第350話 動揺 (叶・桜・翔)
「なっ…ななな、なにを言いだすのだカナタよ! ぼ…ぼぼ、僕達が魔神を利用しようとし、ししし、してるだと? そ…そそ、そんなわけないじゃないかっ…! そもそもあの魔神どぞ? どうやって利用するというのだ、なぁ、デイスよッ」
カナタの言葉にローキスはひどく動揺をする。
ローキスは想定外の事があると感情が昂ぶる癖があった。カナタはそれを把握している。
カナタの中の疑いに近い予想は、確実なものへと変わった。
話をふられたデイスはため息まじりに、ローキスに加担する。
「そうじゃぞカナタ。当てつけはやめんか」
「……はい、そうですね。申し訳ございません」
そう言われたカナタはニヤニヤしながらおとなしく引き下がる。
____そうすればローキスは助かったのだが、色々と予測を立てたカナタはもともと信用してなかったローキスをついに敵だと認識し、追い詰めようとし始める。
「しかし…」
「な、なんだ、まだあるのか!?」
「はい。そのグングニルの中に魔神は居るんですよね?」
「ああ、居るぞ…ぞ」
カナタのその確認に、ローキスは次は何を言われるのだろうとビクビクし始める。
「ええ、なら俺にそれを預けてくれませんか? 実は一度もあなた方には教えなかったですが、スキルの力によって物体を別の場所に飛ばす事ができるんですよ。ちょっとそれを海の底の限界まで沈めるか、天高く空…宇宙に放り出すかしてくるので」
そう言いながら、カナタは二人に向かって手を差し出した。ローキスは呆然としつつも、反論しようとする。
「い…いや、それは頂けない…なあ、デイスよ」
「ええ。そもそも海底とウチュウとやらに槍を送ってどうするつもりなのじゃ? 魔神が復活することには変わりない」
カナタはそれに対して返答をしていく。
「魔神…は、一応は生き物なのですよね? 魔物など同じような」
「そ…そうだな?」
「ならば海の底に送れば圧がかかり、生きて行けません。防御魔法で防げる程度のものではありませんし。また、宇宙に俺のMPが続く限り遠くに送れば、魔神はこの世界に戻ってくることはないでしょう。そうなっているんです。どっちにしろ魔神を無力化できるのです。………グングニルを渡してください」
そう言いながら、カナタはローキスにむかって手を差し出しながら、一歩詰め寄った。
周囲の者は、デイス以外誰も動こうとはしない。
ローキスは苦し紛れに、一言一言、途切れ途切れに反論をまたしてゆく。
「そ…それは、お前らの生きていた、場所の、知識だろうが…この世界はまた違う…」
「いえ、この世界もそういうところは同じみたいなんです。重力という概念はありますし、宇宙は星があることでその存在が証明できます。そういう場所がこの世界にもあるのですよ?」
また一歩、カナタはローキスに近寄る。
ローキスは返答ができないでいた。ならば、と、デイスが口を開く。
「すまんがの、カナタや。わしにはそうすると酷いことになるという未来が見えておる」
「……だいたい、あなたは預言者と言う割には当たる確率が低いじゃないですか。あてになりませんよ。特に、翔さんの事を予測できなかったのは大きいです。そもそも」
カナタもとりあえずは緊張しているのか、一度、深呼吸をしてから話を続ける。
「そもそも、俺がこうして貴女方にこんな提案することを前もって予測できていなかったのに、俺の話の提案の結果が何故、今わかるのですか? さらに、まだ魔神の復活から前例がほとんどないんでしょう? 前例がないならやってみなくては。無理そうだったら俺のスキルでここに引き戻して普通に封印しますから」
ニコッと、カナタは二人に笑いかける。
二人はまた、黙ってしまった。
その間に、カナタはショーにとあることをメッセージで訊き始める。
【翔さん、翔さん】
【うおっ!? ど、どうした? 何か作戦か?】
【いえ、もし、もしですよ? 翔さん、日本に帰れない状況になったらどうします?】
ショーはその問いに即答をする。
【…それは最近、常々考えていた。国王が俺らを帰還させることはできないことも考えてな。…で、だ。そうなれば俺はリルの側に居てやろうかと考えてる。金もたっぷりあるしな…! そうすれば、父ちゃんと母ちゃんに恩返しができない親不孝者になっちまうが……】
【わかりました。おそらく、相手は今からこう言います。そしたら俺は________】
カナタはショーに相談をした。
ショーはその事について、少し悩んだ後、答える。
カナタが考えていた通りに。
そしてカナタはショーとのメッセージでの通話を切った。ローキスの顔を見る。
ローキスはしばらく塞ぎ込んでいたが、次にニヤリと笑うと、顔を上げ、カナタにこう言い放つ。
________いや、言い放とうとした。
「ごちゃごちゃと提案してきたようだが……カナタよ、普通に魔神を封印しろ!! そうでなければお前らは元の世界には帰らせぬぞ!! それでも____________」
「ええ、構いませんよ?」
その言葉に、ローキスとデイス…否、その場に居るショー以外の全員が驚いた。
そんな中、カナタはサクラの手を唐突に掴み、自分の元へ引き寄せ方を抱く。
サクラが何が何だか頭の処理が追いつかない中、こう、ローキスに言い放った。
「____俺は…帰らなければ親不孝者だとは思います。ですが、最悪、桜さえ居ればいいんです。なんなら、今からでも、貴方方の手が届かない場所まで瞬間移動で移動し、魔神のことなんかほっぽりだして、そこでのんびり暮らしたっていいんですよ?」
「ふぇ…ふえええ!?」
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