第539話 式場への集合
「アリムーっ!」
パラスナさんをウエディングドレスに着替えさせてから10分後、ミカがやってきた。
この知り合いが結構いる場で抱きついてくる。
「あれ? もしかしてもうお手伝いしなくてもいい系?」
「うん」
「そうなんだ…手伝おうと思って早く来たのに」
ミカがションボリとうなだれる。
可愛いからその頭を撫でて励ますの。
「えへへ…もうギルマーズさんやバッカスさんはいるのね」
時間になるまで思い思いに過ごしている二人を見ながらミカはそう言った。
「じゃあもう新郎新婦もいるの?」
「居るよ。着付けも終わっちゃった」
「そうなんだ! 今は二人っきりなんだっけ?」
「そうそう、控え室に二人っきりにしてる。今頃思い出話でもしてるんじゃないかな」
結婚式前に二人っきりにして思い出話でもさせて、この式をより思い出深いものにするのも必要だと思うの。
「それにしても…よく考えついたわね、こんな装飾デザイン。アナズムでも、地球でも、必死に考えてただけあるわ」
この教会内をジッと見つめながらそう褒めてくれた。
そして照れ臭そうに唐突に頬を染める。
「わ、私と有夢の結婚式もこんな装飾だといいよね」
「まあそれは俺がなんとかすればいいから、実現しうると思うけど…」
「地球で結婚式をあげるときには……有夢はどんな職業についてるのかしらね? このままデザイナーとか?」
なるほど地球でデザイナー…か。
今まで考えて見たこともなかったけど悪くないかもしれない。翔は大学で帝王学を学んでキャリア組として警察に勤めるつもりらしいし、美花は俺と結婚してくれる。あーっと、カフェも開きたいんだよね。
俺だけが将来の夢なかったけど……デザイナー、これいいかもしれない。
「そうだねー…悪くないかもね!」
「そう? そう思う? まあ有夢ならなんにだってなれると思うけど」
ミカがずっと付いていてくれれば本当になんだってできそうだから。まあこのまま頑張ろっかな、地球でも。
アナズムだったらもうこのままでいいしね。
「……やっぱ早く来すぎちまったか?」
「ん? そうでもないようだぞ。すでにバッカスやギルマーズさん、アリムとミカが居るようだ」
この教会の門が開かれるとともにそんな声が聞こえてくる。
「わぁ…すごいすごい! 綺麗……!」
「…-ほんと、これはすごいなぁ…」
入って来たのは四人の男女。
ガバイナさんと、ラハンドさん。ラハンドさんの仲間のゴッグさんとマーゴさんだ。
声をかけよう。
「ガバイナさん、ラハンドさん、お久しぶりです!」
「アリム、久しぶりだな。すっかり遠い存在になったぞ」
「メフィストの野郎の事件があった時とはもう違う存在みたいだよナァ」
しみじみとそう言う二人。
会う機会がなかなかなかったから本当に久しぶりなんだよね。家に特別に訪ねてくるわけでもなかったし。
「あれから本当に色々あったな……」
「もうサンダーバードなんて瞬きしてる間に倒せるんじゃねぇのか?」
「はは…はい」
今ならサンダーバードをウインクとか投げキッスだけで倒せるかもしれない。…さすがにそれはないか。
でも肉弾戦なら小指一本、魔法なら魔力をあてるだけで倒せるのは確か。成長したね、こう考えると。
「あっ…み、ミカちゃん!」
ミカに気がついたマーゴさんはラハンドさんの後ろに少し隠れる。あのとき別れ際にミカを見ていた目とは全然違う目だ。
「おいおい、どうしたァァ?」
「だってミカちゃん遠い存在になっちゃって…なんだか緊張する…」
確かにあの時はただの身元不明な女の子だったんだろうミカがその年内に世界でトップレベルの大物になってるんだよね、マーゴさんから見たら。
「マーゴさんっ! 本当にお久しぶりですっ!」
「ひ、久さしぶりぃっ!」
ミカが声をかけると背筋をビクッと伸ばして怯える。
あーあ、緊張してるのか声も変なふうに上ずってるよ。
「ミミミミ、ミカちゃんあああ、あれからすごいね」
「えへへ…まあアリムに会えましたから。あれが人生の転機です」
「あ、アリムちゃんと一緒にいるだけでこうも変わるものなのかな…?」
そのミカの答えも結構的を得てるかもしれない。
実際カルアちゃんとかもだいぶ変わったし。
俺って実はすごい?
「……ゴッグさん、なんだかムスッてしてません?」
「あ、ゴッグはね、最近また彼女と別れたらしいの。その直後に結婚式に呼ばれたから……」
「あぁ、なるほど」
不遇なゴッグさんかわいそう。
今のが耳に入ってたのか、さらに表情が落ち込んだみたいだ。
「まあ結婚はオレらはまだだよナァ」
「……ああ」
25歳を超えた、おっさんくさいお兄さん達2人はそんなこと言い合っている。このままだとバッカスさんが報われない。
「でもガバイナさんは最近、言い寄られてるんでしょう?」
「その話をどこで聞いた? 一度仕事を一緒にした獣人の少女がよく話しかけてくるだけだぞ」
でもバッカスさんがああ言ってたってことは、何かしらのアピールしてるのかもね、その女の子は。
んで、もうひとりはものすごく鈍感なわけだけど。
それに関してはミカが突っ込んでくれている。
「酷いですよ、マーゴさんがずっとプロポーズしてるのに」
「そ、そうだよ…」
「だから何回も言ってるダロォ!? オレにとってマーゴは妹か娘みたいなもんだって」
「で、でも……ぅっ…」
マーゴさんはしょんぼりとした。
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