第437話 まずは説明

「いらっしゃいませ、アリムちゃん、ミカちゃん!」



 カルアちゃんがニッコニッコしながら俺たちを迎えてくれた。今日は例の鍛錬をする予定日の前日。

 その前にまずはお泊まり会をするということで、俺とミカだけでお城に来たんだ。

 ショー達は、明日からのレベル上げの準備を御屋敷でしてる。



「へっへっへー、明日はいよいよ、約束の日だからねー。今日は打ち合わせとか沢山しようね!」

「はいっ」



 再びとびっきりの笑顔でカルアちゃんは返事をする。

 そんなに嬉しいのか…。こっちも嬉しくなってくるね!



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「それではこの鍛錬の詳しい説明をします!」



 前に俺達がこの世界の住人ではないことを説明した部屋にて、セインフォースの4人とカルアちゃん、ティールさん、そして国王様達親御さんに集まってもらってる。

 とりあえず、話を続けよう。



「えーっとまず、どんな鍛錬かをするかの前に、準備するものなんですけど…。とくにみなさんにはありません! 強いて言えば、ルインさん達には仕事するときの装備をしてもらうぐらいです。あ、あと…色々と記録する人!」



 そんな俺の説明に、みんなは首を傾げる。



「何故、記録する人が必要なのだ?」



 そう、国王様が訊いてきた。



「うんとですね、この鍛錬でするのは、言わばボク独自の秘伝というか秘術というか…。とにかく、こう、この世界には存在しない…かもしれない…方法なんです。なので、記録する人をつけて書にすれば数百年後も同じことできるかなと」



 うわーん、説明がめちゃくちゃだよぉ…。

 やっぱりカナタみたいにしっかりしてないとダメだね。



「…ふむ、して、その方法とは?」

「えへへ…まだ話すわけにはいきませんが…。気力と根性さえあれば…まあ3日から5日でSSSランカーぐらいになれますよ」

「……なにぃ!?」



 元SSSランカーである国王様が驚きの声をあげた。

 他のみんなもそんな感じ。

 にわかには信じられない。それは仕方ないよねー。そりゃあ。

 みんなが愕然としてる中、騎士団長さんが口を開いた。



「……SSSランカー最速は今の所アリムだ。なにせ、わずか7ヶ月もしないうちにSSSランカーになってしまったのだからな。確かに前々からその片鱗は見せていた…SSSランカーとなる前から今の実力を有していた場合、その話は本当となるな」



 うぉーっ、綺麗にまとめてくれた!

 ちなみに、俺が来る前の最速はギルマーズさんの2年半らしい。次にウルトさんとパラスナさんの3年。

 

 この国には俺が来る前から精鋭が集まってたみたいで、それ以降となると、次は6年なのだとか。

 一見、6年とか…3年とか…結構短く見えるけど、本来ならAランクまでに上がるのに12年以上かかるって人も多いからね。


 

「あ、じゃあその役目は僕がやるよ」



 ティールさんが手を挙げた。

 ……なるほど、ティールさんは他人のステータスが見えるとかいうすごい能力持ってるもんね。

 それらみたいな特殊能力はメフィラドとかみたいな大きな王家の血筋の人に出てくる。

 カナタ達がお世話になった…もとい、お世話にさせられた国の故・国王もこんな特殊能力を持ってたんだっけ。

 それはその人が末代となって、途絶えちゃったわけだけど。

 メフィラドと向こう…そしてもう一つの国の血筋。

 この3家がそういう特殊能力を持った子が産まれるんだとさ。



「じゃあ…お願いできますか? あ、あとそれと、ティールさんとカルアちゃんはどんな武器が使いたいですか?」

「僕は剣で」

「わ、私もです! もう剣の道レベル5までになってるので」

「えっ……!!」



 な、なんだと。

 それは知らなかった…。

 いや、確かにカルアちゃんも護身術だとして剣術を騎士団長であるゴルドさんから教わってるのは知ってたけど、そこまでになってたなんて。

 こんなにお互い話してないことがあったんだね。



「そっか…それなら剣だね。装備もこっちで用意しますよ」

「…頼む」



 あとは、前にも何回か話したんだけど、ダンジョンを主に使ってすることとかも、もう一度説明しておいた。

 


「…とりあえずそんなものか。いや、アリム。何もかもすまないな」

「えへへ、いえいえ」

「ならば、これにて作戦会議は終了だ。解散せよ」



 いつの間に作戦会議なんていう高尚なものになってたのか。

 みんな…とくに大人たちは俺に一言言ってから各々の持ち場に戻っていった。


 ルインさん達が近づいてくる。



「よろしく頼むよ」

「お願いね、アリムちゃん! ミカちゃん!」

「まさかあの時の少女に今度は教えられる側になるなんて…な」

「オルゴ、それ何回も言ってませんか?」



 18歳の少女と女性を、少年と青年の境目にいるであろうこの人たち。

 なんだか最近、関係が変わってきたんじゃないかな…?

 まさか、流星の日についに告白したとか?

 そんな風にまあ、ショーが俺とミカにする考察みたいにウザったらしいことしてると、カルアちゃんが俺の顔を覗き込んでくる。



「よろしくお願いしますね! アリムちゃん、ミカちゃん」

「うん、任せてね」

「私は…アリムに全部託してるんだけどね」



 そしてカルアちゃんは一言。



「今日も私の部屋で寝ますよね?」

「「うん」」

 


 

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