閑話 一抹の不安 (翔)

「このままどうなっちまうんだろうな」

「わー、ふぇ」



 今日もどうにかなった。だが、SSSランクの魔物5体は流石にやばいだろ。おそらく地球で言ったら超災害が多発するレベルだ。このまま増えていけば確実に被害が出てくる。近いうちに俺ら以外の冒険者も対処しなきゃなんねー日が来るだろうな。

 そういや有夢が新武器を開発し、その試運転をしてたな。武器がロボットになってSSSランクの魔物をタイマンで倒しちまった。これを量産できれば少しはマシになるんだろうか。この家に住んでる人間全員分を作るらしく、デザインや基本形態の好みを聞いて回っていたが……。



「それにしてもあのロボットはすごかったね。でももし一般に流出しちゃったら冒険者なんて職業は無くなっちゃうよ」

「だな。ま、神具級のアイテムらしいからそれはねーと思うけど」



 その上一個作るのに有夢でさえかなりの時間が必要らしいしな。魔物はなんやかんや言ってアナズムの人たちにとって必要な存在だからあのロボットは俺たちだけで使うのが望ましい。



「わーふ、チキューもアナズムもおかしいなぁ。そのうちあのロボットをチキューで使わなきゃいけないなんてことにならなきゃいいんだけど」

「実際あやしいところだな。いつ魔物が向こうにやってきてもおかしくねー」



 そうなったらどうなる? 地球の兵器の技術でSSSランクの魔物とかを対象できるだろうか。あいつら、ちょっと魔法を唱えるだけで隕石を落とせたり、津波を起こしたり、台風以上の強さの風を巻きおこすような存在だ。異世界の生物による地球侵略……なんだこれ、ゾッとするな。



「ねぇショー。私、少し悩んでることがあるんだ」

「なんだ?」

「この一連の異変、もしかしたら私のせいじゃないのかい?」


 

 耳をくたんとたたみながら、リルが泣きそうな顔でそう言ってきた。何をどうしてそう思ったのだろうか。



「どうしてリルのせいってことになるんだ?」

「私は純粋なアナズムの人間なのに、地球に行ったりしたからさ。空間がねじ曲がって変な亀裂ができた、みたいな感じだよ。よく漫画とかではある展開だろう?」

「それならどっちかっつーと、最初にアナズムと地球をつなげた有夢や、そもそも行き来しまくってる俺ら全員が原因だって考える方が自然じゃねーか?」

「わふん」

「何かあったら自分のせいだとか、考えてたらいつかまいっちまうぜ」



 こればっかりは染み付いたものだから仕方ないと思う。リルは優しいからな。このまま仮にSSSランクの出現数がひどくなっていくとして、俺はそんなリルを始め全員守れるのだろうか。正直、有夢や叶君が戦ったようなやべーやつは俺でも倒せるかわからねぇ。

 たしかに俺の能力は強力だが、突き詰めれば単なる火力アップだ。相手に合わせた強力なアイテムをその場ですぐに生み出したり、瞬間移動で安全を確保しながら確実に倒すなんてことはできない。もし相手を瞬殺できてしまうような力を持ったやつと対峙しなきゃなんなくなった場合、俺はどうすればいい? 逆になんでも攻撃を無効化しちまう奴にであったら? 

 まさかステータスだけならアナズム最強だってのに、倒せない敵が出てこないかで悩むことになるなんてな。レベルを上げてきた意味ってなんだ? 俺には守らなきゃならねーもんが沢山あるってのに、どうしてこうも無力感がするんだろう。



「ショー、いきなり俯き始めたけどどうしたの?」

「いや、もし何かあったらみんなを守りきれるかと思っちまってな。……リル」

「なんだい?」

「何があっても絶対守るからな」



 なにも俺が全員を守ろうと躍起になる必要はないんだ。いや、守れるなら守るが。有夢は美花を、叶君は桜ちゃんを、親父は母さんや俺を何かあった時は命がけで守ろうとするだろう。

 となればとりあえず俺はリルを守ればいい。倒せない敵が出てきてもリル一人が対象なら守れる。そういう方針で行くか。出会ってもいない敵に敵わないなんてイメージは、スポーツマンとしては最悪だしな。守れば勝ちだ。そう考えよう。



「わーふー、ショーってさ」

「あん?」

「イケメンな上にそんなカッコいいことを結構頻繁に言うから私、いつもドキドキクラクラしちゃうよ」

「お、おう、そうか」

「……わふーん」



 リルがのろけた顔で俺の膝の上に乗って抱きついてきた。甘えてきたんだ。俺も抱きしめ返してやる。こんな状況だってのに、イチャつくのはやめられねーんだよな。いや、こんな状況だからか。



「ショー、今夜は寝かさないよ!」

「今夜も、だろうが」

「わふわふ、その通り」



______

___

_


 途中で有夢が新武器を届けに来た時以外は、丸半日ずっと密着して過ごしちまった……。

 そして翌朝、いつも通りのんびり余韻に浸っていたら有夢から全員集まるように言われた。どうやらSSSランクの魔物が新たに現れたわけではないらしい。

 なんでも、魔神から新しい話があるそうだ。準備ができたやつから順次、あの地蔵が置いてある部屋に集まって欲しいとのことだ。

 ……確実に何かあるよな。



#####


書籍化したLevelmakerの発売がされるまで、ちょっと裏話的なものを書いていこうかと思います。

よろしくお願いします。それにしてもやっぱりアリムちゃんが可愛いです。(`・ω・´)オホー!


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る