第404話 大浴場 ≪side ミカ≫ -2-
「わふ…ミカちゃんはショーと私がどうやって会ったか聞いた?」
「うん。翔から聞いたよ」
リルちゃんと翔が会ったのは本当に偶然だったらしい。
リルちゃんも乗っていた奴隷を積む馬車がゴブリンに襲われてて、それを助けたらその馬車の利用主からリルちゃんを受け取った…んだっけ?
そのくらいしか聞いてないかな。
「わふ。ショーはね、私の命を何回も救ってくれたんだ。私、ご飯を食べると吐いちゃう病気だったし奴隷なる前から色々あって傷だらけだったしで、奴隷商からは不良品だって言われてた」
「…………そうなの」
裏社会の奴隷制まで完全撤廃されたこの国と180度違う、エグドラシル神樹国の奴隷制。それをさらに改悪したおかしな令が『奴隷不良品の規定』と『奴隷不良品の処分法』というのは私も聞いたことがある。
とても…恐ろしく酷い内容なの。
そう…リルちゃんはそうだったんだ。
翔はそこまでは話さなかったわね。
「でも奴隷商の人が私をショーに押し付けて…て……今思ったら、私をショーのところに避難させてくれたのかもしれないね。それでショーは私の病気を治してくれて…わふ、これが命を救ってもらった1回目かな!」
リルちゃんはやたらと嬉しそうに言った。
翔は昔から…親が警察の警視長さんだからか、ものすごく正義感が強かったから…人を助けるようなことは必ずする。ほっておくなんて選択肢は翔には無かったはずね。
「2回目は、ショーのお手伝いをするために、わがままを言って一緒に冒険者になった後。依頼を受けてる最中にハプニングが起こってさ、崖の上から落ちちゃって…ショーも一緒に落ちたんだけど…ショーは魔法の応用効かせて私を助けてくれた。これが2回目」
崖から落ちてそんなとっさの判断ができるのはすごいと思うわ。
翔ってそんなに頭の回転速かったっけ?
それとも本能的な…?
うーん…学力だけなら私の方が少し上だったけど…。
まあ、そんなことはこの世界ではどうでもいいね。
「わふわふ、そして落ちた先で見つけたダンジョンに潜って手に入れたポーションを私に飲ませてくれて…傷だらけだった身体を治してくれたんだ! わふぅー、千切れてた耳とか尻尾とかも治ったんだよ。嬉しかったよ、やっぱり。私、ショーと会ってまだ2ヶ月経つか怪しいくらいだけど……この間にたっくさんのことをしてもらったんだ!」
千切れてたの?
耳や尻尾が?
それって…私が想像してたより…酷い。
でも、奴隷を調教するてきな人達が、言い方は悪いかもしれないけれど、商品であるこの子にそんなことするはずないとは思うから…となるとその前が相当酷かったのかしら。
リルちゃんは自分の身体の所々を手でなぞりながら、ここに傷があったんだよと2~3箇所教えてくれた。
本当だったらもっとあったんでしょう。
「そうなの。じゃあもう好きで堪らないんじゃない?」
「わ…わふ! うん。正直、私、ショーがどういう形であれここに残れるって聞いて、今日は天にも昇れそうな気持ちなんだ! 私…一生かけてショーに恩返ししたいから」
リルちゃんのその声は、もう決意に固まってるというかなんというか…。
うーん、確かにあの翔の正義感っぷりを、こんな従順な一人の女の子に注ぎ込めばこうなるか。
「なるほど…好きな理由はわかった。……で、好きなところは?」
「わふ、好きなところ…全部」
「それはなし」
「わふっ! ならカッコいいところと…優しいところと…強いところと…そ、それと筋肉!」
き…筋肉…?
確かにあれは筋肉ダルマだし、こう…力こぶを見せつけようとしなくても隆起してるし…背筋なんて、ちょっとぴっちりした服を着ればものすごい盛り上がってるし…でも細マッチョってのは確かに…。
「筋肉か…私たちにはわからないね?」
「うん。そういうのが好きな人も居るのは知ってるけど」
「わふ? わからないかい? うーん…昔、狼族は狩りを主にしていた種族だから…ショーみたいな見た目だけでも強そうな人は、狼族や獅子族、虎族や豹族の子から今でもモテるんだよ」
なるほど、戦闘民族だから故の筋肉好きね。
なら納得だわ。
あとリルちゃんから訊くことと言えば____
「なるほど。リルちゃんがあいつのどこを大好きなのはわかったわ。……それで? 2ヶ月でどこまで進んだのかな?」
「どういうこと?」
「こう、手を繋いだだけ…とか、キスした…とか」
「わふっ!」
そう、私はこの子のこれに一番興味があるの。
どうせ桜は、手を繋ぐぐらい…良くてキスだろうし、一緒にお風呂に入ったりなんてしてないと思うのだけど、この子はどうなんだろ。
「あ…あの…それなら、私ね。ショーと________」
「んえっ!?」
桜は驚いて変な声を出した。
この子は私よりそういうの慣れてないから、仕方ないのよ。
それにしても2ヶ月ちょいでねぇ……。
思ったより翔って男の子してたのね?
ははは~、あのおじさんにそのことが知れたらどうなるかなー。
「早いわね…」
「え…ええ…ええっ…!」
「わふぅ…。えへへへ」
「それなら、そうね。せっかくだしリルちゃんに翔のタイプの子を教えてあげるね。地球に居た頃に、翔の部屋に忍び込んだアリムから聞いた話なんだけど」
「わふ……どんな子がすきなの?」
私に向かって身を乗り出してくるリルちゃん。
興味津々なのはわかるわ。
ちなみに有夢はああ見えて面食いなのよね。
「巨乳好きらしいわ」
「わふ? 巨乳好き…胸が大きな子が良いの? ショーは」
「らしいわ。そう、ちょうどリルちゃんみたいな胸が大きくて可愛い子かしら。そんな感じの」
「わ…わふぅ!!」
リルちゃんは喜びのあまり、その尻尾をお風呂の中でバシャバシャとせわしなく動かしている。
「さて、次は桜、どうぞ」
「えっ、私?」
「うん。私はもう、あんたが叶君を好きな理由を知ってるから、リルちゃんにわかるように説明してあげて」
「わふー、知りたい!」
「えっ…えー…まあ…いいよ?」
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