第547話 披露宴 -2-

 拍手喝采。

 いやぁ、激しくて情熱的なダンスを生で5分も見ることができたよ。途中でラーマ国王が何回かこちらをチラ見してくるのは気になったけど。

 正直言ってダンスそのものは古い記憶にあるインドのダンス映画のダンスに負けない。

 今後もこのレベルのものが観れると思うとワクワクする。

 いやまあ、全部が良いものであるとは限らないけれど、それでもほとんどの出し物が一国が責任を持って催してると考えると逆に今のレベルじゃないと他の国に示しがつかなくなったりしそうだもの。



「次は_____国による出し物です。お願いいたします」



 あんまり力が強いわけじゃない国が今度は出て来た。

 俺の勇者宣言の時には居た…のかな?

 どうだろう、覚えてないや。


 この小国の出し物は『スキルを使わないで行われる瞬間移動術』とかいうのだった。

 瞬間移動はめちゃくちゃなレアスキルみたいだし、それをスキルを使用しないで行うというのは凄いことかもしれないけれど…本質はただの手品だった。しかも陳腐。

 会場は盛り上がったけどね、地球から来た俺たちを喜ばすことはできなかったよ。


 その次の国の出し物は絵画、新郎新婦の写実の実演披露。これは俺のスキルの方が上なことを知ってる新郎新婦や国王様を含めたみんなでも満足できるようなスピードとうまさだった。

 描いてた人はその国の国王らしいんだけど、俺が思う限りではおそらくメフィラド王国城城内の料理長さんと同様に『真・料理長』に補正をかける称号を手に入れてるのかもしれない。

 まあそれでも俺の方がうまいけどね! ふふん。



「次はエグドラシル神樹国使者、SSSランカーのヘイムダル氏からの出し物です」



 カナタ達がお世話になったっていう、この間うちに訪れた人だ。白いひげの角笛ホルンを持ったおじいちゃん。

 えーっと確かこの人は記憶が確かならば召喚魔法使いだったはずだ。

 1~2体の強力なものを呼び出す国王様とは違い、それなりの力で数万と呼び出せる…ような人だったはず。



「それではクリス殿、よろしくお願いいたします」

「はい」



 ヘイムダルさんはクリスさんに何かをお願いした。

 クリスさんは懐から少し見覚えのあるものを取り出す。

 …確かあれは、この式場の舞台改造する際に、『大きな出し物もできるように舞台が広くなるように改造してくれないか』と報酬付き(国からお金が出された。なんでも結婚式が終わっても広くなるように改造しっぱなしでいて欲しいんだとか)で頼まれて作った装置だ。

 あれについてるボタンをポチッと押すだけで舞台がグッと広くなる。

 そんなスイッチを押した。



「ほほぅ…アリム・ナリウェイはやはり只者ではないの」



 確かにヘイムダルさんはそう呟き、舞台の上へと上がる。



「それでは…一人軍隊の本性をお見せ致しましょうかの」



 開口一番にそう言うと、ものすごく広くなった舞台に、ヘイムダルさんの後ろから無数の魔法陣が出現した。

 数はわからない。数えて見る気になるのも失せる。



「出でよ、我が眷属達よ!」



 大きくて威厳のある声でそう宣言すると、ホルンを吹いた。心に響いてくるような、そんな音が会場内に響く。

 それが魔法の発動と鍵だったのか、見る限りすべての魔法陣が光だし何かが召喚される。

 人形のような、戦士のような、あまりよくわかんない人型のもの。それが無数。



「軍隊に必要なのは統率力ですよな? …とくとご覧あれ」



 ダン、と人型が槍の柄で舞台を叩く音が響く。

 刹那始まる統率の取れた行動。

 まさに軍隊としか言いようがない動きを披露し始めた。


 俺も一応SSSランカーだからわかるけれど、俺だけの無数の人型をあれだけ精密にすべて動かすことは半端じゃなく難しい。控えめに言って凄いと思う。

 ……いや、俺もやろうと思えばやれるんだろうけれど、それには練習が必要だし、最悪、アイテムマスターで作り出したAIを使用して統率が取れている風に見せちゃうだろう。


 地球でいえば団体行動の組体操のようなものを、無数の人型達で行なっている。合間合間でウルトさんとパラスナさんの結婚を祝うような行為をしながらね。


 おじいちゃん強い。

 数、小なり、すごく強い個体…だってずっとそう考えてたからすこし衝撃かな。この人数のこの統率力ならSSSランクの魔物も倒せるだろう。さすがに魔神は無理だろうけれど。


 しばらくして組体操のようなものが終わった。

 最後にヘイムダルさんは軽くお辞儀をする。

 俺もたくさん拍手をしたんだ。



「それでは次は_____」



 それ以降ははっきり言ってヘイムダルさん以上のものはなかった。中には俺の期待を裏切って、まだ内装をジッと見ていた方が気が休まるのもあったしね。

 でもまあ…普通に楽しいのばかりだったのは確か。



「最後に、アリム・ナリウェイの出し物です!」



 ついに俺の番が来た。

 ここまでメフィラド王国の出し物が無かったのが気になるけど、もしかしたら俺の出し物がこの国の代表って事になってるのかもしれない。

 そうならば気張っていかなくちゃ!


 俺は舞台へと上がった。

 

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