第428話 俺の部屋で美花と

 お母さんとお父さんは、異世界転生被害者の会(仮)が終わり、お昼ご飯を食べると、二人して『今日ぐらいは休みたい』と言いながら仕事に行った。

 どうにも、この日は休めないくらい大事な仕事が入ってるらしいんだ。二人とも。


 この世界でもスキルが一部使えるみたいだから、夕飯は俺が作ると言っておいた。スキルによりをかけてつくるからね、楽しみにしててほしいね。


 美花の家も、両親が仕事に行ってしまっまたんだろう。

 ここから見える隣家を覗くと、美花が自分の部屋で一人で何かやっていた。


 さて……俺はなにをしようか?

 ゲーム……?

 いや、ゲームはこの日発売のドラグナーストリー4をやる予定だったから、前作は復習がてらやり込んでいる。

 半年近くゲームに本格的には触ってなくても、『今はしなくていいや』なんて思えるぐらいにはやり込んだからね。

 現時点ではやりたいゲームがない。

 ……お父さんに『帰りにゲームの予約引き取ってきて』って引換券渡したのは美花には内緒。


 ふぅん…あとはどうするかなぁ。

 パソコンの222chっていうサイトのゲーム板にでも…ううん、そんな気分じゃないしなぁ。

 

 

「やっほーっ」



 秋になったばかりなのがわかる、ちょっと肌寒い風が部屋の中に入り込んできた。

 可愛い侵入者はガラガラと、自分の部屋と俺の部屋の窓を閉める。



「来たんだ」

「えへ、来ちゃった」



 制服から、首回りに軽くフリルがついたクリーム色の服と、ジーンズに着替えてるね。

 


「着替えたんだね」

「有夢もね」



 そういう俺も、動きやすいジーンズ(脚が細いため女性用)に、ちょっと長めの黒白の縦縞模様が入ってる服を着ている。



「うーん。アリムじゃ…ないよね? やっぱり女のコみたいだなー。というか、なんでそれ着てるの? どう頑張っても男には見えないよ」

「いいじゃない、別に。美花と一緒に選んだ服なんだから」

「えへへへ」



 照れたようにはにかみながら、美花は俺のベットに腰をかける。俺もその隣に。



「なんか…懐かしいね」

「ね。1年も経ってないけどね、地球離れてから」

「確かに。それにしても…」



 美花は俺の顔をジロジロと見てくる。



「やっぱりあれね。髪の毛が赤くて目が黄色くて見た目の歳が違うだけで、あとはほとんどいっしょなんだね。嫉妬したくなるくらい可愛いよ」

「そういう美花も俺への嫉妬なんかいらないくらい可愛いでしょ。それに、よく見れば向こうとこっちとあまり変わってないのも一緒。でも___」



 俺は美花の髪の毛を一房さらう。

 美花は全く嫌がることなく、それを受け入れた。



「あのマスカットみたいな黄緑色も良かったけど、やっぱり黒髪はいいね」

「えへへー、そうかなぁ。綺麗?」

「綺麗だよ、ぜんぶが」



 歯が浮きそうなセリフもスラスラと出てくる。

 美花と最後にこの部屋でこうして話し合った時とは、全く違う内容。

 綺麗だの可愛いだの、こんな簡単には出てこなかったもん。



「ありがと、でもね、見た目以外にも変わったところがあるんだよ?」

「え、ど」



 どこ、そういう前に美花は、髪を弄っていた俺の手を素早く掴むと、自分の胸へと移動させた。

 手のひらに、アリムには無い大きくて柔らかい感触が…。



「えへへ、向こうとこっちじゃ2カップ違うんだよ? あ、アリムとは3カップ違うわね。ね、どう?」



 ……さて、どうしようか。

 正直、恥ずかしいし手を離したい。

 しかし、何故だかそれも惜しい気がするんだ。


 俺が選べるのはたったの2択。

 このまま揉むか、手を離すか。

 ……いや、もう一択あるぞ。


 俺はその手を、美花の方に、美花を押し倒すように思いっきり押す。

 手に柔らかい感触がより強くやってきたけれど、それは気にせず。

 姿勢を崩してベッドへ倒れる唇へ、そのまま唇を持っていった。

 合わさる。



「ん…」



 キスをした。

 この先どうしよう。

 と、とりあえず胸から手を離そう。

 ……離そうとしたけれど、美花ってば思いっきり俺の手を抑えつけてるみたいで、前後左右に這い出るように手を動かさないと無理っぽい。

 でもそうすれば相手の思うがままだ。

 やっぱりどうしよう。


 まあ、唇を合わせてるだけってのもなんだし。

 …俺は口を少しだけ開き、美花の唇に入れようとしてみる。美花はすんなりとそれを受け入れた。

 


「んん…」



 ディープキスは10秒続く。

 しばらくして、俺は美花から口を離した。

 美花はそれはすんなりと離してくれ、また、それと同時に抑えつけていた手もどけてけれる。

 俺が身体を起こすのと同時に、美花も身体を起こした。



「えへへへ。有夢う…どうするの? お父さんもお母さんも、おばさんもおじさんもいないよ?」



 なるほど。

 そういう結論に至っても仕方ない。

 しかしだな。



「いや…色々準備がないから今はダメだよ」

「そっかぁ、たしかに。なら仕方がない」



 納得してくれたみたいで良かった。

 キスをした理由も特に大した理由じゃないから、訊かれたら困ってたとこだし、それが訊かれなかったのも都合がいい。



「えへへ、でもこのくらいいいよね?」

「……まあね」



 美花はぎゅっと俺に抱きついた。

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