第822話 おかしいことが
【グッドモーニンジャ! ニンニン!】
また元気に忍者が朝っぱらから叫んでる。流石に朝からうるさすぎると苦情まで来てるらしいのに、よくもまあずっと続けてるものだよ。
月曜日には家が凍るなんて怖いニュースがあったけど、火曜日は何もなかったね。それが一番なんだけどさ。
今日は水曜日だけど、何かあったかな?
【なんと見てください! 昨日はSNSにて、まるで魔法の世界の魔法陣のような雲が話題になりました!】
【この画像です! なんとこれ、科学的に作られたりCGであるわけではありません、完全に天然のものなのです!】
映し出された雲の画像は、たしかに綺麗な魔法陣を描いている。……まさか俺たちが使う魔法陣と同じ模様ってわけじゃないよな?
「ライトマーチレス」
試しに極小で魔法を唱えて魔法陣を見て見たけど……画像の写ってる角度のせいか、合ってるかどうかわかんない。
「叶はどう思う?」
「兄ちゃん、また俺にきくんだね。一応全属性の魔法陣見て見たら?」
「それもそうだね」
とりあえず主要な属性の魔法陣全部を見て見た。その結果、角度と大きさに明らかな違いはあれど、氷属性の魔法陣にそっくりだということがわかる。
「ね、これって……」
「うわぁ」
叶はめんどくさそうに溜息をついた。お地蔵様に始まり、家が凍り、その上雲がアナズムの魔法の魔法陣(氷属性)がこっちに出てきた。
これら全てが関係ないなんて、流石にありえない。
「なんでこうなったのかね? もしかして、アナズムと地球の行き来のしすぎとかかな、叶」
「それはちょっと考えにくいと俺は思うな。どちらかと言えば幻転地蔵の都市伝説に近いと思うけど」
ふーむ、なんにせよこれ以上大ごとになると俺らが秘密裏になんとかしなきゃいけない事態になってしまう。
普通に暮らしていたいだけなのに、めんどくさいなぁ。
俺と叶は互いに文句を垂れながら朝ごはんを食べ、着替えて外に出た。いつものように玄関先で美花と出会うけれど、浮かない顔をしている。
「ニュースみた?」
「みた。美花も見たんだね」
「あれってアナズムの魔法陣……よね?」
「氷魔法の魔法陣だったよ」
「それって明らかに一昨日のニュースと関連性があるじゃん」
今日か明日中にまた凍ってしまう地域が出てくるのだろうか。そしたらたまったもんじゃない。
「アナズムに戻ったらシヴァに質問責めだなぁ」
「答えてくれるかしら?」
「実害が出ちゃってるからね、なんとしても答えさせるよ」
前回みたいに有耶無耶になんかさせない。必要なら何時間も問い詰めないとね!
学校に行くと男子たちがはしゃいでいた。俺も叶もアナズムのことを知らなかったら、この不思議な現象を楽しめてたと思う。
「わふ、おはよ二人とも」
「あ、リルちゃんとショーおはよう。今朝のニュース見た?」
俺と美花が教室に入ってすぐに翔とリルちゃんが教室に入ってきた。リルちゃんはいつも通りだけど、翔はなんだか疲れきった顔をしている。
「見た見た。面倒なことになってるね。あれって氷魔法魔法陣だろう? 一昨日のニュースと関連性があるよね」
「そー、私も朝から桜とそう話し合ってたんだよね」
「俺も叶と」
「とりあえず様子見しなきゃね」
真面目な話の最中だけど、やっぱりげっそりしている翔が気になる。美花も同じように気にしていたみたいで、リルちゃんの耳に口を当てた。
ヒソヒソと話し合っているが、すぐにリルちゃんは首を横に振る。
「わふぇ、流石に平日にはやらないさ。昨日はハグとキスだけだよ。ショーが疲れてるのは……」
「テレビ出演が正式に決まったから……よね?」
「さなちゃん!?」
佐奈田はまたどこからともなくやってくるねホント。いや、そんなことより翔がテレビ出演するって、マジなのかな?
「それであってるよね? 火野」
「ああ……」
なるほど、それで疲れてたのか。
でも待てよ?
「翔ってさ、別に人前に出るのそんなに緊張しないし、トーク力も出そうと思えば出せるよね? 何をそんなにげっそりする必要あるの?」
「実は俺、有名人に会うのが苦手なんだ……」
「どうやらスポーツ番組じゃなくてバラエティみたいでね、いつも月曜のゴールデンタイムにやってる番組の、世間で話題の人を呼んでみたってコーナーに出演することになっちゃったんだよ。あの番組、芸人さん沢山いるでしょ?」
たしかに翔が有名人と絡んでるところって見たことない。幼馴染の俺でも知らない一面があったとは。
「お、私の持ってる情報大体合ってたっ」
「わふぇ、相変わらずすごい情報の速さだね。決まったの昨日の夕方過ぎなのに」
「へへーん! ただ、まだ収録する日程を知らないんだけど、教えてくれない?」
「来週の土曜日だ」
「ふむふむ……。そうだ、確か関係者って見学できるんだよねー。どうせだからさ、私達4人で行かない?」
佐奈田のその提案に翔は渋い顔をした。
美花はニヤリと笑い、俺もおもわず笑みがこぼれそうになる。いいだろう、行ってやろうじゃないの。
ただ、テレビ局に乗り込むわけだから目立たないようにしないと。一応、俺と美花両方ともほぼ全てのテレビ局からスカウトされた過去がある手前、うまい具合に顔を隠さなきゃいけないね。
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