしょ?」

「ずっと見てたからな」



 パラスナさんとウルトさんが帰ってから、ふとしばらくぶりにシヴァに話しかけてみた。前に向こうから呼ばれた時は神様であるアナザレベルがなにしてるかわからず、SSSランクの魔物を大量発生させている理由も不明で、あとデイスって人と連絡がつかなくなったって内容だった。もうだいぶ状況が変わったからね。



「今度はなんか俺が狙われてるっぽい」

「……あいつは一応神様だからな。あゆちゃんとみかちゃんの二人して如何わしい目的で使用することに腹立てているんじゃないか。スキル作成したその数日後に試してみようと思うか普通」

「……ぐぬぬ」



 珍しくシヴァに少しキレ気味にそう言われた。反省はしてるけどやめるつもりはないんだなこれが。



「……まあ多分違うが。こうなるとあのSSSランクの魔物の大群もあゆちゃんを狙ったものだったかもしれないな」

「うん、その中から実際強い魔物を選りすぐったり、どこからかSSSランクの冒険者をかき集めてるみたいなんだ。ここまででなにするつもりなのか、やっぱり検討つかない?」

「すまないな……あゆちゃんが狙われてる正確な理由も、これからなにをするかもわからん。ただほんとうに気をつけておいた方がいいのは確かだろう。叶くんのようなことは繰り返してはならない」



 わかんないかぁ……もうちょっと情報加えてみるかな。なんか転生した人を優先的に敵対視してるっぽいのはどういうことだろうかとも聞いてみよう。もし俺を狙っている理由があるとしたら転生も関わってる気がするんだ。

 シヴァはなんとなく見当がついたようで、それについてすぐに答えてくれた。



「うむ……それはさっきと同じ。自身が創造したダンジョンというものを荒らして回られた証拠だからじゃないか?」

「俺もその線はあるかなって考えてたんだよね」

「だがそもそもアナズムに元からいるSSSランクに到達する人間も基本的にダンジョンを何十個とクリアしているはずだから、いまさらその程度で……とは思うが」



 ああ、たしかに。だったら今ごろギルマーズさんとかも狙われてるもんね。まだ俺がこのアナズムに来た時からのSSSランカーからはウルトさんとパラスナさんしか狙われたって話来てないわけだし。それも今日。



「となると、ほんとうに別なのか……心当たりあるつもりだったんだけどなぁ……」

「ところで話は変わるが、デイスの手がかりは何か掴めたか?」

「いや全く」

「やはり向こうの情報が一切ないのがな」



 そうだよ、俺らが今持ってる情報って、アナザレベルって神様が俺を目の敵にしてるのかもしれないということと、SSSランクの魔物や冒険者、過去の賢者などを集めて徒党を組もうとしてるってことだけ。そのメンバーも今わかっているのはお侍さんに、俺の偽物、ウルトさんと因縁がある囚人に、カオスブラックドラゴンの人型。

 向こうは神様だから俺から情報取り放題だし、そもそもステータスも自由に閲覧できるわけでしょ? 情報勝負じゃ完全に負けてるんだよね。 ……地球じゃカナタや真田を始めとした周りの人達のおかげで情報戦には負けることなかったのに。



「どっちにせよ進展を待つしかないな」

「それって俺への被害が広がるってことなんじゃ」

「……たしかに。ただそうする以外なにもできないだろう。スキルの強化もしたんだよな?」

「うん」

「じゃああとは時流れに身をまかせるしかない。お互いにな」



 これで話は終わった。結局なにも収穫はなかったし、報告しなくても魔神たちは覗き見して事態を把握してるみたいだった。

 俺はトボトボとお部屋に戻った。



「有夢おかえり。どうだった? なにか進展は?」

「……ない」

「そっか」



 むしろ、こうやって何か起こしそうで起こさない、そんなドギマギさせた状態を続けて俺を精神的に疲労させるのが目的だったりするのだろうか。それなら当てが外れてる。たしかにこの状況に疲れてるし嫌気もさしてるけど、忍耐力は人一倍なんだ。

 うん、もうちょっと頑張れそう。



「まあまずは嫌なことは忘れて、今日もイチャイチャしよ?」

「シヴァにイチャイチャしすぎなのがダメなんじゃないかって言われた」

「でも私から有夢成分の補給なくしたら発狂しちゃうよ?」

「それは困る」



 ミカが抱きついてきた。ふむ、こういうのがいけないのかしらん。でも俺もこれは欠かせないからな……。普通に考えたらこんなのが怒る理由になるなんておかしいんだけどさ。あるとしてもどっちかの親が風紀の乱れを理由に怒るとか、そんなんじゃない? しかもうちの場合は双方の両親ともに公認だから怒られることないし。



「有夢ぅ、いっそのこと気にしなきゃいいんじゃないかなぁ」

「無理だよ、向こうからやってくるんだもん」

「でもさ、逆に考えて神様が相手だってわかってるのに1日数時間は私とイチャイチャして、ほか数時間は地球から持ち込んだゲームやってって……側から見たらだいぶ余裕そうだよ?」

「たしかに」



 実は思ってたより余裕なのかもしれない。さっき感じた頑張れそうな感覚は違くて、本当はあまり気にしてなかったのかな。うーん……。


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4月10日が2巻の発売日です!

また1巻同様に1から書き直しましたからねッ……!

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