第446話 カルアちゃん、初めての戦闘
「これで4周目突入かな?」
アムリタでみんなを回復させて、すぐにダンジョンに入った時にティールさんがそう質問してきた。
「そうなりますね」
「そっか。みんな、カルアがSランクの魔核を引いてから一気に強化されたわけだけど…今回からはどうするべきなんだい?」
「それもちゃんと考えがありますよ」
皆んなが俺の方を注目する。
「えっと…ここから2、3回はルインさん達がレベル50になるまで、宝箱の前に居る魔物を倒すまでで1周を留めます。おそらく次はBランクの魔物なので」
誰かがゴクリと唾を飲んだ。
Bランクの魔物は強い。それは得られる経験値が物語っているね。Cランクの魔物の10倍だからね。
「リロさんがファイヤーマーチレスを1レベルでも使えるようになったら今の皆さんで攻略できますから、それは安心してください。……あとここからですが、あの宝箱の前以外はルインさん、ティールさん、オルゴさん、カルアちゃんがミュリさんから素早さと攻撃の補助魔法を受けた上で撃破してくださいね」
「……む、わかったぜ」
「あ…あの、少しよろしいですか?」
カルアちゃんがおずおずと言ってきた。
「どしたの?」
「あの…今見えてるDランクの魔物2体は私にやらせてくれませんか? 戦ってみたいんです!」
若干、目を輝かせているカルアちゃん。
そ、そんなに魔物を倒してみたいのか…?
「まあ…ミュリさんの補助魔法があれば大丈夫だけど…やってみる?」
「はい!」
「…えっと、ルインさん、ティールさん、良いですかね」
そう2人に問うとしばらく考えるように腕を組んだ後、『良いよ』と声を揃えて言ってくれた。
「だって。良かったね!」
「そういうわけですので、ミュリお姉様、お願いいたします!」
「は、はい!」
ミュリさんは攻撃と素早さ…そして防御に補助魔法をかけた。ミュリさんのはもう最上級の強化術だからね。
かなり強化されたんじゃないかな。
『ありがとうございます』と、カルアちゃんはミュリさんにお礼を言うと、剣を構えて2匹のチャイルドラゴンに対峙した。
……1匹は取り除いてあげるべきだろうか?
そんなことを考えてる間にも、チャイルドラゴンはカルアちゃんに襲いかかってきた。
でも、そのトカゲのように小さな爪がカルアちゃんに届く前に、切り裂かれ、1匹生き絶える。
「て…手口が鮮やか…」
ミカがそう呟いた。
確かにそうだ。かなり鮮やかだ。
続けざまに、流れるようにカルアちゃんはもう1匹のチャイルドラゴンの背後を取り、首に一閃。
あっという間に勝ってしまった。
……とても初めてだとは思えない。
「ふう、なんとか倒せました! 日頃から頑張ってた甲斐がありましたよ!」
血のついた剣を鞘に戻しつつ、満面の笑みを浮かべながらこちらに戻ってきたカルアちゃん。
「ほ…本当に実戦は初めてなの?」
いくら『剣の豪』を所持してると言っても……。
「はい! 人を相手するのはお城の騎士さん達と良くやるんですけど、魔物は初めてなんです!」
ああ、そういうことね。
ともすると、ヤッパリこの世界でもスキル関係なしに技術って上がるもんなんだ。
だったら例えば俺が剣神奥義を使ってたとしても、向こうも同じ剣神奥義持ちでさらに普通に剣の達人だったら、剣では勝てないわけだ。
……スキルってなんなんだろ。
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「やったー! レベル51だって!」
あれから6周した。
オルゴさんやルインさん達もCランクの魔物なら余裕で勝てるようになってきてる。
それにレベルが50以上になったから、サービスで100もステータスのポイントを貰ってることだろう。
カルアちゃんも44レベルになったしね。
ここまでは上がりやすいんだ。
成長がだんだんと遅くなっていくとは思うけれど、対してもっと成長すること間違いなし。
「ね、ね、アリムちゃん! 火術・極がレベル3になったよ!」
「おお…すごいですね!」
となると、SKPは全部火術に割り振ったのかな。
「あ、あとそれとSTPなんだけど、とりあえず報告。半分はアリムちゃんのいう通りに割り振って、残り半分ずつはMPと魔力に振ったよ」
「なるほど」
今のリロさんのMPがどのくらいかは正確にはわからないけれど…最低6発はマーチレスを撃てるようになってるはずだ。十分、十分。
「アリムちゃん、アリムちゃん、強化術・極がMAXになりました!」
「おおおおっ!」
それはすごい。これで周回も尋常じゃなく楽になるはずだ。
「それじゃあ、7周目行きますか」
11周目。休むことなく6周したから少し疲れてるみたいだけど、6人は今まで通りにそれまでの魔物を葬って行く。
とくに魔法を温存できるようになったのが大きく、Cランク亜種以外は剣だけで倒せてしまうのが良い。
それにしても……隠し部屋、ないなぁ。
もう、結構探したんだけど。
まだ空の宝箱本体はいじってないし、次の周回でやってみるかな。
「……いたぞ」
宝箱の行き止まりから引き返し、もう一方の通路を通り始めた時に、先頭を切っていたオルゴさんはそう呟いた。
……ああ、いるね、確かに。
機械でできたドラゴンみたいなものが。
……どう考えてもBランク以上だ。
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