第627話 神隠しの裏側
「みんなおはよう! まあ、呼び出したのには訳があるんだ」
「訳がなかったらにいちゃんたちは呼び出さないでしょうに」
次の日、早速俺とミカは4人を呼び出した。
昨日もお楽しみだったんだろう、ショーとリルちゃんは互いにべったりくっついている。無論、俺とミカも色々したからラブラブだけど。サクラちゃんもカナタの腕に抱きついてるし。
ああ、べったりしてない人なんて居なかったわ。
なんて、そんなこと考えてる暇はないの。
「えーっとね、みんなを呼び出したのはちょーっと昨日、非常にまずいことが判明したからでして」
「えっ……お姉ちゃんとあゆにぃなにしたの?」
「国の反逆者にでもなったか?」
「いやいや、俺達はなにもしてないよ? 魔神関係のことさ」
冗談を言っていたみんなは途端に真剣な表情になる。特に一度リルちゃんをスルトルに殺された経験があるショーはとても稀な怪訝な顔をしてるよ。仕方ないよね。
「で、何か進展があったの?」
「進展もなにもねぇ…なんて言ったらいいのか。とにかく、昨日あった出来事を伝えるよ」
「ん、お願い」
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「………まじで?」
「うん、まじで」
ショーが冷や汗を流しながら苦笑いしてる。もしこれが俺達による冗談ならばそうであってほしいと考えてるような顔だ。
「……いや、何の関係もない訳ないだろうとは考えていたけどね、あの幻転の神様だっけ? あれを祀っている地蔵にそんな秘密があったとは」
「まさか、あんときマジでリルは取り憑かれる寸前だったってことか!? 冗談じゃねーぞ…あっぶねぇ…」
そういうとショーはリルちゃんを肩から抱き寄せるの。
「もう2度とあんなのはごめんだからな」
「わふ……? わふぅ」
あの時は一瞬で死んだらしいリルちゃんは頭に一瞬はてなマークを浮かべたけれど、ショーに抱き寄せられたのが満足なのか目を細め始めた。
「でもちょっと前ににいちゃんとミカねぇと翔さんは、地蔵の頭が抜かれたという情報も聞いたんだよね?」
「そうそう。そしてそれからみんなに色々ちょっかいかけてくるあの黒いフードの人が現れたんだよ」
「……うーん」
カナタは考える。
その間にリルちゃんは手を上げて質問をし出したの。
「そもそも私、あの地蔵がどうしてあそこに置かれてるかとか、全然知らないよ。度々みんなの話に出てくるけど、あれは何なのかな?」
そんなリルちゃんの質問に、カナタは反応した。
「あれは、神隠しにあった武士の子供を祀るために置かれたもので、通りすがりの彫刻家がその子供が居なくなってから数年後に葬いとしてあそこに寄付したらしいんです」
「数年後…….ってことはやっぱりそのジャパニーズサムライの子供は見つからなかったの?」
「ええ、おそらく」
「なんとも…悲しい話だね」
リルちゃんは耳をしょんぼりとさせて態度に示した。しかしすぐに耳をピンと立て、疑問そうに話を続ける。
「でもなんで通りすがりの人が石彫り…お地蔵様を寄付するのかな? しかも、中にこっちの世界のものが入っているという危険物を」
「あ、もしかしてリルさんもそう考えますか?」
「わふん、これしかないよ」
え、二人がいきなり波長し始めたんですけど。
……でも確かに、いきなり現れた人が危ないものが入った地蔵を置いてくなんて怪しすぎる。
行方不明になって……そのもとにアナズム関連のアイテムを届けてくる人が居て……。
そういえば賢者って呼び出された時はほぼ誘拐みたいになるんだっけ。周りの記録から抹消されて。
でも地蔵様が置かれたと言われてる時代って、子供一人が居なくなったところで今ほど不自然なことはなく、簡単に辻褄を合わせられそうだな。別に周りの記憶を消さなくても…。
うん、なるほど、二人の結論はそういうことか。
「つまり、その地蔵を持ってきた人イコール、行方不明になった子供…っていうのとでしょ?」
「そういうことだよ、にいちゃん。みんなも気がついたみたいだね」
周りを見ると、確かに全員が気がついたよう。ちぇっ、カナタ、リルちゃんに続いて解けたと思ったのにみんなどうじかよ。つまんないの。
「でも、なんで数年後に大人になって現れたのかな? 私たちはそんなことないのに」
「まあ、俺たちの場合はたった数ヶ月の話だからわかりにくいってのもあるけど、リルさんや光夫さんの例みたいに自由に時間の辻褄を合わせることが『神』にできるのだとしたらなんら不自然なことはないよ」
昨日の内容を話してからたった数分でここまで話が進んだ。やっぱり弟は頼りになるね! 兄より優れた弟がここにいる。
「じゃあ、あの黒フードの人もジャパニーズサムライだったりするのかな? イミフカなことたくさん言ってけど」
「イミフカ…? ああ、意味深か。それはまだわかりません。ただ、その可能性は捨てきれないし、あれ自身が魔神ってことも考えられます」
なんかネタを提供するだけで勝手に考察してくれるって楽しいな。優秀な弟に全て任せる子も、いいものだ。
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