第483話 両親とリル (翔)
「……ん、だいたいわかった」
親父と母さんはリルから色々なことを聞き出したり、自分たちの職業を話したり、この家で暮らして行く上でのルールを提示したりした。
正直、リルのこっちの世界での俺が知らない面も結構あったぜ。
「それじゃあ…次に、どうして日本に来ようと思ったかを聞かせてくれる?」
「は…ええと…」
「敬語が苦手なら無理して使わなくていいのよ。親に敬語を使う子なんて珍しいでしょ?」
「は、はい…あ、うん!」
すでにリルからリルが敬語が苦手であることを聞き出してる二人は早速そう言った。
うーんやはりリルがウチに来るための審査を軽くパスしただけはあるな。親父と母さんやっぱりすげーよ。
「わ、私が日本に来ようと思った理由は…も、もともと日本に興味があって日本語とか文化とかたくさん勉強してたんで…してたんだけど、日本に初めて自分で貯めたお金で旅行にきた時に…そのショーにた、助けられまして…」
無論、親父も母さんも俺も、リルを地球で過去に助けた覚えなんてない。
これはリルがこの世界に来るに当たって捏造された事実というやつだろう。
「え、えっと、それで2回目来た時も。ショーにた、助けられて…それで…す、好きになっちゃって…」
「それでうちの息子を追いかけて来たと」
親父のそのまとめに、リルはコクリと頷いた。
「まさか本当にショーの側に来れるとは思わなかったけれど…」
「うむ。なるほどそれが理由ということになってるのだな」
「えっ…ああーえっと…」
「もう翔から大体のことは聞いてる。別の世界から来たんだって」
親父がしみじみとそう言った。
ちなみにリルには俺がすでに、両親がリルがアナズムの人間であるということを知っていると伝えてある。
「そ、そうなんだ。その通り」
「で、どうやって二人は知り合ったんだっけ?」
ここで母さんがでしゃばって来た。
俺の恋愛してる人間をついついからかってしまう癖は絶対に母さん譲りなんだよな。
「えっと…それは」
リルは俺の顔をちらりと見て来る。
俺も目を合わせてやった。
「前にも話したと思うが、今度は俺とリルからもう一回話すよ」
_______
____
_
「……なぁーるほどねぇ」
母さんがめちゃくちゃニヤニヤしてるぞ。
大体のことを話してからさらに酷くなってる。
「つまりリルちゃんはやっぱり翔に助けられて好きになったんだぁ」
「そ、そうだけど、助けられて好きになったから、そうじゃなかったら好きじゃなかったとか、そういうわけじゃないです…」
…改めてリルが俺を好きになった理由を話されると照れくさい。
「ふむ、で、どうだ息子は。なにかリルに迷惑をかけたりしてないか?」
「め、迷惑なんてとんでもない! それは私がかけてる方だよ!」
目を見開きながらブンブンと首を横に振るリル。
「そう? まあ何かあったらいいなさいな」
「は、はい。だ、大丈夫だとは思うけど!」
じーっと母さんが俺の方を見てくる。
いや、大丈夫だって、リルは大切にするって!
「で、やっぱり二人は付き合ってるってことでいいの?」
母さんにそう言われて、俺とリルは再び顔を見合わせた。リルは目を泳がせつつ、上目遣いでこちらを伺う。
め、めっちゃ可愛い。……じゃなくて、早く返事をしなければ。
「「つ、付き合ってます」」
俺とリルはほぼ同時にそう発した。
合わせるつもりがなかったから…すごい偶然だが、なんかこの状況だとラブラブ感をわざわざ演出したみたいになってしまってないだろうか。
「うん。でリルちゃんが翔のことをどれだけ思ってくれてるかは聞いた。が、お前はこの子を大切にできるのか?」
腕を組みながら、そう続けて聞いてくる。
親父がかなり威圧を込めてきてるな。
まるでこっちが『娘さんを僕にください』とリルの両親に向かって言っている気分だ。
正直に答えよう。
「た、大切にしてみせる」
「大切にしてみせる? みせる、じゃなくて?」
「た、大切に、ずっと…大切にする!」
ああああ。
今日二回目だ、リルがそばにいるのにこういうこと口走るのは。俺は全員の顔を見てみた。
母さんは相変わらずニヤニヤしてるし、親父は顔が怖いけど笑ってるし、リルは…うっとりした表情でこちらを見てきている。
「ならいい。行き過ぎたことをしなければ私は何も二人の間に関しては言わない。しかし、だ翔」
「は、はいっ」
親父の双眼が俺をまるで突き刺すように睨んできた。
「もし…DVや過度の性的暴行、あるいはお前が18歳を超える前に妊娠なんてさせてみろ。犯罪者として処理する」
「お………おう!」
息を詰まらせながらそう返事をすると、けわしい顔をある程度ほぐしながら親父は微笑んだ。
はーびっくりした。こえー。
「ま、さっきも言った通り私はお前ら二人が付き合うことに関しては大賛成だ」
「私も。昔からモテてる方だった翔だけど、やっと彼女ができてよかったわ」
母さんと親父はそう賛成してくれた。
ふぅ、これでこの世界でも心置き無くリルと一緒に居られるわけだ。
「リル、これからもよろしくな」
少し照れ臭いが、俺はそう言いながらリルに手を差し伸べた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます