第785話 お父さんのレベル

「やあやあ、ただいま」

「ごめんねー、遅くなっちゃったかな?」



 二つの大きな力は家の中に入ってきた。

 疲れた様子とかもどこにもない。そして本当に近くにいればすぐにわかる。



「だ、大丈夫」

「どうしたのさ、皆、そんな驚いた顔をして」

「いや……ちょっとお父さん達、予想以上に強くなってるもんだからさ……」

「わかるものなの?」

「さぁ」



 お母さんとお父さんは顔を見合わせて首を傾げている。なるほど、力のコントロールまではできていないんだね。

 


「えっと、とりあえずおかえりなさい。この2週間、どんな感じで過ごしてきたか聞いていいかな?」

「ずっと監視してたわけじゃないの?」

「最初の数日間だけだよ」

「そうなんだ」



 お父さんとお母さんは最初から最後まで何をしてきたかを教えてくれた。

 まず、監視していた頃にやっていたノーモーションで敵を倒す技術。あれでほとんどレベルとかランク差とか考えずにガンガン倒して行っていたんだって。


 それで途中で魔物を見つけ次第狩った方が早いと気がつき、依頼の最中に大量に倒し始めて、そしてついにはあの懐かしきトリアエリアル山に山籠りして片っ端から魔物を倒していたのだとか。

 そしてその最中にダンジョンを発見したから、そこで、そう、俺と同じように法則性を見つけ出し……今に至る。



「……有夢と同じことしてるのね。さすが親子……」

「美花ちゃん、やっぱり有夢達みんなは、この方法でレベルを上げていたのかい?」

「うん」



 俺とカナタ以外はなんだか納得したような顔をしているよ! たしかに、俺とカナタの両親だからこのくらいやってのけると思ってたけどさ、まさかダンジョンまで発見するなんて思わないじゃんね。



「でも、お父さんは俺と同じで疲れやすいはずだけど、周回はどうやったの?」

「それは私がやったんだよっ」

「途中から私は宙に自分を浮かせながら、ママの後をついていっていただけだったよ」

「あー、にいちゃんの忍耐の強さとか、お母さん譲りだったねそう言えば」



 そう、全体的に俺がお母さん似、カナタがお父さん似なんだよね。まあどちらかといえば、の話なんだけど。



「で、肝心のレベルは?」

「転生11回で現在のレベルは75さ」

「えっへん! 頑張っちゃった」



 て、転生を11回もしてるなんて。そりゃこんな力が溢れてて当たり前だよ。



「スキルとステータスをトズマホから見せてくれるかな?」

「いいよ、はいどうぞ」

「どうぞ!」



 お母さんとお父さんはカナタにトズマホを手渡した。六人でそれを覗き込む。

 二人とも魔力とMP、そして器用と素早さの四つを中心に上げていたみたい。あとはほぼ上げていない。

 一点特化に集中したほうがこの世界では生きやすいっことまで把握できてるのね。


 そして肝心のスキル。

 SSランクのスキルまで所持しており、俺ですらよくわかんないスキルが沢山ある。そう、二人とも。

 ぶっちゃけこれで完成形なんじゃないだろうか。



「どう? どう?」

「あーっとね、転生回数が違うだけで、規模で言えばすでに俺たちと同じ高みまで来てるよ」

「ほんと? やった!」

「ふふふ、なかなか楽しい時間だったよ」

「そっか……あの、一つ提案なんだけど。その前に全員集合させていいかな?」

「……? どうぞ」



 俺は別室で待機してもらっていた二組の親も呼び、総勢十一人の前で話をすることにした。

 というのも、この世界で有利に過ごしていくために必要なことをしなければならないから。


 ……それは、ステータスの限界までレベル上げ。

 これさえできれば、この世界ではなんでもアリになる。物理学とかの代わりに魔法とスキルが横行しているこの世界ではレベルこそが全て。神にだってなれる可能性があるかもしれない。



「というわけで、みんなにはダンジョンを何百回も繰り返し、ステータスをカンストさせてもらいます」

「な、なかなか辛い作業だね……何百回も同じところをぐるぐると」

「いえ、一回の転生に数十回はまわるので、正しくは数千回です」

「うわぁ……」

「でも安心してください! その役目は俺がやります。というのも……」



 俺はレベルの仕組みについて詳しく話した。

 俺とカナタと全員でパーティをくんで、専用の拡張機械をつかってレベルの上がる範囲を広くして、一人だけが延々と繰り返してる中、それ以外の人にはたっぷり休んでもらうといういつものやつ。

 あと、カナタ達には経験値が5倍になる効果もあると伝えた。

 


「なるほど、ま、楽しませてもらったしいいよ、それで」

「うん、それで行こう。有夢君が大変だと感じないならな」



 曲木家と火野家からは許可が出た。



「えー、その周回役、お母さんやりたい」

「って言ってるんだけど、どうしようか」



 そう、問題はお母さんがそう言い始めいること。

 そのあと話し合いをした結果、なんと本当にお母さんが周回を頑張ることになった。

 これで大丈夫なのかな、本当に。

 

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