第342話 翔の実力 (翔)

 2万体の兵士だと…!

 どうだろうか、やれるだろうか。

 やってみなくちゃわかんねーな。



「えーっと、もう始めて良いんですか?」



 国王にそう、たずねてみる。

 ん…? なんかその隣に居るデイスさんが槍を持ってるが…いつの間に持ってきたんだ? まあいいか。



「ああ、良いぞ」



 そう言われた。

 なら、やるか。


 俺は片手を上げる。特に特別なことはしない。

 SSランクスキルの魔法の一つ、ラスト・サンを唱えた。

 どーせ、どのSSランクスキルにも、敵を絞れる効果があるし、どれを使っても良かったんだが、とりあえずコレに。

 敵は…魔法で生み出された兵士だけ。

 他には一切危害は加えない。


 そんな条件で俺のラスト・サンは放たれる。

 山の陰などで少し薄暗かった辺りは、めちゃくちゃ明るくなる。



「…………………これは」



 ヘイムダルさんが上を見てそう呟いた。

 俺もこの魔法を初めて使ったから、どうなってるか見て見たい。俺も上を向いた。

 

 太陽がもう一つ。

 それが、こちらめがけて落ちてきている。


 かなり、二次災害が起こらないように考えて、範囲はせまめに、爆風などは起こらないように設定したんだがな…。大丈夫かな、これ。


 周りの人の反応はというと、叶君は何やら嬉しそうに目を輝かせながらそれを見ている。

 桜ちゃん…その他大勢はポカンとした顔。

 リルは尊敬の眼差しで俺を見ている。

 肝心の国王とデイスさんはいつの間にか居なくなっていた。槍のみがその場に刺されている。


 すぐそこまでに、炎の固まりは迫ってきて____


_____

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「ここまでじゃな。…この様子ならば仮に兵が10万体居たとしても今の一撃で終わってたじゃろう」



 ヘイムダルさんがそう言った。

 


「俺の出る幕はねーな。……これが賢者か。おー怖ぇ」



 トールさんがそう言った。

 敵わないと思ってたけど、そんなことはなかった。

 リルの言う通りだったか。


 パチパチと、手を叩きながらちょっと遠くから国王とデイスさんが現れた。

 あれ…? 色は同じだけど、ズボンの材質、さっきとちがくね? まあ、いいか。



「じ、実力は十分のようだな。け、賢者よ」



 あれ、声、若干震えてね?

 そんなことはさておき、デイスさんが槍を引っこ抜きつつ、みんなに呼びかけた。



「よくやったの。実力は…カナタとサクラと同等と言ったところじゃな。帰るぞ」



 こうして俺の実力の測定は終わった。

 


____

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「では、帰っても良い」



 城に戻ってくるなり、急いで玉座に座って、踏ん反り返っている国王にそう言われた。

 

 馬車の中でデイスさんから、本来ならばSSSランクに上げるのだけれど賢者だから当分はあげることができないということと、金を支給するからしばらく活動をしないでくれと告げられている。


 俺は特にどうしても働きたいってわけじゃねーから、それを了承し、金は十分にあるから受け取らないと言っておいたぞ。



「では、俺たちはこれで」

「なにか用があるなら、こちらから呼ぶからの。それまで待機するのじゃぞ」



 とりあえず国王に頭を下げ、俺たちは入ってきた時と同じ人に送られながら、城の外に出た。

 ちなみにSSSランカーの2人は、城に着き、馬車から降りてすぐに帰っちまってるぜ。


 俺とリルと叶君と桜ちゃんで、あの高級アパートまで帰り、部屋の前で2人と別れる。

 結果として、今は俺とリルの二人きりだ。



「わふっ。き…緊張したぁ…!」



 そう言いながらリルはソファに深く座り込む。

 俺も疲れているから、リルの隣に座る。



「そうだな」

「わふ、でもショーはやっぱりふごい。この世界でもう、1番強いと思うよ」

「いやぁ…きっと叶君の方が強えよ」



 なんせ、あの有夢の弟だから…な。

 有夢みたいに数千周とかはしてねーと思うけど、頭がいい叶君なら、なんかやってるだろ。

 


「それにしても私、進入拒否を覚悟してたんだけど…お城の中にすんなり入れてくれたね」

「そういう決まりらしいからな、冒険者を承認するときは。だが、それにしても奴隷じゃねーってのに奴隷扱いされちまったな。今度文句を…」



 あれに関しては俺は少し許せない。

 リルはもう、俺が奴隷から解放させてるんだ。


 だが、リルは首を横に振りながらこう言った。



「全く気にしてないよ。私としては、ずっとショーの奴隷でも良かったわけだし」



 そういえば、リルはあの忠誠の証をそう言って渡してきたんだっけな、俺に。

 だが、今は違うだろ?



「でも、今は違う。俺の彼女…だろ」

「うんっ…」



 リルは俺にもたれかかる。



「ショー…私のこと…好き?」

「ああ」

 


 そう言いうと、リルは黙って強く抱きついてきた。

 やわらか…じゃなくて、出会ったときとは違い、とても暖かい。

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