第672話 全国団体戦優勝 (翔)

「「おめでとう!」」



 閉会式が終わった。

 有夢と美花が勢いよく抱きついてくる。きっと、周囲の奴らは羨ましそうな顔をしてるんだろうが、これは幼馴染の特権ってやつだ。



「いやー、しちゃったね、全国優勝!」

「すごーい! 星野君、二山君、中川君、剛田君も頑張ったね!」

「「すごかったです、翔さん!」」



 先ほどからそう言われるがなかなか実感がわかない。

 気がついたら、一本背負いで毛利のやつを倒していた。喜びがこみ上げる。嬉しくて仕方ねーよ、ほんと。

 

 それはそうとさっかから俺の大事な人が見当たらないんだが。



「なあ、リルはどこだ?」

「リルちゃん? ああ、リルちゃんならそこだよ」



 何故かわからんが、柱の後ろに隠れてるみたいだ。

 俺はそこまで寄ってった。俺の気配に気がついたリルはギョッとして…なんだか真っ赤な顔で俺のこと見つめている。



「リル、優勝したぜ」

「う、うん! お、おめでとう…」

「……どうかしたのか?」

「我慢できないんだ、近くに居られると」

「何が?」

「ぎゅーってしたい気持ちが」



 目を潤ませながら上目遣いをしてきた。赤くなっている顔と相まってめちゃくちゃ萌える。

 


「ハグくらいいくらでもしてやるよ。ずっと応援してくれてたしな」

「ほ、ほんと? 良いんだね?」

「ああ」

「……じゃあお邪魔します」



 有夢と美花よりもさらに強く、リルは抱きついてきた。

 両腕でがっちりと固められる。

 …あー、めっちゃ柔らけー。美花も柔らかかったが…やっぱりリルは大きさと躊躇なく強く抱きついてくることにより、胸が顕著に……。



「む、翔。さっそくいちゃついてるのか」

「あ、ゴリセン…」


 

 しまった、ゴリセンに見られちまった。

 ま、ぶっちゃけさっきから他校や後輩・同期たちに見られまくりだがな。



「とにかく優勝おめでとう。正式なお祝いは年明けにやるが、あとでミーティングでプチお祝いだ。……その時に新聞やらの取材もされると思うから、なんか上手いこと考えとけ。どうやら周りからはあの準決勝の3人抜きが大好評らしい」

「そうなんすか」

「うん、うん、あの時のショーね! すごくすごーくカッコよかったよっ!」



 リルは顔をあげ、目をキラキラさせながら割り込んできた。そうか、そこまで評判良かったのかあれ。

 そう言われて悪い気なんて全くしねーぜ。



「わかりました」

「じゃあ、宿に戻るぞ! ……そうだ、成上達はどこに泊まるんだ?」

「あ、近くの旅館だそうです」



 本当は瞬間移動ですぐさま自宅に帰るのだが、そんなことは正直にはいえないからな。

 俺たちは有夢、美花、叶君、桜ちゃん、何故かついてきたシヴァと別れ、旅館へと入っていった。



______

____

__



「あー…疲れたぜ」

「お疲れ様」


 

 大会が終わってから3時間か…もしかして5時間か。もうどのくらい時間が経ったかわからねーが…とにかく疲れた。

 最初に戻ってきてからうちらの高校にあてがわれたミーティングルームで、ゴリセンからのお祝いの言葉と、新聞やテレビ、雑誌の記者によるインタビューの嵐。

 

 そのインタビューの嵐がやばかった。

 星野や剛田にもインタビューは来ていたが、特に俺。

 何回聞かれるのか、もうもみくちゃに質問ぜめにされちまった。

 私生活だとか、抱き合っていたリルとの関係だとかいらんことまで聞かれたしな。

 ゴリセンもまあまあ色々聞かれてたが……顧問と比べても俺の方が質問責めされてただなんておかしな話だぜ。


 さすがは本職だ。

 リルが例の特別留学生だと大半の記者にすぐにばれちまった。『そういえばテレビに火野選手、一緒に映ってましたよね』なんて言われる始末だ。

 

 中には質問の答えに詰まっちまってステータスを開き、有夢曰く『素早さ』のステータスを使って自分の体感時間をゆっくりにした『ゾーン』状態にし、ゆっくり考えたこともあった。


 それがほんとに時間かかったんだぜ。

 そのあとは他校と若干交流しながら夕飯を食べ、リルの部屋でお風呂…でも良かったんだが今日は温泉にはいり。


 んで、今は結局、愛しのリルの部屋でゴリセンが定めた就寝時間までゆっくりさせてもらってるわけだ。

 ……浴衣を着ており、まだ風呂から上がったばかりだとわかるリルに膝枕をしてもらっている。幸せだ。



「……わふふ、私、今日また取り乱しちゃったよ」

「マジか」

「ショーがあまりにもかっこいいんだもん!」

「そ、そうか、ははは」



 こうしてもらってるだけで昨日の疲れは全て吹っ飛ぶだろう。このまま寝ちまいそうだ…。



「ね、ショー」

「んぁ? なんだ?」

「……ご褒美、あげるよ。ちょっと膝枕のいてくれないかな」

「あ、ああ」



 俺が膝枕からどくと、リルは自分の浴衣に腕を引っ込め、なにやらごそごそとし始めた。

 プチン、という音とともに、リルは自分の下着を手につかんで袖から取り出し、それをあさっての方向に放り投げる。



「り、リル?」

「待っててね…」



 着物に腕を通し直したリルは、今度は襟を掴み……ガバ、と、勢いよくはだけさせる。

 俺はこれを見慣れてるっちゃ見慣れてるが、見慣れてたとしてもやはり反応しちまう。



「……どうぞ、好きにしてよっ。煮たり焼いたり」

「い、いや困るぜ。今は…その、学校行事でここにいるわけだし行くとこまで行けないんだ。逆に悶々として明日を過ごすことになっちまうのは困る。中途半端なのは_____」

「確かにそうかもしれない。でも私自身……今もうすでに悶々してるんだ。少し触ってくれるだけで良いからさ……ダメ?」



 そんな可愛くおねだりされちまったら…我慢したいけどよ…つ、つかんでいいんだよな?

 


「ほんとに最後まではしないからな」

「うん、でも苦しかったら言って? がんばってなんとかするよ」

「おう…」



 とりあえず俺は俺の欲望のあるがままに、リルの胸を揉むことにした。

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