閑話 美花が惚気るだけの話(?)
「新しいことを開発したい」
「んー?」
休みの日。ミカが俺に甘えながら、突拍子もなくそんなことを言ってきた。開発ってなんだろ、開発って。
「何するのさ」
「有夢が私に萌えてくれるようなこと」
「もうこれ以上ないくらい首っ丈なのに?」
「それはわかってるけど……なんか新しい反応が見たくなった……」
「俺たちの間にマンネリは来ないんじゃなかったの?」
「マンネリじゃないもん。今だってこうして甘えてるのすごーく幸せだもん」
あ、どうしようかわいい。萌えた。
しかし俺のミカに対する萌えの開発ねぇ……猫耳姿とかその他コスプレとか、お互いに何か演技をしながら(ミカが妹役で俺のことお兄ちゃんって呼ぶとか、その逆も然り)イチャイチャするとかたくさんやってきたんだけどを
これ以上にあるのかしら。
「有夢の好きなゲームキャラにコスプレするとかってのもやっちゃったしなぁ……」
「だね。まあミカはそのままが一番可愛いんだけど、変なことをするより、昔から。いや、もちろん何をしても格別に可愛いよ」
「え、ほんと? えへへ、嬉しい」
何気に昔から俺に向かってちょっと趣向を変えたがる時ってあったからね。俺に女装させる時も、ゴスロリばっかり着せる時期もあれば普通の女の子の普段着みたいなのを着せてくる時もあったし。
「じゃあ……お、おおお! 閃いた!」
「それはなにより」
「アムリタちょうだい!」
「肉体改造するの? いいけどさ、ちゃんと元に戻ってよね」
「わかってるって」
アムリタを渡すとミカはそれを1滴だけ飲み込んだ。
瞬間、身体が発光し、明るさが晴れる頃には目の前に小さなミカがいた。ちなみに服も一緒の大きさに合わせられてる。伝説級の服はさすがだね。
「どう? 小学校上がりたてくらいの私だよ!」
「今の姿のミカを流石にベッドに連れてくとかできないよ。そもそも有り得ないよ」
「そ、それ目的でちっちゃくなったんじゃないもん。いつもはそうだけど……。ね、なんか懐かしくない?」
たしかに懐かしい。
このくらいの歳にもかかわらず、将来絶対美人になると感じさせる可愛すぎる容姿。ツヤツヤで綺麗な黒髪。
思えば大人なことをするかしないかだけで、甘えんぼなところは全然変わらなかったし。
気がつけば俺は、目の前にいるミカをギュッと抱き寄せ、抱きしめていた。
「わわっ」
「好き……」
「懐かしい気分になってくれた?」
「うん、でもなんか不思議なんだよね」
「うん?」
懐かしさだけじゃない、心の底から湧き上がるような嬉しさ、この正体は……そうだ。
本格的に俺がミカのことを好きになったのは小5か小6あたりだ。でもその前から兆候はあった。多分、割と幼稚園くらいから。
そして、もしかしたら、この1年生の時期にその兆候が自分自身の中で違和感と感じるレベルで強くなったのかもしれない。
この嬉しさは今、こうして時間が経ってミカが俺にとって一番大事な人に、彼女になってることに対してのものだと思う。
「ど、どうしたのー」
「いや……たぶん、新しいことを試すのは今回は成功だったと思うよ」
「えへへ、思ったよりかなり懐かしい気分になってくれたんだね! 狙い通りだよ」
6歳ごろの姿でドヤ顔するミカ。これがまた、驚くほど可愛い。しかしそろそろいつものミカに戻ってもらおう。
やりたいことができた。
「今日のところは元に戻ってくれないかな?」
「ん、わかった。たまにまた懐かしませてあげるね!」
アムリタをまた数滴飲み、ミカは元の姿に戻った。
あいかわらず天使だ。ここまで綺麗になるのは出会った頃にはすでに約束されていたと思う。
「戻った……きゃっ!」
元に戻ったミカを再び抱きしめ直す。
身体の大きさ、ふくらみ、さっきとは全然違う。
「もー、どうしたのあゆむぅ。えへへへへ」
「好き」
「知ってるぅ!」
ニコニコしながら俺を抱きしめ返してくれる。
頃合いだ、もういいでしょ。たぶん今までで一番効果があったと思う。
「……よいしょっと」
「わっ! どうしたの急に立ち上がって」
「………ね、ミカ。ミカはたまに危ない思想になってる時、『有夢は私のもの、私は有夢のもの!』って言ってるよね」
「最近は少なくなったけど、そうね。それに有夢自身も結構言ってる気がするけど……」
「だからね、それを体現する」
「へ?」
「昔から大好きだったミカと、近い将来結婚するというところまで来たんだ。それを再確認させられた。こんな喜びはそうそうない。そしてさっきの言葉通りなら……付いて来てくれるよね? 今夜は寝かさないから、覚悟して」
「ど、どうしたの!? いつになく男らしい口調になって……ね、ねぇ!」
_______
_____
___
「私さ」
「ん?」
いつもとは比にならないくらいにぐったりとしてるけど、非常に満ち足りた表情でミカは語りかけてくる。
お昼頃に始めたのに、すでにあたりは朝になっていた。我ながらすごいと思うし、やりすぎたと思う。
「いつもどっちかっていうと、有夢のことリードしてる感じじゃん?」
「まあ、そうだね」
「あの……私、受け手に回る方が好きみたい。これからも……き、今日みたいな感じでしてくれる?」
どうやら今後の期待を増やさせてしまったようだ。
でもなー、中々、今回の俺みたいになるのは無理だと思うんだよね。こういうことがないと。
「今回のは偶然か何かだよ。たまにしかならないと思うよ」
「えーっ」
「ま、またいつかなったらね。俺のお嫁さんになるんでしょ? 時間なんてたっぷりあるんだ」
「えへへ、じゃあ……期待しておこうかな」
期待されたってね。ほんと、ほとんど理性が無いに等しかったから。こういうことは稀だよ、稀! ミカのことが大好きなのはいついかなる時も変わることはないけどね!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます