第673話 全国大会個人戦 開戦
「今日も頑張ってね!」
「おう!」
次の日の朝。
会場でストレッチをしている翔に、俺はそう声をかけた。少し雑談しところなんでもものすごい数の記者にインタビューをされたらしい。
ま、イケメンで頭がいい高校の柔道部の部長であれだけ強くて全国優勝しちゃったんだから、そうなるのは当たり前かな。
テレビ番組に出たりしたらどうしようね。
【イケメンすぎると話題の柔道部員】みたいな感じの肩書きでバラエティ番組やスポーツ番組に呼ばれるかもしれない。
そのうちリルちゃんまでセットになって……どこかから翔が既にテレビに何回か出てる桜ちゃんや叶達と幼馴染なのがバレ、そこから俺たちのこともバレ、するすると最終的に俺たち6人全員がテレビに出る羽目になり、テレビ会社の思惑通りに…だなんて。
あ、これ美花が言ってた空想の受け売りね。美花の予感は当たるけど、これは空想だから大丈夫だよね。…ね?
それにしても、疲れててもおかしくないのに表情とか見る限りではかなり元気なんだよね、翔。
大方、昨日の夜にリルちゃんに膝枕でもしてもらって良い気分になってるんでしょ。
俺たちは瞬間移動で家に帰ったんだけどね。
「リルちゃん、なんかご機嫌ね」
「わふふん、ショーが今日も活躍するとこを観れるからね! 幸せだよ」
「……でも昨日、あれだけエッチくモンモンとしてたのに、それは解消できたのかしら?」
意地悪い表情で美花はリルちゃんにそうきいた。リルちゃんは顔を赤くしながら答える。
「だだだ大丈夫、大丈夫だよ。なんとかなったさ」
「そ、なら良いけど」
しばらくして出場選手である、剛田君、そして翔がスタンバイすることになった。
星野君も出場選手なんだけど階級が違うからね、昨日、車で来たと言う教頭と共に別の会場に行ってるの。
……最後にもう一度、言葉をかけてあげよう。
「とにかく頑張ってよ、翔。これだけテレビに注目されてるし、NAKから全国放送までされるんだから。……応援してるからね」
「ああ、応援しててくれよ。団体も、個人も優勝もぎ取ってやるぜ」
俺と翔は拳を合わせた。
男と男の約束ってやつだ。……まあ一周りちかく大きさ違うんだけどね。
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【始まった……な。団体戦とはまた違う】
館内に入り、観客席に座ったところで叶の足元をついてきていたシヴァが犬座りしながらそうメッセージを送ってきた。
どうやら昨日のも大いに楽しめたらしく、やけに上機嫌なんだよね。
「わふ、やっぱり翔はかっこいいなぁ…」
「昨日と同じように一際かっこよさが目立つわよね」
美花とリルちゃんがそう言うように、テレビ局も翔に注目しているみたい。
さらにそれは昨日よりも際立っている。
それはなぜか。
翔は身長約180cm、体重90キロ……なのに見た目が細マッチョ(綺麗な逆三角形)だからだ。
つまり、脂肪を全て筋肉にしてしまうどころか、さらに体内に緻密に押し込んでることになる。
周りはおデブちゃんだったり、半端じゃないほどの高身長だったりする中で、翔だけが不釣り合いにかっこいいの。
ぶっちゃけ叶からきいた話だと、『異常に高いIQ』を持つ叶と同様、翔は『凝縮され、見た目以上に筋肉がある超人的筋肉質』という異常体質らしい。
もともとマッチョで見た目以上の怪力を持ってるとは思ってたけど、なるほど、納得って感じ。
ふふ、なんかすごい。
それってつまり、骨格的に同じ体重の人達とはかなり不利ってことになるけど、それでも。
「__________なのよね?」
「わふわふ、そうだよ。ショーは見た目と体重と身長、それぞれが不釣り合いなんだ。あの肉体の下には凝縮された筋肉が詰まってるんだよ!」
お、どうやら美花とリルちゃんは俺が考えてたことと同じ話をしてたみたい。
「へぇ…ところでリルちゃんもアナズムで体鍛えて、ナイスバディになってるわよね?」
「み、美花ちゃんと桜ちゃんだってナイスバディじゃないか!」
「私と桜は痩せてるだけだよ……結構たくさん食べてるはずなんだけど。リルちゃんもそうよね? 体質は」
美花、桜ちゃん、リルちゃんの三人は食べても太らない体質なのは俺も知ってる。ちなみに俺と叶もだよ。翔は超人的筋肉質だから論外ね。
「わふ、確かにそうなんだけどさ。スタイルが良くなるように筋肉つけたら体重がそれなりに上がっちゃって……これで完成形だから悩んでないんだけどね。どっちみち、ショーに合う私とは全然違うんだ」
「うん、健康的でスタイルがいいって最高よ」
「わふふ……あ、そろそろ始めるよ!」
「そうねっ」
「……また私が…その、あのね、ショーを見てふわふわドキドキしてたら、介抱…お願いしまふ」
「任せてよ」
さて、インターハイの柔道…正しくは全国高等学校総合体育大会柔道競技大会90キロの部、これから始まろうとしてるよ。これでも翔が優勝してほしいな。
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