第947話 不測だった
「なんだったんだアイツは」
帰ってきたショーは悔しそうな表情を浮かべている。そりゃそうだ、一方的にやられて反撃する前にどっか行かれたら普通にムカつくよね。
「ショー、腕は大丈夫なのかい?」
「おう、ちゃんと動くぜ」
「わふー、びっくりしたぁ」
リルちゃんはショーに駆け寄って、斬られた腕の切断部分だった場所をさすりながらアムリタを少量ふりかけた。
それにしても、見事に1週間前のミカの嫌な勘が当たったとしか言いようがないことになっている。カナタは殺されちゃったし、ショーは魔物でなく急に現れたサムライに攻撃をされた。サムライなんて特におかしい。アナズムには日本風だったり東洋風だったりの風習はほとんどなく、西洋に近い文化ばかりだから浮いているにもほどがある。
「そうだ! カナタくん、やられちまったって聞いたが大丈夫なのか!?」
「ええ、まあ、なんとか」
「その桜ちゃんの様子と周りの雰囲気から察するに全く大丈夫じゃなさそうなんだが」
サクラちゃんは大泣きこそしなくなったものの、泣きべそをかきながら強くカナタに抱きついてる。いや、抱きついてるというよりしがみついてるって言った方がいいのかもしれない。カナタは迷惑そうな顔一つせずに受け入れている。
俺はカナタを生き返らせたばかりの時に同じようなことをしたため、それについてとやかくいうことはできない。それにカナタじゃなくて俺が死んでたらミカもああなってただろうしね。
「にしてもあのサムライ、ワープしていったぜ? どういうことだ?」
「なんか誰かに呼ばれた感じだったよね?」
「瞬間移動能力を持つスキルを所持しているのは、おそらく俺とデイスさんとニャルラトホテイプという魔物だけ。サムライについてニャルラトホテイプが関与したとは考えにくいけど、あの魔物の元に何故か行けなくなってるし……」
まさかデイスって人があのサムライをショーから撤退させたというのだろうか。カナタのいう通りニャルラトホテイプの件についても疑問だ。
ともかくデイスって人が一番怪しい。魔神達は休ませてる上になにもしないよういいつけているって言ってたけど、でもその言葉は信用していいかどうか怪しい。彼らに直接聞いてみるか。
「ちょっと聞きたいことができたから、魔神達の部屋に行こう」
「それなら有夢」
「なぁに、お父さん」
「叶と翔くんは今日はもう休ませてあげて。付き添いなら私がするから」
「ん……そうだね!」
そういうわけで、カナタとショーには休んでもらうことにした。二人とも、特にカナタはまだ活動したりないみたいだったけど周りの空気を読んでそれに頷いた。相方のことが気になって仕方がない様子のサクラちゃんとリルちゃんにもいっしょに休んでもらうことにした。
魔神達のいる部屋には俺とミカとそれぞれの親全員で向かった。部屋の中にはいると、犬になってるシヴァの様子が少しど慌てているようだった。
「なんか大丈夫? 質問しにきたんだけど……」
「そうだろうな。私も丁度、今起こっていたことについて伝えなければいけないことができたんだ」
「そうなんだ。じゃあそっちから先で」
「すまない」
スルトルとサマイエイルも出してやってからシヴァに話を始めてもらった。
「あゆちゃん達が聞きたいことはだいたいわかる。あのサムライの正体と、サムライがなぜ消えたかだろう」
「概ねそんなところだよ」
「つーか、オレ様達も驚いてんだよ、あのサムライにはよ」
「私はあまりピントは来なかったが、二柱には関係深いものだったようだ」
「度々話題に挙げたと思う。あのサムライは、我を封印して日本に持ち帰ったやつだ」
「え……」
記憶が正しいなら江戸時代くらいだっけ、かなり昔に神隠しされてそのうち不思議な人が持ち寄ったお地蔵様で供養されたとかいう……。つまり、俺たちがアナズムに来る前に知っていた幻転地蔵そのもの。そしてその不思議な人はアナズムかから帰ってきたサムライの子そのもので、本来の目的はアナズムにシヴァを置いておかないため。
「じゃあ、有夢と同じように日本とアナズムを行き来できるサムライがなぜか何百年経った今でも生きていて翔を襲ったってことなの? なんで?」
「おそらくアナザレベルが関わっている。言っていなかったが、アナザレベルもデイスや叶君と同じように瞬間移動が可能だ。また神組級のアイテムを扱うことだって造作ではない。みんなが考えているよりも遥かに様々なことができるんだ」
「そもそも神だしな。できて当然みたいなところはあるんジャネェーカか?」
魔神含めて普通に対処してきたし、今まではぶっちゃけこのアナズムで一番強いのは俺かカナタだと思ってたけど、やっぱり神さまは神さまなのか。
RPGじゃ、よく神さまは裏ボスだったりするんだけどな、やっぱり規格外な強さなんだろうか。闘わずに済むならいいけど、もし戦うとしたら怖いな。ゲームによってはレベルがカンストしてても歯が立たないようなのもいるし……。
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出版することが決まってから毎話、ここでなんかコメントすると決めてましたが、今日は思いつきませんでした。
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