第674話 全国大会個人戦
90キロの部は、総員48人。
翔と剛田君が倒さなきゃいけない相手は全部で5人。つまり5連勝しなきゃいけないわけだけど、途中で剛田君と翔がぶつかり合うことになっている。
順当にいけば準決勝であたるんだ。
「始まるね」
「うん」
最初と2試合目までは人数が多いため、会場を6つに区切って試合は行われる。
個人戦は延長とかもあるからね、下手したらすごーく長引くわけだけど。
それぞれが見事に試合を開始してる。
……さっそく、勝者と敗退者が一人ずつでた。一本勝ちらしい。
こういうのを目の当たりにすると、実際には参加しない俺たちですらドキドキしちゃうから不思議なものだよね。
ちなみに翔の試合は4巡目。
そして剛田君がその前の3巡目。
やがて1、2巡目が終わり、剛田君がでてきた。
俺たちは活気をあげて応援をし始める。対戦相手との体型はもちろん同じ。
彼の試合結果は2回の技ありで勝ち。
さすがは剛田君だね。他の高校の大将くらいの強さはあると定評があるだけある。
やがて3巡目も終わり、翔の番がやってきた。
この順が終わったら全体が2回戦へと移るんだ。
「あ、あれ昨日の団体戦の3試合目の高校の副大将だよ」
「さすが叶、よく覚えてるわね」
あの二人の会話が聞こえてきた。そうなのか、3試合目といえば…ああ、翔を試合に引き出せた初の高校だ。
それの副部長ってことは剛田君と戦って負けたんだよね。
結局は現在の敵の高校の大将試合を一瞬で終わらせた翔の敵ではなく、一瞬で投げ飛ばして勝ってしまった。
楽々2回戦へと進出だね。
そのあと休み時間の間に翔は戻ってきて、リルちゃんに甘えさせながら談笑をし、再び会場へと戻って行ったよ。
しかたないね、自分の番になるまで暇だもんね。
剛田君はいきなり2回戦始まって試合だったけれど、解説曰く『技の質的に有利』だったみたいで一本勝ちしていた。これで剛田君は3回戦進出。
続く翔の第2試合。
相手は超高身長(だいたい195cmくらい)。
翔はまともに組み合うのをやめ、即座に組み技に変更した。
怪力の前になすすべなく押さえつけられ、そのまま15秒経過して翔の一本勝ち。
2試合目が終わったところでお昼休憩になったから、翔と剛田君が俺たちの元にきた。
「次が準々決勝だね!」
「ああ!」
「……割とすんなりここまでこれたが、まあ、これは部長に何回も組んでもらったからだな」
そう言って剛田君は翔に感謝してる。
なるほど、めちゃくちゃ強い翔とずっと練習してから剛田君もあそこまで強くなったのかもしれないんだね。
「……しかし部長、いや、火野。次の次、俺たちは敵同士だ」
「ああ、そうだな」
二人が俺と美花とリルちゃんの目の前で向かい合う。
さっきまで翔への感動でプルプル震えていたリルちゃんも顔を上げ、二人を見据えていた。
「わふ…ふ、二人とも」
「ん、なんだリル」
「私は…ショーが大好きだから…ショーを応援するよ。剛田君、ごめんね。でも…それでも全力で頑張って欲しいんだ。部の仲間として」
そう言いだしたリルちゃんを驚いて二人は見つめ返す。しかし、しばらくして剛田君が観念していたような、そして何かを悟ったようなため息をついて語りだした。
「……振られた気分だ。しかしなにかスッキリしたよ。でもまだ3試合目に勝ってないのに気が早すぎるというかなんというか」
「わふ……振った?」
首をかしげるリルちゃんをよそに、美花は念話をしてくる。
【……ね、剛田君ってリルちゃんのこと好きだったんじゃない?】
【ああ…そうかもね。それどころか部員みんなそんな感じじゃないかな?】
【まあ、仕方ないわよねー。あれだけ可愛いんだもん】
自分がモテることに気がついてないリルちゃんは未だに頭にはてなマークを浮かべてる。
ラブレターとかも貰い始めてると翔は言ってたけど、それらもまともな意味で受け取ってるのかわかんないね。
「まあ、こんな話はとにかく3試合目に勝ったあとだな」
「ああ」
「4試合目だあたって勝っても負けても恨みっこ無しだ」
「おう、わかってるぜ」
そう、二人が約束した後に俺たちは昼飯を食べる。
今日はコンビニ弁当だ。
そうしてしばらくし、準々決勝、第3試合が始まった。
だんだんと強者が決まっていく。
そんな中、やがて剛田君の試合となった。
敵はどうやら昨日の準決勝の大将。
…二人とも一進一退の攻防で両者譲らない。
なんと制限時間をオーバーしても同点のままで終わらなかった。
しかし延長3分後、剛田君が攻め方を変え、ポイントを先取することに成功。見事に準決勝へと進むことになった。
そして翔はとくに難なく敵をさっくり倒しちゃった。
今回はリルちゃんも盛り上がり的に剛田君のほうがよかったみたいで、この試合を見てもあんまりプルプルしてなかったよ。
……それはさておき、次は4試合目。
準決勝戦。
翔と剛田君の一騎打ち。
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