第503話 ウェディングドレスとご馳走計画

 次の日、宿屋『光』にて。

 今日はミカは同伴してないよ。



「とりあえず、ウェディングドレスのデザインができました。やはりこれとケーキが大切だと思うので、先に報告させて頂きます」



 そう言いながら俺はパラスナさんにウェディングドレスのデザインを見せた。

 それを手にとって眺めるパラスナさんと、横から覗き込むウルトさん。



「おおっ…これは!」

「すごい! アリムちゃん…これ、すごくいいわ!」



 おっ、どうやら良かったみたいだ。

 3日間本気で考えた代物だから、受け入れてもらえなかったら大変だったけどね。



「気に入ってもらったみたいで良かったです!」

「そうかぁ…ウェディングドレスはこうなるのか。パラスナによく似合いそうだな…試着とか…」



 ふふ、試着をすると思って、もう既に試作品は作ってある。…試作品って言ってもアイテムマスターで即興で作ったやつだけどね。無論、本番は俺がしっかりと手作りするよ。



「試着、今からしますか? 試作品は出来上がってるんです。無論、ウルトさんがパラスナさんのドレス姿を見るのは当日まで楽しみとして取っておいたほうがいいので、パラスナさんだけでも」

「いいの? 頼める?」

「もちろん!」



 そういうわけで俺とパラスナさんは別室に移動し、ウェディングドレスの着付けをし始めた。

 着せ方は事前にしっかりと勉強してるんだ。

 素早さと器用さを生かし、普通だったら数十分かかる着付けを俺は数秒で終わらせ、パラスナさんのその姿を鏡に映してあげる。化粧も軽くした。



「どうです?」

「す…すごい…! わああ…っ!」



 普段の大人びた雰囲気はどこへやら。少女のようには顔を綻ばせているパラスナさんは、ドレスの裾を持ってヒラヒラさせたりしてるよ。

 正直、とても綺麗だ。

 どこかで噂で聞いた話、パラスナも『魅了』系の称号を持っているらしいんだけど、それを加味しなくてもとても綺麗。

 ……ミカも綺麗なウェディングドレスを着たらもっと綺麗になるのかな? あれ以上美しくなるとか、もはや美の化身になるんじゃないかって思っちゃう。



「ね、アリムちゃん。どうかしら? …ウルトが見たら私のこと、なんていうと思う?」

「間違いなく、綺麗だって言いますよ」

「そうかな…そうだといいなっ…!」


 

 ニコニコしながらドレスを舞わせる。

 とてつもなく幸せそうだ。

 このあいだの会話で、パラスナさんとウルトさんがどれだけ愛しあってるかを感じ取れたから、この人の喜びがはっきりとわかる。うさぎの耳もピクピク動いてるし。



「じゃあ、ドレスはそれで」

「全く問題ないわ! 最高だよ! ありがとう、アリムちゃん!」

「どういたしまして! ではウルトさんの元に戻りましょうか」



 アイテムを使い、一瞬でパラスナさんを元の服装に戻し、ウルトさんの待つ部屋へ直行。



「試着終わりましたよ」

「…パラスナ、どうだった?」

「んふふ、完璧…かな!」

「そうか! 早く俺も見て見たいなぁ」



 本当に嬉しそうに、パラスナさんはウルトさんの横に座る。よほど、ドレスが嬉しかったんだろうね。

 一気にテンションが上がったと見て取れる。



「じゃあ、ドレスはそのデザインで良しということで。…ウェディングケーキや飾り付け、来賓した方々にだすお料理もまだ考えなくちゃいけませんね。ウェディングケーキよボクがしっかりと考えるとして……お料理です! もうだれが来賓するかわかってるんですか?」



 ドレスのことは一件落着したから次にそう訊いて見る。 ウェディングケーキのデザイン、デコレーション、味とともに出す料理も考えちゃおうと思うから、質問してみたんだけど。

 来る人によっては料理変えなきゃいけないからね。

 例えば…国王様とか。



「えーっと、バッカス、ラハンド、ガバイナ…それにギルマーズさんを中心とした、『ピース・オブ・ヘラクレス』の幹部の皆さんでしょ? あと普通に友達とか知り合いとか…あ、アリムちゃんとミカちゃんも呼ぶからね。それと…国王様方」



 むむ、やっぱり国王様達は呼ぶのか。

 それはそうか、SSSランカー同士の結婚式だしね。

 それにウルトさん達と国王様達は何かそれ以上の関係がありそうだし。



「わかりました…それだけですか?」

「ううん。他国や冒険者の協会の重役とかもたくさん来るよ。ここから遠いところに住んでる人達にはもう便りを出したりしたから、人によってはもうそろそろこの国に向けて出発してくれてる人もいるかもしれない」



 てことは、国王様と同レベルかそれほどじゃなかったとしても偉い人がたくさん来るんだ。やっぱりご馳走は本当にご馳走にしないとね。高級食材とかたくさん使うかぁ…。

 作らなきゃいけない料理や量もすごいことになりそう。



「わかりました。結構すごい人数になりそうですね。ボクの前じゃあ人数なんて関係ないですけどね!」

「頼もしいね。それじゃあ、引き続きよろしく頼むよ」

「はい! よろしく頼まれました!」



 さて…帰ったら今度はウェディングケーキの勉強しなきゃね。

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