第957話 説得と力
でも、でも、でも。じゃあ俺達は一体どうしたらいいんだろう。何をするのが正解なんだろう。よく考えたら根本の存在をどうにかすれば全部解決するんだろうけれど、それも長期戦になりそうだし、お父さん達がもっと必死に止めてくるだろうし。
俺はここまで色々無茶をしてきたんだ。少しでも親に報いたいし、戦うなっていうのがお願いなら聞きたいよ。
「どうすればいいの……?」
俺の真隣でミカがそう呟いた。多分全員がそう思ってるだろうね。もしかしたら、誰か一人でも反抗期中なら楽だったのかもしれないけど、親と不仲だったことなんて全員一度もないし。
「どうすればいいかは私達も一応考えたよ。ただそれを実行すると、たぶん痛いところを叶に指されそうだからね」
「俺が反論するような内容なんだね。推測するに、お父さん達が今からしようとしてる提案は俺たちの代わりに戦う……とか?」
「その通りだよ。でも戦うなって言っておきながら、その本人らが行うなんてことは理屈に合わないでしょ? 嬉しいことに我が子達は私達のことも大切に思ってくれている。それに、六人とも世間から見て飛び抜けて頭がいいから誤魔化せないだろうしね」
お父さんは悲しそうに笑いながらそう言った。どうやら誤魔かせるものなら本気でそうしてたみたいだ。今行ったことは全部事実だろうね。
「じ、じゃあどうするんですか?」
今度はショーが質問をした。俺達六人の誰しもが思ってることだ。しかしお父さんのことだから答えを用意してあるんだろう、さっきまで泣きそうだったのに今度はちょっと得意げな顔をしてる。
あれかな、俺がこの間作ったロボットを量産するとかかな? それなら確かにアイテムに戦わせるだけだから一番の解決方法であるとは思うけど。でもそんな簡単な方法でお父さんはキメ顔しないしなぁ。
「それはね……ん?」
「まさか……」
トズマホが鳴っている。どうやらSSSランクの魔物が出現してしまったみたいだ。いわゆる家族会議をしてる最中に出てくるなんて、空気読めないにもほどがあるよ。
「ちょうどいい、実践してみせよう。有夢、いつものモニターを出してよ」
「わかった。えっと、あの自動で戦ってくれる武器は必要?」
「それはそのうち必要になるけど、今日はいらないよ」
やっぱり使わなくて済むようなものなんだ。俺はモニターを取り出して衛星からSSSランクの魔物を映し出した。カナタが映像を見て首を傾げた。
「なんかおかしくない? いつもより」
「なにが?」
「SSSランクの魔物自体は昨日より一匹増えてるけど、特にやばそうな奴らは一匹減ってるよ」
「あ、本当だね」
やばい奴らは一目でやばいってわかるからね。雰囲気というか覇気が違うもん。カナタの言う通り昨日より一匹減ってる。魔物の頭数自体は増えてるかもしれないけど、そっちの方が俺たちにとっては何倍も楽だ。もしかして出し尽くしたのかな? でもたしかになんでも滅ぼせてしまうようなのが数に限りがないのもおかしいもんね。
「そうなんだ。まあいいや。じゃあ私達が出した解決方法というのを見せてあげようね」
「わかったよ」
「そうは言っても、動くのは成上先生だけですがね」
「仕方ないよ火野さん。ああいうのはあいつに任せるのが一番なんです」
お父さん以外の親達はなにもしないんだね? やっぱり俺とカナタが危険だとしても率先して戦っちゃうの、お父さんゆずりなんだと思う。
当のお父さんはSSSランクの魔物が映されてる複数のモニターを一望出来そうな場所に立った。そして一つ思い出したように俺の方を振り向く。
「そうだ、魔物を封印できるような容れ物の準備をしておいてよ有夢。ものづくりなら問題ないからね。あと、もう魔物の素材って要らないんだっけ?」
「うん、もう十分だよ。もし必要でも血液の一滴でも残ってたらなんとかなるし。封印の容れ物はここに出しておくね」
「じゃあ何するかみんな見ててね」
お父さんはその場で何か魔法を発動させたみたいだった。見たこともないなんだか数式の羅列みたいな魔法陣が次々と現れては消える。そしてその数秒後、モニター先の映像に変化が起きた。
「魔物が倒れてく……?」
「わふ! 外傷なんてどこにもないけど、魔核が出てきてる個体もいるよ!?」
「なにこれ……」
魔物がどこか一部を抑えながら悶え、そして生き絶える。あの強そうな奴らや一匹居た不定形の魔物ですら例外なく。お父さんが魔法を発動させてから30秒経つ頃には今でてきたSSSランクの魔物は全滅していた。
「え、え?」
「ふふーん」
「パパったら叶みたいにカッコつけちゃって……」
「まあまだ仕上げは残ってるけどね」
さらにお父さんは指をパチリと鳴らした。すると魔物の死体が魔核を中心に押しつぶされるように集まって行き、そのうち真四角の物体になった。正確に言えば念術かなにかで作った箱の中に死体がぎゅうぎゅうに詰められてる感じかな。
そしてそれはさらに圧縮されて行き、かなりの小ささになった。
「そこに送るから有夢、送られてきたやつを封印してね」
「え?」
画面から血みどろの四角形は消え、その代わりカナタが瞬間移動を使ったかのようにそれらが俺の目の前に積まれて行く。一個の大きさは大体1m四方。あっという間に魔物の四角詰めの山が出来上がった。
「こ、これを封印するの?」
「そうそう」
俺は言われた通りにそれらを全て封印する。
……え、これで終わり!?
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