第432話 大人と子供の境目 (叶・桜)
「ど…どうしたの!?」
突然、桜があわあわと慌てだしたことに驚きつつ、叶はその原因であろうところを見た。
自分の兄が、隣にいる桜の姉を押し倒しているところを目撃。
瞬時に叶は桜の部屋のカーテンを片方閉めた。
「あわわわ…かにゃた、かにゃた…! あああああゆ兄が、あゆ兄が、お姉ちゃんのおっぱい揉みながらベッドに押し倒して……ッ!?」
そんな感じで慌てている桜の背中を、叶はさすりながら、諭すようにこう言った。
「……桜、兄ちゃん達だって人間なんだ。ましてやそういう年頃。なら、仕方ないと思わない?」
「う、うん。お姉ちゃんが向こうの世界で、一緒に寝たときに、あゆ兄ともう……あああ、ああいうこと2回もしてるって言ってたぁ。こ、これお母さんとお父さんに言っちゃダメよ? お姉ちゃんが『やめて』って…」
2回、という言葉に反応する叶。
日にち的におそらくその回数はこの間の流星の日に3回になっているだろうと、弟は勘ぐった。
そしてこれで4回目か、と、軽く溜息をつく。
「まあ…あれだ。仕方ないよ。俺達がどうこう言う問題じゃないさ」
「そそそ、そうだよねっ。…人間なんだもんねっ。ん?」
桜は自分の言葉に対し、固まった。
顔を覗かれたまま桜に固まられた叶は、脳内にハテナマークを浮かべる。
「どうしたの?」
「あ…いや、その理屈から言うと……叶も私も人間だし、そういう年頃に当てはま……わああああっ!?」
桜は顔を真っ赤にし、自分のベッドの布団に顔を埋める。
なんだこの可愛い生き物、それが叶の考えたことであった。
「ねえっ!」
ジタバタし終えたと思ったら顔を勢いよくバッとあげ、叶の方を見る桜。
「そそ、その…叶もその…私にそういうエッちいこと考えてたりする? この変態!」
「答える前に変態って言われても……」
「あっ……ごめん。でも実際のところどうなの?」
叶はうーん、と、顎に手を当て悩む。
しばらくして、答えを出した。
「まあ…そうだね。桜ったら、眠ってるときにいつも強く抱きついてくるし…」
「うっ…」
「スタイルも良いし、天使のように可愛いし」
「ああああ、あうぅ…」
「そう思わない時がない…なんて言ったら嘘になっちゃうし、同時に桜に魅力が無いってことになるからね。否定はしないよ。でも…」
叶は優しい表情で桜を見据え、一つ呼吸を挟むと、さらに話を続け始めた。
「桜はそういうこと嫌い…っていうか、苦手だもんね? 俺は桜が嫌がることなんて、行動に移したりしない。信じて欲しい」
桜は勢いで言った質問にかなり真剣に答えた叶に、のんだか申し訳なくなってきた。
少しモジモジしてから返答をする。
「うぅ…うん。わかった。わ、私…その、大人になるまでにはほ、本当に好きな叶となら大丈夫なように、度胸…つけたりするから、それまで待ってね。お、お姉ちゃんからも、高校生になるまでエッチするなって言われてるし」
顔を赤らめいる桜に対し、叶は微笑すると、そっと抱きしめる。桜は急に抱かれたことに驚きつつも、反抗したりしようとはしない。
「まあ、好きな時でいいよ。俺らまだ中学生なんだし」
「そ、そうねっ」
抱きしめることをやめ、頭を撫でてから叶は桜を見つめる。
「ところで…あの二人、どうなったんだろ?」
「ふぇ…あああ、おおおお大人の階段ががががが」
「ちょっと…ちょっとだけ確認してみる」
叶はこの部屋の半分閉めていたカーテンを開いた。
そこから有夢の部屋を見る。
二人は頭を撫であったりしながら、仲睦まじく談笑をしているようだった。
「…なんだ、あの後何もなかったみたい」
「ほ、ほんとだ。こんな時間からするんだって、私、びっくりしちゃった」
叶はカーテンを開けっぱなしにし、桜の隣に戻る。
そして手を握った。
「ねー。もしこの世界での明日、学校行くならさ、手を繋いで行かない? いつも俺が桜をエスコートしてたみたいにじゃなく、恋人つなぎで」
「えっ…!!」
叶は桜と外に出る時、必ずエスコートなりをしていた。
その姿は学校内でもあまりにも有名であり、それを見ている事情の知っている者は、『叶が紳士みたい』であるという気持ちを必ず抱く。
「そ、そんな…恥ずかしいよっ…」
「そう? でも桜、俺、こう見えてもモテるんだ。少なくとも同じクラスに俺のことが好きな人は7人以上居る」
これは傲慢や思い過ごしなどではなく、事実であった。
耳の良い(地獄耳な)叶は、クラスの人々から自分と桜がどう思われてるかを常に聞いていたのだった。
「た、確かにチョコレートも多かったもんね。でもそれと、私と叶がラブラブ…なとこ見せつけるのになんの関係が…」
「まずは俺に女の子を寄せ付けなくし、同時に諦めさせるためかな。次に、桜に他の男が寄らないようにするため。あの『瓶底眼鏡ガリ勉委員長』は、どうしようもないくらいに可愛いってことを見せびらかしつつ、絶対に渡さないっていう意志を表明するんだ」
そう言いながら叶は桜の頭を撫でる。
桜は、トマトのように真っ赤に顔を赤くしていたが、叶に少し抱きつき気味に身体を預け、微笑んでいた。
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