第880話 異変だらけ
リルちゃんとショーが旅行から帰ってきた。
SSSランクの魔物が出現したことを報告してくれるけど、俺はちゃんと観測していた。この二人ならなんの問題もなく倒せるって知ってたから傍観したけど、なかなかインパクトの強い魔物と戦ったよね。見た目的な意味で。
そしてさらに聞いた話だと、過去にウルトさんが倒したはずの個体がなぜか復活して再出現してたらしい。
これが一番不可解なんだよなー。
カナタとサクラちゃんが遭遇したSSSランクの魔物も、封印がなぜか解けて復活したらしいし……。
生き物をどうこうできる能力といえばサマイエイルが挙げられるけど、あいつは他人を即死させるか悪魔っていう種族の魔物を作り出すことしかできないからなぁ……うーん。
「翔……なんかちょっと精魂吸い尽くされたような顔してない?」
二人と話している最中に、ミカがショーにそういった。そういえば、ストレスで疲れているなどとは別の疲れ方をしたような顔をしている。一方でリルちゃんはいつになく景気が良さそう。
「わーふ、私が吸い尽くしたんだ」
「あ、やっぱり。前々まであんなに数を控えようとしてたのに、そんなになるまで吸い取られるなんて、翔も変わったねー」
あ、そういうことね。完全に理解した。
ミカの言う通りだよ……リルちゃんがミカに相談するくらい前は夜にいちゃつく回数を抑えてたのに。今はそうでもないっぽいね。
「はは……まあな」
「とりあえずお部屋な戻ったら元気を出させるためにスッポン鍋でも食べさせる準備をするよ。じゃあね二人とも」
「じゃあね」
リルちゃんとショーが俺らの部屋から立ち去っていった。ちょっとショーが心配だけど……ラブラブなのはいいことだし俺が口を出すべきことじゃないよね!
「いいなぁリルちゃん。……ねぇ、あゆむ」
「!?」
俺はとっさに身構える。俺も誘われればああなってしまう。ミカのことが大好きなおかげで断れないから、次の一言次第でショーみたいになるかないかが決まるんだ。
「冗談よ冗談。あの体力自慢の翔があんなになるなんて……流石の私も驚いてるもん」
「だよね」
「あ、でも私はリルちゃんの味方するわよ? あの子ずっと我慢してたんだから」
やっぱりリルちゃんはミカにかなり相談してるんだね。
それにしても冗談でちょっとホッとした。
俺達も一昨日と昨日の連日だったから。……いや、別にいいんだけどさ、3日目に突入したりしても。
「翔とリルちゃんの問題は……翔もまんざらじゃなさそうだったし別にあれでいいとして、よ」
「う、うん」
「まだ、丁度その場にこの家のメンバーが居たりして、私たちが出る幕がないからなんとかなってるけど……衛星を置いてからこんな短期間でSSSランクが2匹も現れてるなんて、直に見て、ヤバさが実感できてるって言うか……」
ミカの言う通りだ。本当にやばい。
地球でいえば大規模な災害が短期間で何回も起こってるのと同じだ。偶然、それを事前に察知できる俺たちが居て、その側に偶然、対処できる人がいたりするから大きな問題になってないだけなんだ。
「ね、3日後また地球に戻るでしょ? んで、また1週間経ったらアナザムに来るわけじゃない」
「そうだね」
「まるっと二週間監視し続けてさ、どのくらい魔物が現れてるか記録しない?」
「もうやってるよ。最初からその機能は付けてる」
「さっすがあゆむぅ!」
むぎゅっとミカに抱きつかれた。
とりあえず1ヶ月分は記録をつけて国王様に報告してみるつもりなんだ。
SSSランクばかりに注目しているけど、実はアナズム各地でSSランカーやSSSランカーがSランクからSSランクの魔物やその群れを倒してる映像が入ってきてる。
たまーに危なそうな時は機械越しに手を貸したりしてるしね。
まだ初めて1週間くらいだけど相当な数になってると思うよ。
「やっぱり有夢ばっかり頑張ってるよね。私に何かできることない? 脱ぐ?」
「さっき冗談だっていったばかりじゃない」
「まあね……ほら、今のはせめて目の保養にでも慣ればいいなーなんて。と、とにかく! 一人で1つの世界管理するなんて幾ら何でも無理なんだから頼るべき時は頼ってね?」
「そうだね、頼りたい時は頼るよ」
目の保養ならミカの顔見てるだけで十二分なんだけど。
頼りたいとは言ってもね……例えばSSSランクの魔物が現れた場所に派遣するにしても、中にはかなり特殊で俺たちにすら効いてしまうような特技を持つやつだっているはずだし、ミカを危険な目に合わせたくないから下手に動いてもらうより側にいてもらった方がいいんだよね。
かと言ってたしかに一人だと大変なのは本当だし。
他のみんなの恋愛の邪魔をしたりしたくないし。
やっぱり現状は引き続いて俺一人で管理すればいいよね。
「今日って他に何かすることあったっけ?」
「衛星からもし緊急事態警報が来たら出動するだけ。ほとんど何もないよ」
「じゃあこのまま甘えてよっ」
とても……少なくとも俺たちにとっては住みやすいこの世界なんだ、原因を解明してまた平和にのんびり暮らしたいよ。
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