第747話 仕事だけじゃなく (親)
「よお! あははは、二人を見ているとアリムのことを思い出すみたいだぜ!」
「そうですか」
「ああ、強くなっていくペースも、どことなく雰囲気も似てるもんだ!」
有夢の両親は銀臣犬をたやすく倒してしまい、Bランクに上がったあと、1日の休憩を挟んでギルドに仕事しに来ていた。
「で、Bランクに飛び級したわけだが、早速依頼を受けるか?」
「はい。でもまずはCランクのものから受けようと思います。……採取系のクエストはないですか?」
「Cランクの採取系? ひとつだけあるよ! ああ、あんたらは確か倒した魔物の保存状態がめちゃくちゃいいんだったな。解体してあるものより値段が弾んでるみてーだ」
実際に相場とかも少しずつ調べ始めていた父はそれに気がついていた。まさに念術は一石二鳥だと考えている。
「おかげさまで。そういうスキルを所持してますからね」
「なら、この依頼は向いてるかもしれないな。国の研究所から要請だ。出来るだけDランクのドンゴブリンを2、3体、身体に傷をつけないように連れて来いってさ」
「任されました」
早速ギルドを出て、ゴブリンがよく生息しているという森へと馬車で向かった。
ちなみに馬車の中では夫婦でいちゃついているので、安い馬車の御者から舌打ちされているのに二人は気がついていない。
狩場につき、馬車から降りると二人は早速探索を始めた。
「先にBランクの魔核使っちゃって悪いね」
「パパが先に使った方がいいじゃない。なにに使ったんだっけ?」
「探知スキルを進化させたんだよ。スキルポイントも最大まで割り振ってある」
「パパって今、念術・改と大探知の二つだけしか割り振ってないよね?」
「うん。でもママはまだSKP、護身用に入れた剣術以外、全く使わせないで悪いね」
「いいのよパパが守ってくれるからっ」
「んもう、ママったら」
こんな魔物がうようよいるど真ん中でも、二人はいちゃついていた。そんな時、父親の大探知に反応が引っかかる。
「しーっ、少し遠くにDランクの魔物が二匹に、Eランクが三匹いるみたいだ。息を潜めて」
「んっ!」
二人は腰をかがめ息を殺しながらその標的に近づいて行く。やがて見えたのは、ドンゴブリン1匹にその取り巻きだと思われるゴブリン2匹。そしてそれらに追い詰められている黒兵犬1匹だった。
「どうする?」
「こちらから見えてて向こうが気づいてないならもう勝ちだ。……もう終わった」
唐突にドンゴブリンが倒れだし、慌てふためくゴブリンたち。そして黒兵犬もキョトンとした表情を浮かべたが、次の瞬間には絶命した。
騒いでいたゴブリンたちもパタリと時間差はあるものの全滅。
「それなりに遠くからでもできるようになってきたね!」「慣れってやつだね。……ん?」
「どしたの?」
父は大探知を集中させた。表示されるのは先ほどとは比べものにならないほどの量のE~Dランクの魔物。
中にはCランクも混じっている。
「まずい、これは流石にまずい。早く木の上上がって!」
「パパったら、私が木登りできないの知ってるくせに」
「……ああ、うん、じゃあ宙に浮かせるから覚悟しておいて!」
そう言うなり父は母を念術で持ちあげ、木の上に置いた。そして自身も同じように木の枝の上へ。
「どうしよう、今日、そんなにセクシーな下着履いてない……ごめんね?」
「いや、見てないから安心して。そもそも今日はズボンでしょ」
「うん、だからね、言ってみただけ」
父は母の頭を撫でながら、地上を見下ろしてみた。
ゴブリンが、先ほど倒したゴブリンたちの元に集まってきている。先ほど死ぬ間際に騒がしかったことから、仲間を呼ばさせてしまったようであった。
黒兵犬のほうはわからないが、なにやらゴブリンと因縁があり、先ほど倒した個体を助けに来た最中のようだった。
「うわぁ…これどうするの?」
「どうするって、こんな美味しいことないでしょ? 全部倒す……流石にあの量をいちいち脳みそを潰して倒すのは骨が折れるから……依頼されたドンゴブリンとCランクの魔物以外は念術・改を普通にぶつける」
バランスをとりながらその場に立ち上がり、まずは標的を見定め、今の自分たちにとって高ランクの魔物だけを内蔵を揺らして倒した。
ゴブリンたちと黒兵犬はさらに戸惑い、お互いが何かしたのだと考え、殺し合いを始める。
無論、Dランクの黒兵犬にゴブリンは蹂躙されているだけ。
その隙に父は次々と投げたり吹っ飛ばしたりして倒していった。残っていた分のMPを全て使い終わるころには、全滅。魔核と死体だけがその場に残っていた。
「……ね、ね、パパ! すごい量の経験値入ったよ!」
「そのようだね。……やっぱりいちいちクエストを進めながら魔物を狩るより、魔物がいそうなところに行って好きなだけ狩ったほうが効率いいよな……。ね、ママ。明日からそうしていい?」
「私は全てあなたの言う通りにするわよ。……まあでも、今日は帰って休まなきゃね、あれ回収してから」
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