童話 蟻ムと曲木リス 2

何かの虫の生態系だと思って閲覧してください。 


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 これは、アナズムとは別の世界のお話。



「マガ……ミカァ!」

「アリムゥ!」



 1匹のマガリギリスと蟻ムが仲睦まじく、ひしと抱きつきあっていました。

 


「無事に子供達を産んでくれてありがとぉ!」

「アリム達の子供なら何人でも!」



 ある一件により蟻ムの集団の元に嫁いできたマガリギリスは蟻ムらの子供達を次々と産んでいました。

 この世界では、蟻ムの子供を産むのはマガリギリスです。また、蟻ムの代わりにマガリギリスも生まれてくることがあります。



「えーっと、何人増えたっけ?」

「ざっと1.2倍かなぁ…」

「マガリギリス…ミカ達も入れると1.3倍だね」

「ふええ!? ミカ大丈夫?」



 ベッドに横たわり、一人の蟻ムと抱きついているマガリギリスに他の数匹の蟻ムも心配そうに近づきました。

 しかしマガリギリスはピンピンしているようです。



「まだまだ大丈夫よ!」

「そーなの?」

「あんまり無理しないでね?」



 蟻ム達はマガリギリスのお腹や頭を撫でたりします。

 マガリギリスは嬉しそうに微笑みましたが、ふと一つ疑問に思ったことがあり、蟻ム達に尋ねることにしました。



「そういえば食料は大丈夫なの?」

「ああ、全然大丈夫だよ。食物が腐らずほぼ無限の広さを持つ魔法の倉庫に……このペースでボクやミカが増えてもあと10代は大丈夫かな」

「すごいでしょー、えっへん!」

「蟻ムの技術は世界一ィィ!」



 嬉しそうにはしゃぐ蟻ム達。

 


「そう…じゃあまだまだ子供作れそうね」

「家族が増えるよ! やったね!」



 さすがに若干疲労の色が見えるマガリギリスは、隣にいる蟻ムの手を握りました。少し寝かせてくれという合図です。



「みんな、マガリギリス眠いって!」

「そっか、じゃあ静かにしようね」

「シーッ、だよ?」

「じゃあ今日お相手したアリム以外はたいさーん!」



 アリム達は頼まれた通りにマガリギリスの寝ている部屋を後にしました。その代わりにやってきたのは、数十匹の子供達のところです。



「みんなー! 遊びに来たよー!」

「あーっ、ママだー!」

「ママーッ!」



 先ほどまで数人しかいなかったこの場所に新たな大人が入ってしたことで、幼い蟻ムやマガリギリス達は遊びを求めています。



「ママ、お母さんは?」

「お母さんは今、とっても疲れてるから休んでるんだよ」

「ぷきゅーっ! 遊びたかったのにィ!」

「でもお母さんが大変なんだから仕方ないじゃにゃい!」

「ぷひゅー…。しょれは…しかたにゃいね」



 子蟻ムはしょんぼりしました。そんな子蟻ムに子マガリギリスは抱きつきます。



「に、にゃに?」

「んふふ…アリムーしゅきー」

「ん…にへへ、ボクもしゅき」



 子蟻ムは抱きついてきたまマガリギリスを抱きしめ返します。その様子を見て大人の蟻ム達はヒソヒソと相談を始めました。



「こんな年からもうそんな関係なの?」

「この二人はいつ生まれたんだっけ?」

「一人は一昨日の正午、もう一人は同じ日の午後9時だよ」

「そっか、同じ日に生まれたのか」

「ああ、そういえば一昨日はミカ、すごく頑張ってたもんね」



 自分達をより幼くしただけの容姿の子供達を見て、大人の蟻ム達は満足そうに微笑みます。

 そしてそれぞれ2~3人を一緒に相手にし、お歌を歌ったり、絵を描かせたり、組手をさせたり、アイドルの真似事をさせたり、次世代を担うための新しいプロジェクトの開発をしたりしました。



「むうーん! 我が子達は食べちゃいたいくらい可愛いねぇ!」

「ねぇ!」

「え、ボクとミカきゃわいい?」



 子蟻ムのその問いに、すべての蟻ムは頷きました。ほとんど自分と姿が同じなため自画自賛のようになっているのは気がつきません。



「に、にゃらきゃわいいボクを抱っこしてね!」

「あ、わ、わたしみょ!」



 子供達は足りない身長からぴょんぴょんと飛び、蟻ム達に抱きしめるように催促します。

 蟻ム達はそれをしあわせそうな顔をしながら受け入れました。



「にへへー、だっこー!」

「だっこー! むぎゅー!」



 しあわせなひと時が流れます。しかし、そんな時。



「た、たいへんだー!」


 

 1匹の蟻ムが真っ裸のままでこの部屋に突入してきました。先ほどまでマガリギリスと眠っていた蟻ムです。



「うわ、どしたの!?」

「ち、ちょっとせめて何か羽織ろうよ! 子供達が居るんだよ?」

「蟻ムにもマガリギリスにも男はいないからいいものの」



 蟻ムとマガリギリスは互いにメスの個体しかいませんが、なぜか生殖ができるのです。

 裸のままの蟻ムは慌てた様子で話を続けます。



「ま、マガ……ミカが息してないんだ!」

「「「「な、なんだってーー!?」」」」



 蟻ム達は急いでマガリギリスの元へ行きます。



「み…ミカ!?」

「大丈夫!?」



 一匹が脈と呼吸わ調べました。

 首を横に振ります。



「最近、頑張りすぎたから…」

「…くぅ…もっと気を遣わせてあげられてれば…! うっ…ふぇ…ぐす…」



 蟻ム達は自分達の失態を責めました。

 泣き出す蟻ム、ショックで倒れこむ蟻ム、頭の中が真っ白になった蟻ムと、様々です。

 マガリギリスを診察した蟻ムが一本の瓶を取り出しました。



「じゃ、アムリタ投入するよー」



 アムリタとは蟻ムが作れる史上最高の薬です。どんな生き物の病気や怪我、さらには死亡した状態であったとしても健全な状態に治してしまいます。



「ふぅ…こんどは無理しないように注意してあげなきゃ!」

「無理しようとしたら『ぷくーっ!』ってするよ!」

「でもまずは、よく寝かせてあげなきゃね!」



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「……はっ!?」



 ミカはまた変な夢を見て目を覚ました。

 


「……なんか前もおんなじようなの見た気がする。それにしても私達の子供、本当に可愛かったわね……ふふ。ま、いいや寝ましょ」



 ミカは再び有夢に抱きつき、二度寝をし始めましたとさ。



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今年は気がついたら5/5が過ぎてました。無念です。

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