第267話 谷での仕事 (翔)
俺とリルは今日も仕事を受ける。
昨日は村に魔物を討伐に行ったが、今日は谷にだ。
ユーダリルの谷というところに生息している、スクリューフークとかいうDランクの鳥の魔物の羽を手に入れに行くっつーDランク以上のパーティー向けの依頼だ。
今度は片道4時間半。
ちょっと道のりは長いけど、最低1匹狩れば依頼達成、それ以降もスクリューフークを狩れればできる限り全て買い取ってくれるらしい。
依頼人の商人は、Dランクの俺達にそんな期待してる感じじゃなかったが、一応そう言ってた。
俺とリルは今、馬車の中で駄弁っていた。
「御主人、今日はユーダリルの谷に行くんだろう? あそこもすごく綺麗な所らしいよ?」
「そうなのか。所でリル、なんか近くないか?」
リルは何故か、広めのリビングくらいの広さがあるマジックルームの中で、俺の隣に居る。
いや、隣に居るだけなら良いんだが、ところどころ身体が密着してる気がするんだが。
「そうかな? ごめんなさい、離れるよ」
「あ、別に嫌だからとかじゃないぜ。気になっただけだ」
「そうなのかい? …んと、強いて言えばそういう気分だから、かな」
気分て。女の子はやっぱりようわからん。
実を言うと俺は昨日、暇潰しができるものを一切持って来なかった。暇で暇で仕方がねーんだわ、これが。
スキル合成の本をずっと眺めてたってしゃーねーし。
その反省で、今日は色々とSK2が習得・成長ができそうな物を持ってきた。
例えば、最近は全くしてなかった、柔道の練習とかをするためのマットのようなものとかな。
俺がいつも素材を売りに行っている店の人から教えてもらった鑑定のスキル。これの習得のために何か手当たり次第に物を見たり。
リルと盛り上がる話の一つでもできりゃ良いんだがな……1時間くらいしか会話がもたねーんだ。
逆によく1時間も話ができるなと自分でも思うが、4時間半だからな…1時間じゃなぁ…。
朝8時に出て、12時30分ちょい過ぎにユーダリルの谷に着いた。昼食は馬車の中で済ませてある。
「んんっ…あー、やっと着いたね」
「そうだな」
「御主人、早く身体を動かそうよ。スクリューフークを何匹も仕留めるのさ」
俺とリルは探知を使いながらスクリューフークを探した。
探し始めて5分程で見つけることができ、対峙すると、風の魔法を使って襲ってきたりしたが、それ以外は特に何事もなく普通に狩る事ができた。
つーか、リル、ここめっちゃ複雑な道なのに軽々と歩いてんな…。獣人って本当に身体能力高いんだな。
「まずは1匹目だね。せっかく長い時間かけて来たんだから、たくさん狩りたいね、御主人」
「ああ。だが無茶はするなよ。ここは谷だ。数メートル横に移動すりゃ、崖みたいになってるからな」
この谷の下は森。
そして落ちたらまず助からないであろう高さがある。
まあ、確かに絶景ちゃ、絶景何だがな。
_______
_____
__
「これで12匹目だね」
「順調だな」
この山のような谷を散策し始めて1時間半。
リルは未だ疲れてないようだ。あんな華奢でよく動けると思う。俺もあんまし疲れてない。
日頃の筋トレとかのおかげかもしれない。
俺は、スクリューフークが奥の方にこんなに居るものだとは思ってもなかった。
スクリューフーク以外のDランクの魔物も8匹くらい倒したが……よくよく考えたらアレだよな、わざわざ依頼を受けたりしなくたって、魔物が居そうな山とか森とか行って狩ればそのうち魔核も集まるんだよな。
きっと、有夢だったらこういう事はすぐに思いつくんだろうが。
ともかく、時間いっぱいスクリューフークを狩り続けるとしよう。
馬車の御者も今日一日いっぱいは待ってくれるらしいし。
ああ、そうだ、そういえば俺たちはマジックバックを新調…買い足しているんだぜ。
それは物凄い量の荷物が入る。3万ベルしたけどな。
お店の人の話では、2メートルくらいの大きさの魔物が1000匹はギリギリ入るらしい。解体すればもっと入るのだとか。
「御主人、帰ったらCランクの冒険者になるのかい?」
リルはそう嬉しそうに訊いてきた。
「ああ、そのつもりだぜ」
「そうかそうか、じゃあCランクに上がったらちょっとしたお祝いを_______________え?」
突然、俺の後ろを目を見開き見つめ、固まってしまったリル。ちょっと待て、俺の後ろに何がいるんだ。
そっと、俺は後ろを向いてみた。
居た、あからさまにおかしい規格外の存在が。
でかすぎるワシが居た。
俺達の方に向かって飛んでくる、異常なでかさのワシ。
「なん…だよ、アレ」
「わ…わ…わかんな…わかんない…」
見ているうちにだんだんとそいつはオレらに近づいてくる。逃げなきゃ…今の俺じゃ倒せないのは魔力的にわかる。でもどこに?
俺の魔法で地面を溶かしてそこに潜るか?
だめだ、んなことしてる間にヤツは来る。
どうすれば…どうすれば…。
しかし、色々と考えたが時間は無かった。
俺とリルは気がついたら、いつの間にか真っ逆さまに谷底へ落ちていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます