第590話 ラーマ国王の曾祖父の日記
「それじゃあ早速、そのひいおじいさんの日記を見せてもらえますか?」
「ああ、今それは城内の書庫に置いてある。行こう」
俺とミカはそれにしたがう。
付き添ってさっきのドルオタ紳士や、他の使用人さんたちも付いてくるみたいだ。
やはり国王だから城内を歩くときでも人は誰か付き添っているものなのだろうか。
…でも、メフィラドの国王様はそんなことないしな…多くても2~3人…。
「む、なぜ皆はついてきて居るのだ! アリムちゃんとミカちゃんを見たいのはわかるが、客人の前だぞ! 仕事に戻れ!」
ラーマ国王がそう言うと、ついてきて居た人がほとんど渋々いなくなって、残ったのはドルオタ紳士と前にも出会った護衛のハヌマーンって人、そして日記の研究を任されて居るのだろう学者さんだけとなった。
「いや、失態を見せてすまない」
「い、いえ」
「まあこのように、我が国ではアリムちゃんはものすごく人気なのだ。…ついたぞ」
ラーマ国王は一つの部屋の前で足を止めた。
書庫、あるいは図書室だね。メフィラド王国の場合、お城のすぐ近くにでっかい図書館がある。その代わりお城の中の書庫はあんまり充実してないんだ。
『いちいち外にでないとたくさんの本が読めないのがめんどくさい』とカルアちゃんが愚痴をこぼしてた。
まあ、城を移動するだけでも数分は時間かかるからね。
「うむ、置いてあるな…。あれだ」
ラーマ国王が指差した先、机の上には大事そうに1冊の分厚い日記が置かれていた。これがラーマ国王のひいおじいさんの日記なんだろう。
「…メッセージでも話したが、思いっきり風化してしまって居てな。肝心な…導者を指名してからのその先がわからないのだ。……これの存在に気がつかず放置していた我々の落ち度だが」
今までの歴史が動き出しそうな文献を見つけたと思ったら風化していてボロボロでしたって、あるあるだね。
地球だったら復元技術が進んでおり、叶の脳や桜ちゃんの目を調べている例の研究機関が…なんかよくわかんない技術で過去の文献などを完全に読み取ることに成功し、歴史が大きく変わったんだ。
無論、教科書もね。だから両親の世代の人たちと俺たちとでは教科書の内容が全く違う。
そんなことを俺がやるのか。
ふふ、なんだか楽しくなってきたぞ。
「修復するのはこの1冊だけで良いのですか?」
「え…ああ、そうだ! ついでに他の本も直してもらえば良いのだ! おい、歴史的に重要だが風化してしまった本はたくさんあっただろう! 司書達にすぐさま報告し、持ってこさせるのだ! ハヌマーン、兵たちをいくらか動かせ。本は重いからな」
「ハッ」
テキパキと指示を出せるところは、いかにも人の上にたってるって感じでかっこいいなぁ。まあこの国王、ドルオタなんですけど。
「いやぁ、はは、すまないな。報酬は1冊につきこのくらい払おう」
「え、いえ、そんなに良いですよ。そもそも報酬もらうつもりで来てませんし」
そう告げるとラーマ国王はキョトンとした顔をするの。
「そうなのか?」
「強いて言えば暇つぶしの一環ですかね」
「そうか。だとしても金は払うけどな」
む、意外と引き下がらない。まあ相手が渡したいと言っているのだから貰っておくか。
「わかりました。じゃあまずはその日記を直しましょう」
「うむ、頼んだぞ」
俺は手袋をはめてから日記を手に取った。
確かにボロボロだ。しかし、これに『アイテムに対してのアムリタ』のようなものを振りかけるだけで……!
「はい、最後に書かれた時期と同じくらいになったと思います」
「今のだけでか?」
「はい」
我ながら、このなんでも治せる薬便利。
普段はあんまり使わないんだけどね。
「では………ふむ」
日記を手に取り、ラーマ国王は表表紙と裏表紙をマジマジと見つめた。そしてページをパラパラとめくる。
満足そうに頷いた。
「完璧に修復されているな。素晴らしい」
えっへん、とドヤ顔をしてみる。
いけない、凝視された。ファンの前であざとくするのはいけないね。マジマジと見れて落ち着かない。
「まず、いくらかもって来ました」
付いてきていた学者さんが、ボッロボロの本を持ってやってきた。見るだけで数百年ものだとわかる。
「ほう、まずそれを持ってきたか。歴史的価値があるとはわかっており、修復したら膨大な情報を得られるであろうが、まず修復できないから一応保存しておいたというものだ。治せるかな、アリムちゃん」
「ちょちょいのちょいです」
俺はその3冊の本に、先ほどの修復液をドバッとかけた。たちどころにみるみると製本された当初の姿に戻って行く。
「おぉ…素晴らしい!」
「国王様! アリム様! 持ってきてまいりました!」
「む、それも歴史的文献か! ははは、一気に歴史の研究が進みそうだな!」
司書さん達も本をたくさん抱えて持ってきたみたいだ。いいぞ、片っ端から直しちゃえ!
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申し訳ありません、昨日、投稿を忘れてしまいました。
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