閑話 ハロウィン

スルトルとの戦闘の最中ですが、ハロウィンなのでこちらをどうぞ。この話は時間軸を一切守ってません(*´ー`*)


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 目が覚めた。

 俺はふと、日にちを知らせる機能が付いている時計を見る。

 今日は10月31日。

 ハロウィンだ。


 …ハロウィンだからってどうってことはないよね。

 この世界には10月31日に仮装するなんて風習はないから、今日が普通の日でないってことは、地球から来た人ぐらいにしかわかんない。

 だから、今日は普通に過ごそう、なんて考える。



「ハッピーハロウィン! お菓子くれなきゃ、いたずらさせるよ!」



 ああ、ミカがハロウィンに乗っかったか。

 その可愛い声がした方を向こうと思ったけど、ふと、思いとどまる。


 『いたずらさせる』…その、不可解な一言のせいで。

 

 俺は起きた時の体制のまま、ミカにそのことを問いただす事にした。



「いたずらされるって…なぁに?」

「むぅ…! 仮装したからこっち向いて欲しいんだけど」

「あ、ああごめん」



 仕方なくそっちを向いた。

 ミカはハロウィンだけあって、やっぱりヘンテコな格好をしていた。

 黒いとんがり帽子に黒いワンピース、片手で竹箒を掴んでる。

 魔女か。せっかくだし、もうちょっとセクシーな格好してくれても良かったのに。



「ヘッヘッヘ、魔女だよー」

「見たらわかるよ。魔女だね」

「うん! ほら、今日、ハロウィンじゃない? ちょっと気分だけでもと思って。でね、本題。……お菓子くれなきゃ、いたずらさせるよ?」



 そう言ってミカは上目遣いをしながら、片手を差し出してきた。無論、可愛いことは言うまでもない。

 でも、やっぱり、『いたずらさせる』というフレーズがそれを吹っ飛ばすくらい印象的なの。



「いたずらさせるって…なぁに? って、さっきも訊いたんだけど…」



 そう言うと、ミカは目を丸くして驚いた顔をした。



「ごめん! 多分それ聞いてなかったの」



 なんだ、聞いてなかったのか。

 なら仕方ない。

 ミカは話を続ける。



「えっとね、『いたずらさせるよ』っていうのは、その言葉の通り、有夢が私にお菓子をくれなかったら、有夢は私にいたずらしなきゃいけないってこと…!」

「ええ…?」



 ミカにお菓子をあげなかったら、俺がミカにいたずらするのか。モジモジしがら言ってるし、きっと、普通の意味のいたずらじゃないんだろうなぁ。

 というわけで、俺はお菓子をあげる事にした。

 朝っぱらから過多にスキンシップするのは避けなきゃ。



「じゃあ、はい、これ」

「あっ、キャンディーだ。ありがと」



 舐めてもなくならず、舐められて特定の回数を超えるごとに味が変わる棒突きキャンディーを渡した。



「うんうん。いたずらされなかったのは残念だけど、仕方ない。有夢、朝ごはん食べたら有夢も仮装しよ?」

「ああ、いいよ」

「えへへー、もう、有夢に着せたい衣装は用意してるのよ」



 そのミカの一言に嫌な予感をしつつ、俺らは朝ごはんを食べた。かぼちゃのパイ一切れを作り出して、手っ取り早く済ませたんだ。


 ところで、ミカが用意した仮装ってなんだろう?

 いつかは忘れたけど、地球に居た頃、俺はミカに、ある女児向け子供アニメの主人公の変身衣装を着せられた事がある。

 あの時はミカや翔に、写メをめちゃくちゃ撮られたっけ。

 基本、女装は嫌いじゃないけど、さすがにあれは恥ずかしかったなぁ…。



「ハイこれ、来てね!」

「ええ…」



 昔を懐かしんでる俺にミカが差し出してきたのは、メイド服とネコミミ。そしてニーズソックスと小さな鎖付きのチョーカー。

 ……もしかしたら、ミカにダークマタークリエイトをあげたのは良いことじゃなかったかもしれないと、ほんの少しだけ反省する。



「これ着るの?」

「だめかな? 有夢が着てくれたら、そのあと、私も同じ格好するよ?」

「わかった着る。 ……一応訊いておくけど、俺の性別は…?」

「そのままで」

「わかった」



 どうしてこうなってしまったのか。

 当たり前のようにミカに女装させられることが慣れてしまったのがいけないのかもしれないけど、『同じ格好をする』のはズルい。

 断る理由がなくなっちゃうじゃないか。

 …是非とも見たい。



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「はぁ…っ! やっぱり似合ねぇ…」

「そ、そうかにゃ? …ふふ、そうだよね…にゃ!」


 

 ミカは俺を見てうっとりした顔をしながら、トズマホでメチャクチャ写真を撮ってくる。

 かくゆう俺も、メイド服にネコミミにチョーカーとニーソの組み合わせは初めてだから、ちょっと新鮮かな。

 やっぱり俺は可愛い…なんてね。



「ああ、撮った撮った! 有夢、脱ぎたかったら脱いで良いよ! その代わり他のに仮装してね? …私は今のに着替えるから」



 ミカは満足そうな顔でトズマホをしまうと、部屋の隅に移動して着替え始める。

 …うむ、俺は自主的に何に仮装しようかな?

 正直、このままでもいいかな…。

 そうでなければ、チャイナ服でも着る?

 フワッフワのドレスでもいいね。


 ………このままでいいかな、やっぱり。



「に、にゃーん、着替えましたにゃ…!」

 


 恥ずかしいなら自分から着るって言わなきゃ良いのに、ミカは恥ずかしがりながら猫耳メイド服+aの格好で俺の前に立った。

 可愛い…ああ、なんて可愛いんだろう。

 世間の男共に見せたら、鼻血を吹いて、その後に出血多量で卒倒しそうなくらい可愛い!


 俺はなんとなく慣れてるから大丈夫だけど、やっぱりこれには惹かれる。

 

 しばらくその姿に見惚れてると、しびれを切らしたミカは話をし始めた。



「にゃ、御主人様は仮装、どうするんですかにゃ?」

「にゃ、俺…いや、ボクもこのままでいようかと思うにゃ!」

「にゃ! それは良いことですにゃ!」



 ついつい、語尾に、にゃ、をつけてしまう。

 ネコミミメイド服だから仕方ない。



「にゃ、これからどうするんだにゃ?」

「にゃー…仮装を楽しもうかと思ったんだけど、これが自己ベストなのよね…。だから、ゆっくりお菓子づくりでもして楽しむにゃ」

「にゃー、そうするにゃー!」



 俺とミカはお菓子作りをし始めた。

 数日間はオヤツに困らないくらい作ってしまった。

 なお、ネコミミメイド服は俺達のトラウマになった……わけでなく、その後も普通に過ごせたんだ。



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ハッピーハロウィンです!

後半、なんてアホっぽい会話なんだ…。


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