第985話 朝食と原因

「そういえばだけどさ」

「んー?」

「なんで私達のこと狙ってる感じなんだろうね? その集団的なの」



 ローズ達がアナザレベルって神様の手の者と対峙した次の日。

 朝食を食べている最中に、ミカがそんなことを言い出した。明確に狙ってるってわかったわけではないけど、確かに現状そんな感じだもんね、疑問に思うよね。



「わかんないなー。俺なんかしたかな?」

「可愛すぎるのがいけないんじゃないの?」

「えー、そんなことある?」

「だって私、他校の顔も名前も知らなかった子から彼氏奪われたって恨み言を言われたことあるもん」

「ああ、あったね、そんなことも」



 確かにそういうのなら俺もいくつか覚えがある。でもそれで神様が怒ることなんてあるかな? んー、確かに今俺はアイドルみたいな感じだけど、別にアナズムの人達の信仰対象はアナザレベルって神様のままだしなぁ。問題はなさそうだけど。



「可愛いいって罪なのよ」

「じゃあミカもだね。可愛すぎて大罪だよ」

「それなら有夢の隣に無期懲役ねっ! ……まあ惚気はここまでにしてさ、まじめにどう思う?」



 一つ考えられるとしたらダンジョンの法則を見つけたリルちゃんのお父さんがいる場所が大量の魔物に強襲されたわけだから、その類で、俺もダンジョンを荒らし回った上に転生できる人を増やしまくったからっていうのがあるよね。ローズから聞いた話だとカオスブラックドラゴン人間態だっけ、そいつらが俺だけじゃなく他の転生した人達も狙ってるって話だし十分あり得る。



「ダンジョン荒らし回ったからってのが有夢の考えなのね? たしかにそう考えるのが自然かもしれないわね」

「でもあんないかにも攻略してくださいって感じの場所に置いてあってさ、ある程度の強さがあればクリアも簡単でさ、アイテムもスキルもやり方さえあってればザクザク手に入る……そんなのをあちこちに出現させてるんだから仕方なくない? ステータスの説明の時に幻転地蔵にダンジョンに手を出すななんて言われなかったし」



 ダメならダンジョンの攻略なんてしなかったのに。それならそれで、魔の海域にいる海の魔物をできる限り乱獲してレベル上げるとかそういうことしたからさ。でも生態系が変わっちゃうからダンジョン攻略よりそっちの方がやばそうな気はする。

 


「としたら、なんだかダンジョンが理由ってのは薄い気がするのよね。普通に私達だけじゃなくてさ、ギルマーズさんとかウルトさんも攻略自体はしてるわけじゃない?」



 ミカがそう言った。確かにそうだ。それにあの二人くらいの強さとなると俺みたいに出入りこそしてなくても複数個クリアしてたりはするだろう。



「じゃあミカはなんだと思う?」

「ちょっとまだ少し寝ぼけてるから、勘が働かないのよね……」

「別に考察でいいよ、難しいこと考えないで」

「それならやっぱりあの魔神三柱じゃない?」

「本人達はなんだか部外者っぽい態度とってるけど……」

「私の考えはこうよ」



 ミカが考える魔神とアナザレベルの関係とは。実は魔神三柱を合体させた姿がアナザレベルの本体であり、それらを管理している俺たちが狙われているからというもの。

 漫画や小説だとありそうだよね、今までのボスの集合体がラスボスだったとか。本人達もその記憶がないから関係性を否定しているってミカは考えてるみたい。



「なくはないな……」

「でしょ? あ、今もう一つ思いついたよ。地球とアナズムを自由に行き来しすぎてるとか」

「あぁ……思ってたより心当たりたくさんあるね」

「そだね」



 例えば俺に置き換えてみよう。自分で作ったゲームがあるとして、それを一人のユーザーに自分が考えていたよりも荒らされてしまう。しかもその一人のユーザーがいろんな人に荒らしのやり方を教えまくってどんどんと被害が広がっていく。そんな感じだって言えるのかな。うーん……。



「でも有夢がそんな悩む必要ないわよ」

「……にゃんで?」

「それがダメならさっきの例に挙げたリルちゃんのお父さんみたいに、速攻で対処されてるはずでしょ? でもこうして私とたっぷりイチャイチャできるくらいの時間はあったじゃない」

「たしかにそうだ」



 としたら魔神とかも関係ないのかな? うーん……俺は一体どうすれば……。なんにせよみんなともっと話し合って意見を集める必要もあるな。また、さらにここからどうするか考えないと。



#####


今日はツインテールの日なので小話です!↓

(投稿が2/3になりました。ツインテールの日終わっちゃいましたよね、ごめんなさい)



「ねえ桜」

「なに?」



 髪を結んでいる最中の桜に叶が話しかけた。普段はそんなことしないが、叶に何か気になったことがあるようだった。



「桜って髪短いわけじゃないのにずっとツインテールだよね」

「ツインテールっていうか二つ結びね」

「その髪型すごく好きだけど、他の髪型にしてるとこほとんど見たことないから」

「確かにそうかも。でも寝る前に髪の毛解いてるでしょ、それでストレートってことにならない?」

「結んでた部分がふわってなってるから」

「ふーん」



 桜は結び終わった片方の髪をわざわざほどき、一つに束ね直してポニーテールにしてみせた。



「どう?」

「すっごく新鮮……人生で初めて見たかも、桜のポニーテール」

「そう? 似合うかな?」

「可愛い。可愛いけどやっぱり桜はツインテールじゃなきゃ。それが一番可愛いよ」

「えへ……さっきから可愛い可愛いばっかり。照れちゃうよ」



 そう言って桜はポニーテールをほどき、いつもの二つ結びにした。

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