第469話 うまい具合

「______つーわけなんだ」



 ショーはリルちゃんが地球に行っていた1時間の間に何があったのかを説明してくれた。



「なるほど、良かったじゃん! これで心配事はなくなったわね、もちろんリルちゃんが。ホームステイしにくる女の子がリルちゃん自身ならもう言うことないじゃない」

「おう!」

「これでいつでもリルちゃんとイチャイチャできるよ!」



 ミカがめっちゃおちょくってる。

 すごくおちょくってる。



「お、おう。いや、親父や母さんいるしどうだかな…」

「大丈夫よ。なんとかなるわ」



 それってアドバイスになっていないような…。

 ショーは恥ずかしそうに頬をかくと、話を続けてきた。



「ま、そう言うことだから1ヶ月かそこら以内には転校生としてリルが来ると思うぜ」

「わかったよ。転校生かぁ…うちの学年では初めてだね」

「そうね。まあ転入試験半端じゃないくらい難しいらしいし、仕方ないんじゃない?」



 うーん、俺たちの学校、はたから見たらすごくあたまいいらしいからなぁ。全員が。

 他の高校と比べたことないからわかんないけどさ。



「それにしても、本来来るはずだったその外国の子はどうしたんですかね?」



 そう、カナタが言ってきた。



「わかんねぇ。もしかしたらリルの犠牲になっちゃったかもしんねー。それだったら…心底悪いが…俺はなんとなく、これは前から仕組まれてたような気がするんだ。神様がリルが地球に来るのをわかってて用意した…みたいなよ」



 なんだか俺もそんな気がする。

 他のみんなもそう思ったのか、それ以上については話そうとはしなかった。



「じゃあリルさんの居場所もわかったことだし、次に帰る日と戻ってくる日を決めようか」



 カナタがそう言う。

 帰る日と戻って来る日は、今回はそうだなぁ。

 なんだか、しばらくショーに会えないリルちゃんが可哀想な気がするし______



「行くのは…予定より少しズレて、リルちゃんが起きてしばらくしたらにしよう。で戻って来るのは地球での1日後」

「そうだね、そうしようか」



 そう言うわけで今回の帰宅の日程が決まった。

 とりあえず1日ってことで。前の通りに。



「とりあえずリルちゃんのお昼寝の時間は…2~3時間くらいだとして、その間はボク達どうする?」



 2時間以上もまつのは暇だからね。

 でもそれに対する案はミカから直ぐに出されて。



「そんなの…えへへ、こうやって過ごせばいいとおもう」



 ミカは俺の腕に抱きつきながら頬ずりしてきた。

 ああ、うん…そういうことか。



「そ、それじゃあ各々で過ごすってことでいいね」

「そうだな。じゃあ俺も部屋に戻るわ」



 カナタとサクラちゃん、ショーが部屋へ戻って行った。

 


「じゃあ俺達も休もっか」

「そうだねぇ…やすもっかー」



 俺とミカも愛の巣…もとい二人の部屋へと戻ったんだ。



______

_____

___



「わふん、ごめんなさいみんな。寝ちゃったから時間とっちゃって」

「ううん、いいよ」



 こっちの世界でのお昼時前に、リルちゃんは起きてきてそう謝ってきた。

 この2時間半の間、俺とミカは地球では人目があってできないことをしてきたよ。まぁ昼間っからなんだけど…。


 カナタとサクラちゃんはボードゲームとかして遊んだみたい。

 ショーはリルちゃんが寝てるところに潜り込むとかそういうことはせず(普段は添い寝してるくせに)、筋トレしてたんだって。



「じゃあ、地球に行こっか」

「あ、ちょっと待って!」



 地蔵の頭に手を置こうとした俺を、リルちゃんが止める。



「わふん、みんなに私の連絡先を教えるよ」



 そう言って、本当にそれらを教えてきてくれた。

 まさかこの世界の住人からスマホやメール、通話アプリって言葉を聞くとは思ってもなかっただけにちょっとびっくり。

 まあでもそうか、リルちゃんも高校2年生の遊びたい盛りなんだもんね。何かしらの通話機器は持ってて自然か。

 


「じゃあ戻ったらとりあえず連絡するね」

「うん」



 再度、俺はお地蔵様の頭に手を置いて地球に戻ることを選択。直ぐに数時間前にアナズムに行った直前の状態へと戻ってきた。

 さっそく、目の前には制服を着た美花が居る。

 窓越しだけどね。



「よしじゃあさっそくリルちゃんに連絡してみるかな」

「そうね」



 俺と美花はスマホを手に取り、リルちゃんの通話アプリのIDを入力。ノルウェー語…なのかな?

 普通に英語に見えるけれど、発音とかが違うのかも。

 『Lil』書かれた名前が出てきたから、選択し、お友達として登録した。

 そしたら直ぐにこの通話アプリの特徴の一つ、友達同士で部屋を作り通話できるグールプ機能、これにリルちゃんから招待されたことが連絡された。



<リルだよ。 ノルウェー人だけどニホンゴ喋れるから英語やノルウェー語で送ってこなくても大丈夫です>



 めっちゃ流暢、めっちゃ日本語流暢なんですけど。

 やっぱり頭いいと言うのは本当みたいね。



<リル、おれだ、ショーだ。>

<翔。連絡嬉しいよ、有難う!>



 翔から送られてきた。

 というか、リルちゃんが翔を漢字表記にしてて、翔が自分をショーと書くのはいかに。



<リルちゃん、アリムだよ! 本名は あゆむ だけど>

<リルちゃん、ミカだよ!>



 俺と美花も続けざまにそう送ってみる。

 あ、叶と桜ちゃんも入室したみたいだ。



<アリムちゃん、ミカちゃん! アリムちゃんはあゆむがこっちの世界での名前なんだね。でも私、あゆむって名前は男の人が多いって聞いたんだけど>



 あ、ヤバイ。

 そういえばリルちゃんの中で俺は女の子のままだった。



<え、えーっと、リルちゃんがこっちに来たら話すよ>

<? とりあえずわかったよ>



 そのあとは叶と桜ちゃんからも連絡が来た。

 俺たちと同じようにリルちゃんは対応する。

 しばらくして登校の時間になったから、リルちゃんとのメッセージのやり取りはいったんやめにし、俺と美花は外へ出た。

 

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