第720話 若返り
「し、ショーみたい!」
親父さんを見て、リルちゃんがそう叫んだ。
確かに、85%くらいショーに似ている。違うのは目の険しさと髪型だ。
「昔を思い出しますよっ。ふふふ」
「ちょっ…抱きつくな」
「まあまあ、夫婦だっていうのに照れちゃって」
ショーのおばさんの方も美人さんだ。ショーがイケメンになるわけだよ。うんうん。
ところでお母さん達の方は…。
「みて、小ジワが消えてる!」
「ねーねー、懐かしいね!」
「本当だね」
「4人でよく遊んだっけな…」
だからそんなに変わってないのに何を懐かしむんだろう。本人達にとっては十分若返ってるのかな。まあ確かに生え始めてた白髪とかは無くなってるけど。
それにしても、俺ってば引っ越してきた身なのに、お母さん達は同級生なんだよね。俺たちが通ってる学校と同じ。
一旦、他の地域にお母さんとお父さん移ることになったらしく、数年後に戻ってきたって感じみたいなの。
あ、ショーの両親も同じだけど学年が違うらしいよ。
「お母さん達が若くなってはしゃいでる…」
「一種の興奮状態だよ。色々と見すぎてわけわからなくなってるんだ」
「そうなんだ。叶が言うならそうなんでしょうね」
この程度で混乱されてても困るんだけどな。
まだまだたくさん驚くべきことはあるし。こらから部屋や施設だって案内しないと。
「あのぉ、皆さん。そろそろ泊まるっていうか、住んでもらうお部屋を紹介したいかなーなんて」
「おっと、はしゃいぎすぎちゃった」
「うん、そうしてくれ有夢」
「じゃあこの部屋出るよっ。案内しながら紹介するね」
俺たちは部屋を出て、廊下を歩き始めた。
この地蔵様が置いてある部屋はいつも集まってる食堂など真隣なので、そこから紹介するの。
「なんだかすごい…王宮か何か見たいね」
「全部ボクが作ったんだけどね…ここが、みんなが集まる食堂だよ! 何かあった時はここに集まるんだ」
「わふ、普段はみんな自室で食べてるんだよ」
「なるほどなるほど」
次に俺は大浴場を見せ、さらにそのあと、映画館や屋内プール、運動施設などなど使う頻度が高い施設を見せて回った。そして、いよいよお部屋の紹介に。
「じゃあ、6人みんなに泊まってもらうお部屋を紹介するよ。ところで個室がいい? 二人部屋がいい?」
「みんなはどうしてるんだい?」
「えーっとね、お父さん。私と有夢、桜と叶君、翔とリルちゃんの二人部屋だよ」
「……まあまあまあ、二人部屋なの…」
嘘でも個室って言えばよかったか。ニヤニヤされちゃった。まあ、二人部屋ってことは色々やってるってことにもなるし。実際やってるし、仕方ないね。
「まあ、私たちも二人部屋でいいわよね?」
「夫婦だしな…」
「貴方…ううん、翔太郎君はどうしたい?」
「なぜ昔みたいに呼ぶ……。俺はべ、別に個室でいいが……ふ、夫婦だしせっかくだし、二人部屋だな」
ショーのリルちゃんに対して照れ屋さんなところは親父さん譲りなのかもしれない。ていうかきっとそうだ。
こういう時になるとリルちゃんやおばさんの方が優勢になる。
6人の意志も聞いたことだし、部屋を割り振りますかね。
「それじゃあ、そこが成上家、そっちが曲木言家、向こうが火野家ね。鍵は部屋の中にあるからね」
「ありがとう有夢っ」
「じゃあ6人とも今日は色々と混乱してるだろうし、お部屋でゆっくりしなよ。夕飯になったら呼ぶから」
そう言って3組の夫婦に部屋にこもってもらうことにした。そして俺たち子供世代は食堂へと。
「お母さん達、はしゃいでたね」
「わふ、若くなったってすごく喜んでたよ。あと夫婦間でみんな仲がいいね。手をつないでたり抱きついてたり」
「だな。それに親父が若い頃なんて全く想像してなかったからびっくりしたぜ」
俺たちにとっても驚くことがあったのは面白いよね。
これからアナズムをたくさん楽しんでってくれたらいいんだけど。
「それにしても人が増えたねー」
「一気に2倍だもの」
最初は俺とミカのたった二人だったのにね。
もし、叶達がこっちの世界に来ず、地球に帰るという発想も生まれなかったらこうはならなかったでしょう。
それはそれでまた普通に過ごしていたのかもしれないけれど。
「それで今日はあとどうするの?」
「とりあえず、ゆっくりステータスとかを確認してこの世界の事情をある程度把握してもらおうかなと。あといつものドラゴン肉食べさせてあげるよ」
「実物見せるの?」
「ローズ? ドラゴン?」
「ドラゴンの方」
「見せるのも楽しいかもね」
この世界の危なさと現実を知ってもらってから楽しんでもらうのが一番だからね。どれ、とりあえず時間かけてじっくりご飯を作るかな。
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