第339話 いざ、ユグドラシル城へ! (翔)

「わふ…わふ…」



 リルは服をみて悩んでいた。

 城にどれを着ていけばいいかわからないらしい。

 この間、取り合えず良さげなのを俺とリル共々、数着買ったんだが、その買った物のかなから頑張って選んでいる。



「ショー! ここまで絞れたんだけど…どっちがいい?」



 リルがそう言いながら、俺のところに来た。

 はっきり言ってどっちも似合うし、わからん。

  


「リルはどっちがいいと思うんだ」

「わふ、私は…って、決められないだ、決められないからショーに選んでほしい」

「そうだな…」



 ちなみにこれらの服は、叶君にオススメの店を聞いて買ったものだ。

 叶君曰く、そこで桜ちゃんに服を買ってあげた後に、告白したらしい。そんな店だ。


 店員さんもみんなエルフだっかからか、リルが入店拒否されることなどなかったし、いい店だった。

 俺の服はテキトーな場所で買ったんだぜ。


 とりあえず俺は、リルが右手に持っている、獣人用の白いドレスとゆるふわな服のセットを選んでやった。



「これか…これだね! わかった」



 リルは脱衣所に行き、その服に着替えてきた。

 どれもこれも似合いそうな服を、変な口調のオサレなおばさんと選んだから、恐ろしいほどよーく似合っている。

 うん…まあ、めっちゃ高くついたけどな。


 事前に叶君から超高級店だと教えてもらわなかったら、金が足りなかっただろう。

 なお、その店で十数着の服を買ってあげた後、リルはものすごく申しわけなさそうに過ごしてたな。

 


「どう?」

「すごく良いんじゃねーか?」



 正直言うと、俺にこの娘は勿体無いんじゃねーかってくらい可愛い。



「わふへ、そっかぁ。じゃあこれにしよっかな」



 リルは嬉しそうに尻尾をパタパタさせて、散らかした服を掃除機のようにマジックバックでしまった。

 俺はすでに服は着終わってる。もう行ける。

 

 

「わふ…もう出る時間だ」

「ああ、そうだな。準備はできてるか?」

「勿論だよ」

「よし、行くぞっ!!」



 俺とリルは街へ歩き出した。

 とりあえず、手を握っておく。

 リルが驚いた目でこちらを見た。



「手、握るの?」

「…あの城の王は差別主義者だって聞いたからな。緊張してるだろ?」

「うん、実は…」

「まあ、あれだ。何を言われても気にするなよ? あーっとだな、俺はぜったいにリルの味方だからな」

「わふうっ…!!」



 人前だっつーのに、リルは俺に抱きついてきた、というより腕にしがみついてきた。

 仕方ないからこのままで城へ行くことにしたぞ。


 そして、城門前にたどり着く。



「いよいよかぁ」

「ああ、じゃあ入るぞ」



 俺とリルは門前の見張りにギルドカードを提示。

 門を開けてもらうと、老紳士と言えるようなお仕えの人みたいのが待ってくれていた。城を案内してもらえるらしい。


 そのまま俺達はその人についていき、庭を過ぎ、城の中へと入る。


 すげーのな、まじ、内装もヤベェわ。

 リルも俺も口をあんぐりとあけて、その豪華すぎる様を見る。

 大きな大きなシャンデリアに、赤を基本とし、何らかの魔物の皮の毛などを使ったとわかるフワフワの床、おそらく、貝の魔物の裏のキラキラ(真珠層というらしい)を貼り付けて装飾したであろう柱、オリハルコンなどを使ったとみえるその他装飾品…!!

 どれもこれも目をみはる。

 リルは緊張のあまり、俺の手を爪が食い込むほど強く握っている。それに少しで震えてるみてーだな。


 そのまま俺とリルはまっすぐ進んで行き、大きな階段を登り、両開きの扉の前へ。



「ここが、玉座の間でござます。我らが王、ローキス・セッグライ様がお待ちしております。失礼の無いよう、お願いいたします」



 老紳士がその扉を両方とも開け放った。


 玉座の間はかなり横に広く、距離は短めの道のような部屋。

 ここから一直線先に、金ピカの玉座に座った異世界風イケメンが見える。あれがローキス国王っつー人か。

 ………有無を言わせず俺らをこの世界に連れてきた張本人って訳だ。


 そして部屋の両脇には、この国の重役とみえる人や、男と女の兵士、豪華なヒョウ柄の鎧をつけて剣を構えてる強そうな人や、これまた豪華な鎧に身を包み槍を構えてる女騎士。

 あとは、国王の1番近くには、羽衣みてーな白いドレスを着て杖をついてる美人な女の人と…叶君と桜ちゃん。

 叶君と桜ちゃんはこちらを見ている。



「僕の元に進むが良い、勇猛果敢な冒険者よ!」



 国王がそう言った。こうみると、クズな王様と聞いてたが…貫禄はある。若い王だが…。

 ここでちらりとリルの表情を見る。

 緊張で何も考えられねーみたいな感じの顔をしてるな。


 そんなリルを引っ張る形で俺は赤い床の上を進んでいく。ぬぉ…めっちゃ緊張してきた…!


 本当はすぐに辿り着いたんだろーが、もう数時間くらい前に進んだ感覚がしてきたところで、ローキス国王の元に着いた。

 とりあえず、ギルドマスターから教えてもらった通りにひざまずく。緊張して動けないでいるリルを念術で操りながら。



「うむ。よく来たな、えーっと…レッドイヤーのショー・ヒノとその奴隷…? ん、奴隷では無かったか? まあいい…仲間の狼族よ。……そしてもう一人の賢者」


 

 もう一人の賢者っつーのとは、叶君と桜ちゃんが伝えてくれたんだな。

 それは良いとして、予想通り、リルの扱いがテキトーだ。……いや、もしかしたら、普通の待遇よりマシなのかもしれねーけど…。

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