第406話 大浴場 ≪side 有夢≫
「…なんでお前が居るんだよ」
「忙しいんじゃなかったの?」
作り終えた新しい男専用の大浴場の脱衣所で、身長とか見た目を元の姿のように変えるミサンガを装備して俺は服を脱いでいた。
「んー、本当だったら俺も向こうに入るんだけど…。あれはこっちに入るための口実なんだよ。今の俺はれっきとした男だから遠慮なんてしなくていいゼ?」
「はあ…まあいいか」
カナタとショーも普通に脱ぐ。
うーむ…ショーめ、相変わらずものすごい筋肉だ。
俺が女装趣味じゃなかったら、その筋肉美に憧れていたかもしれない。
ともかく俺達野郎3人は浴場に入る。
「でかいな」
「だろ。あーあー、修学旅行で泊まった旅館の浴場もこんぐらい広かったんだろーなー! 俺なんて個室だったからなー」
「仕方ないだろ…。一番最初の体育の時、お前の着替えを見て鼻血出した奴が何人居たと思ってるんだ。いいか、俺以外のやつほとんどだぞ? ちなみに旅館はこんなに広くなかったぞ」
そう、そんなことがあったんだ。
それに同じクラスのバカが、俺のことをAAカップの女の子だとかいいやがるし…。
それから俺は体育とか着替えなきゃいけない時は、一人でトイレで着替えさせられたんだ!
女装が趣味だった俺としては特に不満はないんだけどね。
ともかく俺達は身体をさっさと一言も喋らずに洗ってから風呂に入る。
「ああ~、いい湯だな」
「うん、当たり前だよ? 伝説級の風呂だよ」
「能力を使いまくってるね」
……気持ちいいけど、何か会話ないかなー。
せっかくこのメンバーでおふろ入ってるのに……あれ、何気初めてじゃないかな?
結構行ってる旅行先の旅館とか銭湯とか行った先々でスタッフに入浴を止められたからな、俺は。
混浴のところぐらいしか入れなかったけど、あそこは男の人の視線が痛かったです。
それにしても会話…うーん。
「なあ、俺、ここでアリムに戻っていい?」
「やめろ。リルを裏切った気分になる」
「同じく」
ということは俺もアリムの時はちゃんと女の子だとこの二人にも認識されてるのか…ふふ。
「…それにしてもお前、女装癖が半端じゃないのは知ってたが…まさかこっちの世界で性別を変えてるとか考えても無かったぞ。それになんだよ、なんでこっちでアイドル活動してんだよ…。散々スカウト断ってただろ?」
「ふふん、こっちは自主的になったの! 向こうはスカウトでしょ? ミカと一緒に歩いてようが一人の時だほうがなんであんなにスカウトマンが寄ってきたのかなー。しつこかったなー」
ミカと人通りが多いところを歩いてると、スカウトされる確率は100%に近かった。
俺一人でもしょっちゅうスカウトされた。
なんだったんだろうなー。
ホットパンツ履いてたのが悪かったのかな?
「つーかこうしてると…アレだな、去年の祭りの時思い出すわ」
「え、なんでこの状況でお祭り思い出すの?」
そう…あの時は俺と叶と翔と美花と桜ちゃんでお祭りに行ったんだ。浴衣の美花は可愛かった。
俺も浴衣だったけどな。
ミカ…じゃなくて母さんに着せられたんだ。
『せっかくあるんだから』って。
「いやー、通りすがりのチャラそうな人とか、大学生とかに『うわ…なんだこいつハーレムかよ』と何回言われたことか…」
「ちょっと待って翔さん、それ俺も? 俺も女扱いされてるの!?」
「当たり前でしょ? カナタはこの俺の弟なんだよ?」
「ええー………」
実際、カナタが男にギリ見えてるのは髪の毛の問題だ。
俺ら兄弟は髪の毛がすぐ伸びるからとにかく男にしては長くて、俺はそのままある程度まで伸ばしてたからショートカットに見えてた。
一方、カナタは髪の毛を長くても男に見えるように切ってたからね。
ちょっとした乱れで女の子に見えることなんてしょっちゅうだったよ。
「ははは! いやー、それにしても有夢お前、こっちにきてからもなんかいかがわしいことされたりしてないか? 大丈夫か?」
「ん、2回くらいされたけど周りの人が撃退してくれたりしたから大丈夫! ミカは無被害だよ。いやー、地球じゃお前に助けてもらったことがミカ共々、何回あったか…」
「今更、礼には及ばねーよ」
ミカ、そして俺は本当に可愛かったらしいから、電車通学中に…だとか、不良に絡まれたりだとかそういうこともしばしばあったんだけど、だいたい、翔がなんとかしてくれてた。
そんなわけで、翔はあの地域で喧嘩の強さとその筋肉隆々な見た目から『守護者(ガーディアン)』という異名がつけられていたらしい。
そのことは翔は知らないけど。
……と、そろそろ風呂を移動しようかな?
「そろそろお風呂を移ろうよ! 露天風呂もどきもあるんだぜ?」
「お、まじかよ」
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