第816話 王と親
国王様達の自己紹介が終わったってことは、もちろん次は俺の両親達の自己紹介だ。
【お父さん、お母さん、いい? ボクは『ムスメ』だからね! この世界では『ムスコ』じゃないからね、そこのところお願いね】
【わかってるわかってる、大丈夫だって】
【お母さんも大丈夫だと思う!】
本当かなぁ。お父さんとお母さんが大丈夫って言うときは大体大丈夫だけど、やっぱり心配だなぁ。
お父さんはスクッと紳士らしく立ち上がり、ぺこりとお辞儀をした。でも見た目は俺と同じで女の子っぽいよ。
そうそう、打ち合わせでは初手はお父さんが挨拶することになってる。詳しくはウチ、ミカの家、ショーの家、リルちゃんの両親って順番。
特にウチ以降の順番は何か法則があって決めたわけじゃないよ。
「えー、では私たち供も自己紹介を。私の名前は成上……いや、______・ナリウェイと申します。こちらの世界では大変ムス…メ達が世話をかけてしまっているようで」
お、ちゃんとムスメって言ってくれた。流石はお父さん。研究の発表とかしょっちゅうやってるからね、こう言う会話では間違いはおかさないね!
「いえいえ、むしろこちらが国規模で助けられてばかりで。正直、いままで娘さんらにしてもらったことの1割も礼ができていない状況なの…だ! 故に世話になっているのはこちらの方と言うのか正しいだろう」
「いえいえいえ、この子がこの世界に飛ばされてきて右往左往してたところをそちらの王子様方に助けていただいと聞いております」
「そ、それに関しては僕達こそ命まで救ってもらってるので、むしろ当たり前と言うか……それしかできてないと言うか」
謙遜のしあい。国王様は国王だからもっと堂々としてほしいなとかあったけど、やっぱり無理だったかぁ。
国王様が国王様だから良かったけど、この謁見がユグドラシル神樹国のローキス元国王とかだったらどうなってたんだろうなー。
ともかく大人達は互いに一歩を譲り合ってるね。
俺からしたら大したことないことばっかりなんだけど。
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こちら側も全員はなし終わった。
何かにかけてお互いに世話になってることの言い合いだよ、凄まじかったね。
「えーっと、皆の職業をこの世界で置き換えると、アリムの父殿が研究者、ミカの父殿が商人、ショーの父殿が騎士団の幹部と、こうなるわけだな。リルの両親は狼族……大体の職業は把握している」
「ええ、そうでしょう」
国王様は嬉しそうと言うか、ラッキーなことでもあったかのようにニコニコしてる。何か企んでるな?
「研究者に商人に騎士団、それぞれが違う立場で世間を広く見れる職! そちらの世界について聞きたいことが沢山あったのだ。もしよろしければ時たまに協力をお願いしたい」
「ええ、是非とも!」
なるほどこう言うことだったか。確かに国王様は地球の方に興味を持ってる感じだったしなぁ。
警察の警部に、大手企業のオーナー、世界的研究組織の幹部となると確かに地球のことはかなり詳しく聞けそう。
「逆にこちらから尋ねることもあるかもしれませんが」
「それはそれは、もちろんよろしいだろう。私達もここまで異世界の者と関わるのは長い歴史上初めてでな」
「あはは、こっちなんて異世界なんてお伽話だけの話ですからね」
うん、それは言えてる。アナズムに来なきゃ、地球以外にも世界が本当にあるなんて思いもしなかったよ。
……そんなわけわかんない場所で生き残れてた俺って、実はすごかったりする?
「では、何卒これからどうぞよろしく」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします」
お父さん達は握手した。一人ずつそれぞれね。
ちなみに国王様ですら畏まり気味だからね、他の人たちはお父さん達に対してかなーり恭しいよ。
「どうだろう、ご一緒にお食事なんか」
「おお、それでは是非!」
てな訳で俺たちは昼飯を一緒に食べることになったわけだけど、食堂に入ったのはメイドさんやらを除いて俺たちだけで大体20人。かなりの大世帯だ。
この世界にしかない食べ物を主に出して欲しいって俺はいつもの料理長さんに言っておいた。
もちろん、その食材も教えておいたよ。
あと食事形式は舞踏会とかみたいな感じで、基本的に立って食べることになったよ。その方がいろんな人とお話しできるからって。座っちゃうと咳が固定になって、自分の左右隣りと前の人としか話せなくなるからね。
そして、すぐに食堂がそれっぽく準備されたんだけどやけに力がこもってる感じ。
ただご挨拶しにきただけなのに。おそらく国王様は前々から…そして最初から食事をする準備をしていたと見える。
ふむ、お父さん達がどんな話をするか気になるなぁ…。
聞き耳を立ててじっくり聞いてみようね。
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