第506話 入部? (翔)

「では、本日はここまで!」

「「「ありがとうございました!」」」



 リルの実質人生初の部活体験は終わった。

 初めて見るくらい汗だくで、なんだかエロ……じゃなくて、まあ、必死にやったんだろうというのがわかる。

 割と長年柔道をやってきた俺としては、リルはかなりの素質がある。

 それははっきり言って体撃神奥義があるから当たり前なのかもしれねーけど。

 少なくとも未経験者だとは思えなかった。


 

「火野とフエンさんは残れよ」



 副部長含め、他のみんなが着替え始めた時にゴリセンはそう言った。

 その言葉通りに、俺とリルは別々の更衣室で着替えてから、この部屋の中央で話をしようとかまえているゴリセンの元へ。



「フエンさん、今日はどうだったんだ?」

「部活は、ノルウェーでは何かの部活の助っ人として今まで参加することはありましたが、自主で参加するのは初めてで……なんだか新鮮でした!」

「そうかそうか」



 そういえばスポーツ万能なんだっけか。

 記憶の中では、リルの言う通りに、部活の助っ人をしょっちゅうしているような人物だったんだろう。



「男しかいない中でやってみてどうだ? 柔道は楽しいか?」

「男子生徒しかいないのは特に気にしません。楽しいかどうかとしては……」



 リルはちらりと俺の顔を見て、すぐにゴリセンの方に肩を戻す。



「楽しかったです!」

「ならばよし」



 リルはなんで俺の方を見たんだろうな。

 俺に教えもらったのが嬉しかったのかな?

 ふふふ。



「事前に柔道は初めてだと聞いていたが、正直に言えば本当に初めてかどうか怪しいくらいだった。才能の塊だと言わざるをえない」

「そ、そうなんですか?」

「ああ」



 ゴリセンは柔道の指導者として相当な腕輪を持ち、その界隈でもほうぼうで有名であると聞く。

 実際、少ない日数で俺達をインターハイやら高体連やらで優勝、準優勝…少なくとも全国まで行って、なにかに入賞させちまうくらい指導はうまい。

 そんなゴリセンがリルにそういったんだから、俺の見解通り、リルもそうとう潜在が有るんだろう。



「あとは、君がうちに入部するか、それともマネージャーにとどめておくか、あるいは入部しないかは自由だ。フエンさん次第。……別に『火野が居るから入部する』という理由は俺は不純ではないと思う。好きな人の好きなものを、同じようになるのは素晴らしいことだ」

「は…はいっ!」



 おお、ゴリセンいいこと言ってくれる。

 さすがゴリセン。ゴリセンは信用できる人だって、俺も思うし、昔から先輩達に聞かされてたのも本当であると再確認したぜ。



「もし、入部するつもりがあるならば歓迎しよう」

「わ、わかりました! 先生!」



 リルはぺこりと頭を下げた。

 ゴリセンはニコニコしてる。

 


「それじゃあ、今日は帰れ。もう遅いからな。……火野、わかってると思うが女子は男がだな…」

「わかってる、大丈夫です。それでは」



 俺とリルはもう一度ゴリセンに頭を下げ、部室を出て、学校を後にした。

 もう少しで冬になるというこの時期、仕方ないとはいえもうかなり暗くなっている。



「わふん、ショー、私今、かなり汗臭いと思うんだ。手をつないで歩かなくても良いんだよ?」

「……え? いや別に臭くねーけど。それより俺はどうなんだよ」

「ショー? ショーの匂いは私好きだよ」



 う、そんなこと言われたら照れるな。

 学校の周辺だからまだそれなりに明るい道の中、リルは俺の腕に軽く抱きついてくる。

 ちょっとだけ頭に触れてみた。

 普段は癖はあるがサラサラな髪の毛が、今日は汗でグッタリ湿っている。



「ふん、ばっちいよ!」

「ばっちくねーよ。んなことより、本当にどうだったよ」



 俺ははっきり言うと柔道が好きだ。

 親父から警察の逮捕術とかみてーなの教えてもらったこともあるし、有夢の家の近所のおじさんから空手を教えてもらったこともあるが、やはり柔道が好きだ。

 そんな柔道を、リルはマジでなんて思っているのか。

 ゴリセンがいないから本音を言ってくれるだろう。



「んー? 日本の伝統的な武術は、日本好きな私としてはかなり興味深かったよ! そして、ついでに言うと楽しかった! ショーが一緒に居てくれるか…とかは別に、本気で部活に入ってもいいかもと私は考えてるよ」



 そ、そうか!

 なら…。



「マネージャーの方はどうなんだ? マネージャーとしてやるべきことが見つかったか? それとも見つからなかったから普通に部活に入るか?」

「わふん、そうだね。正直見つからなかったかな。だから入るとしたら普通に柔道部員として入るよ」



 普通に柔道部員として入るなら、本格的にやってくれないとな。まあ、リルに関してそんな心配はいらないだろ、真面目だし。

 うーん…彼女と一緒に部活か……俺が集中できるかな。

 剛田にさらに嫉妬されそうだな、ははは。



「あとあの先生…ゴリセン? も本当にいい人だね」

「ん、おうそうだな。あの人はいい人だ」

「わふーん。やっぱり私、柔道部に入るよー! 明日、もう入部届け書いちゃうね!」



 リルはにっこりにしながらそう言った。

 

 

######


まだ未定ですが、もしかしたら新作を数ヶ月後に投稿するかもしれないです(しないかもしれないです)。

それに従い、レベルメーカーの休載日なども起こりうるかもしれませんので(起こらないとは思いますが)事前に報告しておきます(´・ω・`)


3作品同時投稿なんて大丈夫なのかと心配してくださる方もいらっしゃるかと思いますが、おそらくそれは大丈夫でしょう。

今も2作品同時投稿やれてますし(・∀・)

そのままズルズルと永久に更新されなくなる末路はありえないので安心してください(・∀・)

ちなみにもし新作を投稿する場合、その更新頻度は初期数ヶ月間より先は『私は元小石です』と同等の投稿スペースにしようと考えております。


ではこれからも私の作品らをよろしくお願いします。



※このお知らせは一定期間ごとに繰り返します。

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