第500話 リルと部活 (翔)
今のところ、リルがうちの学校に通っている期間は、現在、まだ1週間だけだ。
そのうちに俺の部活は2回あった。
部活が終わるのは大体午後6時半。
それまでリルは案の定、俺を待っていてくれたんだ。
部活が終わって______部室の前に先に帰ってろと言ったはずのリルが居て。
『やっぱり一緒に帰りたくてね。待ってたんだ。さ、帰ろう!』と言いながらさりげなく手を差し出してくる……いや、あの状況はなんというか______幸せだった。うん。
そして次の部活の日もリルは待ってくれて居たんだ。
どうやって時間を潰してるのかと問えば、終わりそうになる時間まで図書室で本を読んでいると答える。
つまり俺が言いたいことは、時間潰しにリルは何か部活に入らないのかということだ。
「ほら、リルは俺が部活が終わるまで待ってくれているだろ? その間になんか部活入んねーのかなーなんて。リルならなんでもできるだろ」
「わふん、そうだね…確かに部活は青春に必要不可欠な事だよね」
リルはウンウンと首を頷かせた。
「じゃあ陸上部なんてどうだ? リルは狼なんだし、走るのも得意だろ」
「いやだよ。あの部活、柔道部より日数多いじゃないか」
「じゃあ何がいい? テニスか? バスケか? ソフトボールとか。文化部も悪くねーな…日本が好きなら茶道部とか書道部とかなー」
うちの学校にある部活の名前を次々とオススメしていくも、リルは首を縦に振らない。
その一番の理由がどうやら俺と時間が合わないから…らしい。これは素直に喜んでいいんだろうか。
「じゃあ…もういっそ柔道部に入るか? なんならマネージャーでもいいぞ」
「ふふ、その言葉を待っていたよ。私もどっちかにしようと思うが……柔道部ってマネージャー募集してないよね?」
お、ノリノリだ。
やっぱりこれを望んでたんだな。
「まあそれは簡単だ。俺が部長だからな、顧問に掛け合えばすぐにでも」
そういうのは地位乱用と言うんだろーが…。
マネージャーくらいならすぐに採用されるだろう。
怖いのは他の奴らから俺がこんな可愛い彼女いることについて妬まれないかどうかか。へっへっへ。
「そっか…じゃあ普通に部員として参加するのはどうなんだい?」
「んー、うちの柔道部は確かに女子生徒も入部可能だが、今は0人なんだよなー。だからリルが練習するなら野郎どもとしなきゃなんねー」
「何か問題でもあるのかい?」
「自分勝手かもしれないが、あまり自分の彼女をなー、あいつらのことは信用してるとは言ってもな…組ませたりしたくねーんだよな…」
いくら(可愛い?)後輩や、技を高めあった同期であると言ってもな。
中にはなんとかして少しでも胸にふれようとするだろう、むっつり助平なバカも少なからずいるしな…。
「ショー、心配ありがと! そこのところは先生と掛け合って私とショーだけで組むとかできないのかい?」
「うーん…できなくはないだろうが、そうすると色々と練習に障害が出るだろうしな」
「わふん…確かにそうかもね。インターハイも近いんだろうし、私とうつつを抜かしてる時間はない…」
「いや、それはある」
「そっかっ」
リルはめちゃくちゃ嬉しそうににっこりと笑った。
可愛くて……思わずリルの頭を撫でてやる。
するとさらに嬉しそうにするんだ。
「なら今の予定としては、柔道部と同じ時間帯の部活に入るか、柔道部のマネージャーをするかだね! マネージャーって何すればいいのかな」
「………わからん」
「わふっ!? そ、そうかい」
本当に何すれば良いんだろうな。
タオル洗ったり、飲み物出したりか。あと色々書類整理したり。
……整理しなきゃいけない書類ってなんだ?
それに飲み物はみんな自販機で買ってきて自前だし…タオル洗ったりとかも自宅に持って帰って各自で洗ってるしな。うん。
マジですることなくね?
あーでも、マスコットとか看板娘的な……ううん、よく考えたら彼氏がいる時点でそれはあまり効力が薄れるってもんだ。その彼氏は俺なんだけどよ。へっへっへ。
「ま、まあとにかく何かやってみるよ! 私は青春を謳歌したいんだ!」
「そっか」
思ったが確かに部活は青春を謳歌できるよな。
もしやこのままリルがマネージャーとして柔道部に入ってくれれば、夏合宿の時にリルも付いてきてくれるのか?
やはり…リルはマネージャーにすべきか…。
ああ、そうだ、青春を謳歌するといえば、もう一つあるじゃないか。
「リル、青春を楽しむってんで思い出したんだが、地球でのデートはいつにする?」
「デート…デート!」
目を輝かせ出したリル。
そんなにデートが嬉しいのか。
俺も女の子と地球でデートなんてしたことねーから内心、ワクワクしてるんだけどな。
アナズムでリルとデートを何度もしてるが、やはり、地球とは違うと思うんだ。
「そうだなぁ、そうだなぁ…普通に考えて日曜日だよ! そして場所はショーと一緒ならどこでも良いさ! 家の近くを散歩するだけでも楽しい!」
尻尾を振り、耳をピンと立てながらそう言うリル。
可愛い……ん、なんか俺今日、美花に対する有夢みたいな反応をリルにしてないか? ……流石にないか。
「ま、それもなんか考えとくぜ」
「わふーー! 嬉しいっ!」
リルはまた、俺に抱きついてくる。
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