第780話 親による周回 (親)

「なんだこの箱は」



 神具級といわれ、出てきた宝箱を父は開けた。中にはさらに箱が一つ。それを手にとってまじまじと眺めた。



「何かに使うんじゃない?」

「開けようとしても開かないんだよなぁ……」

「こういうのが簡単にわかるようになるスキルってないのかな?」

「そういえば鑑定ってスキルがあったんだった。スキル割り振るかー」



 しばらくして父は大鑑定までスキルを上げ、箱のようなものを鑑定しなおして見る。

 「鍵箱」というものであるということがわかった。



「つまりこれ、上のあのボスの部屋にも隠し部屋があったのか。なかなか楽しいねこれ」

「で、どうする? そんなもの手に入ったんだし、そろそろ挑戦しちゃう?」

「いや……まだだ。ザコの魔物を倒した方が絶対いい」

「それなら付き合うの。でも……疲れてたんじゃなかったの?」

「そうだった……とりあえず一回外に出て、今日はこれからどうするか話し合おう」



 二人は外に出る。

 相談する前に鍵箱の中身を確認することにした。



「開けちゃって大丈夫なの?」

「そのはずだよ。どれ、中身は……」



 父はマジックボックスとなっているその鍵箱の中に手を突っ込み、中のものを取り出した。 

 それはどうにも全く見覚えがない魔核。

 彼はそれを即座に鑑定し、その凄さに思わず笑みがこぼれた。



「何だったの?」

「SSSランクの魔核だって」

「えっ、なにそれ」

「Sランクの魔核100個分のパワーを持つ魔核だよ」

「スキル合成し放題?」

「そうなるね」

「ほぉう……どうする、どうする?」



 二人は話し合った結果、この日はもう潜るのはやめてスキルを色々と試してみようという話になる。

 出てきたSSSランクの魔核を二人で使い、ステータスを大幅に変更していった。



______

____

_



「ふむ、なかなかの威力だ」



 無傷のままのオーガが倒れた。

 否、見た目は無傷だが、顔の穴という穴から流血をしている。



「……何したの?」

「昨日、わたしは重力魔法を覚えただろ? 脳みそだけを急激に重くしたんだ」

「あれ、今までとやってること変わってない気がするんだけど」

「そんなことないよ。今までより四行程くらい短略化されているからね。私の疲れるスピードも四分の一だよ」

「でも私も頑張るから、疲れるまでやらなくていいよ」



 隠し部屋のミッションをクリアした翌日、二人は早速手に入れたスキルを片っ端から試していた。

 父と母、両方ともが基本の属性魔法全てを極めている。とくに父は土術・極と念術・極と岩術・極と、鉄術・極を合成し「重力術方の極」というスキルを習得。

 さらに火術・鉄術・岩術……などを合成し「鋼術方の極」というスキルまで習得。


 これら二つをベースに(普通のスキルのため、一度使うと無くなるので何度も作り直して)、様々なスキルを作っている。今はSKPが足りなくなったのでレベル上げの最中なのだ。ちなみに本日一回目である。

 


「はい、次ママどうぞ」

「うん! どうなるかな……」



 現状で一番強い、所持しているスキルを彼女は放った。水出てきた物体がいとも簡単に魔物のを飲み込み、その瞬間に硬化。溺死させている。



「なかなかのものね」

「無理やり溺死させるの怖いね…。でも効率悪くない?」

「やっぱりそうよね。ボツかなーこれは」



 いとも簡単に全部屋の魔物を倒してしまうと、中央の部屋で二人は話しあいを始めた。



「ここの下はどうなってるかな?」

「もっかいチャレンジしてみてもいいかもしれないね。復活しているということは大いにありえる」



 二人は床をこわし、隠し部屋へと入った。当たり前のようにポツリと宝箱が一つ立っている。

 開けて見たが、中身はなかった。



「あー、宝箱は復活しないのか」

「チャレンジの方は?」

「どうだろ」



 前と同じように箱を押し込む。

 二人の頭の中にメッセージが流れ込んだ。



「おお、これは始まるんだ」

「てことは、報酬は何回でも受け取れるってことかしらね?」

「さあ……」



 こうして話していた数秒のうちに父は魔物を順番通りに全滅させ、前回と同じ階級の報酬を得ることができた。



「またSSSランクの魔核だといいね!」

「それ以外のものでもいいけどね。……外に出よう」



 早速、鍵箱の中身を開ける。

 今回はポーションが一つだけ入っていたようだった。



「……これって、この世界に来た時に有夢が飲ませてくれた、不老不死、死人の復活、若返らせまでなんでもできる薬よね?」

「ああ、確かにそうだ。……でも鑑定してもハテナマークの羅列が並ぶだけで何も表示されない」

「伝説級までは普通に見れるんでしょ? ……さらに上の段階ってこと?」

「この世界は伝説級が一番上のはず。つまりこれは規格外の代物……か。そんなものを量産しているあの子はなんなんだ?」



 父は冷や汗をかいた。自分の予想以上に、自分の息子がヤバい存在かもしれないと、やっと考えたのだった。

 しかし母はニコニコしながらこう答える。



「あら、私とパパの自慢のむす…こ、じゃないの」

「今、娘って言おうとしたでしょ。あの子が聞いてたらほっぺた膨らませてたぞ」

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