第646話 転生ショップ再び

「よし、みんな戻って来たね!」



 日曜日が終わったので俺たちはいつも通りアナズムにやってきた。しかし昨日からカナタがやけにニヤついていたり、ショーにまた嬉しい結果ができたりとそれぞれでなにかしら変化があるんだよ。

 結構濃厚な一週間だったと思うの。



「んじゃ、まずは……ショー、地方大会1位通過おめでとう!」

「おう! サンキューな!」

「さすがは翔よね!」



 ショーにはなんの心配もしてなかったけど、やっぱり無事に地方大会も制覇してしまった。

 しかもまたまた1位通過。圧倒的だね。

 そしてリルちゃんは…。



「むふぅ…ショー…すきぃ…」

「おうおう」



 もし液体化できるならドロドロになってるんじゃないかと言うほどショーにベタベタと。

 もう3回目だからかショーは慣れ始めてるみたいで、リルちゃんの頭を撫でながら相手をしてるの。



「さてと、今回もショーのお祝いをしようね! なにが食べたい?」

「ステーキに…寿司に…やべ、次なにがいいか考えてねーわ」

「そ? なら俺が考えておいてあげる」

「楽しみにしてるぜ」



 なにがいいかなー、中華料理で行ってみるか。高級な料理が多いからね。さすがに蝙蝠とかチャウチャウとかの日本人から見たゲテモノは無しにして。

 フカヒレとかフォアグラとか。



「ところで昨日から桜が惚けてるんだけど、叶君、昨日デート中に何かした?」

「えっ……い、いや…ふつーにデートしただけだよ、ね、桜」

「えへ…うんっ。デートしたっ」



 確かに昨日、叶もなんだか様子がおかしかったけど…あれか、なにか進展したのかな。

 キスまでしかしてないとか言ってたし……裸を見せ合ったとかなら叶がもっとオドオドしてるから……多分、ディープキスに挑戦したとかそんなんだね。



「そういうミカ姉こそ昨日は家でにいちゃんと何してたの?」

「ん? いつも通りのことよ」

「いつも通りねぇ」



 そうそう、いつも通り。

 いつも通り、他人には言えないようなことしたからね。

 仕方ないよね、そうとしか答えられなくても。

 へっへっへ。



「じゃあみんなあとは自由にしよーか。夕飯になったら呼ぶからねー」

「おう、そうさせてもらうわ」

「ショーはリルちゃんとイチャつかなきゃいけないもんね」

「ま、まーな」


 

 ショーは豪快にもデロンデロンのリルちゃんを片手で軽々しく抱き上げると自分たちの部屋に戻っていった。

 今のは俺とカナタには無理だわ。いくらミカとサクラちゃんが痩せてて軽いからといって片手だけで抱き上げて移動するのは無理。



「有夢、あれできる?」

「さすがに無理だよ。お姫様抱っこが精一杯」

「だよねー」

「とにかく俺たちも部屋に戻ろ。今日は勉強しよう」

「あ、にいちゃん、ちょっとまって!」



 カナタが呼び止めて来た。

 声色的に何かお願いするときの呼びかけだ。なんだろ。



「どしたの?」

「今、俺たちの中で一番転生回数が多いのってにいちゃんだよね?」

「まあね」

「あの転送装置の転生回数を使用したランダムの機能を追加する機能、できる限りやってくれないかな? 今、あれが唯一の地球にアナズムでの影響を及ぼせる装置だからさ」

「いいけど……どんなのが欲しい?」



 お地蔵様の機能ガチャは何回できるだろう。

 かなりたくさんできると思うんだけどな。



「そうだね……まず、アナズムにいた前の導者がこちらにあの幻転地蔵を持ってこれたことから、アナズムの物を向こうに持ち込む機能があるはず。まずはそれ。…あと、もしあったらでいいんだけど、地球にステータスとスキルの影響を及ぼせる効果もできたら欲しい。存在するかどうかはわからないけど」

「へぇ、なんで?」



 カナタはいつの間にか腕に抱きついていたサクラちゃんをナデナデしながら答えるの。



「前者も後者も魔神対策だよ。魔神が見つかってこちらに敵対してこない……とは言ってるけど正直信用するには至らない。いつでも向こうで封印できるようにしなきゃね」

「ん、そういうことならわかったよ。でももしそんな機能がついても悪用だけはしないようにしないと」

「それならにいちゃんだけ対象にするとかもできるんだからそうすればいい、ま、その辺はおいおい考えて。……俺たちも部屋に行くよ。……この二週間の間だったらいつでもいいから。じゃあね」



 それだけ言うとカナタとサクラちゃんは部屋に行ってしまった。俺とミカだけのこる。



「たしかにアナズムのスキルが使えたら、地球の再来週のショーの全国大会も観に行けるかもね、叶君のスキルで」

「あー、たしかに。じゃあなんとか出すかぁ…。でも国王様に魔神について相談したりしないとね。魔神のせいで色々忙しいよ」



 敵対する意思が無さげなのはいいんだけどね。警戒は解けないのがめんどくさいの。



「ま、時間はたっぷりあるし今日はのんびりするとかでもいいけどね」

「そ? じゃあ昨日のつづきする?」

「……誰もいないからってあんなにたくさんしたのに?」

「流石に調子に乗りすぎたよね……。ま……冗談よ。叶君のお願いやろ。転生回数足りなくなったら私も協力するし」

「うん、だね」


 

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