第261話 Dランク (叶・桜)

「あー、ちょっと遊んじゃったね」

「そうね…」

「まあ、今からでも遅くない。これから早速_____」

「冒険者として働くの?」

「いや、違う。実は昨日、もっと効率よくレベルが上げられてお金も稼げる方法を思いついんだ」



 カナタはサクラに見えないにもかかわらず、ドヤ顔でそう言った。

 サクラはなんとなくだが、それを察した。

 触れないことにした。



「………へえ、どんなの?」

「いやまあ、単純な話。まずはDランクぐらいの魔物が出る場所に俺達が瞬間移動すればいいんだ。まあ、完全にこの街の外だけど。そうすれば経験値も、魔物の身体を売ってお金も、手に入れられる」

「なるほど、さすがは叶ね。……だけどお金はローキスさんから支給されるじゃない? なにに必要なの?」



 はぁ…と、カナタは一つ、浅くため息をついた。



「な、なによ」

「あのさ、ローキスさんさ、桜の目を治すためのポーションを渡す条件、なんて言ったっけ? 『倒してほしい敵を倒す』か『120万ベル払う』だったよね。俺は後者の方をしようというわけ」

「え、な…なんで?」

「まあ、それはいくつも理由がある…。全部、ちゃんと聞いて欲しい。取り敢えず念のために、念話で話すね。まず_____」



 カナタはいくつも理由を説明した。

 一つの行動を起こすための理由をここまで考えられるカナタ…考えないようなことを考え、疑わなかったものを今までの行動から見て疑うカナタ…とにかく、サクラは感心した。

 また、言われて初めて気づくこともあった。

 疑問に思ったことは質問し、カナタはそれを的確に解決するような答えを出す。


 

【____というわけ。中には憶測もあるけれど…でも、そう疑ってみて行動した方がいい】

【わかった……はぁ、なんか私さ、この世界に要らなかったんじゃない? 叶一人でなんとかできるでしょ】

【いや、桜が居るからここまで考えられたんだ。俺一人だったら、まあ…そりゃ、のんべんだらりと暮らしてたよ】

【…ふふ、そうね。……じゃあその、カナタのレベル上げメニュー、もう行こうよ】

【そうだね】



 その提案に乗ったカナタは、槍や荷物を持ち、また、サクラにも剣とマジックバックを持たせた。これで準備は完了らしい。



「俺の体の何処かに触れてて」

「うん」


 

 サクラはカナタの腕を掴んだ。

 カナタは何か言いたげだったが、それを止め、そのまま瞬間移動で、イアールンの森という場所へと移動した。

 距離はおおよそ42キロ。

 

_____

___

__



 イアールンの森の入り口近くに、二人は出現した。



「ほい…ついた」

「本当に一瞬ね…。うわ、探知してみてよ叶。もう何匹か魔物がいる。それもDランクやCランクのが」

「ふふ、そうみたいだな。こりゃあ良い。我が力を魔の者共に見せてやろうではないか」



 そう言いながらカナタはどこからか黒い眼帯を取り出し、装着した。

 この眼帯はサクラがカナタの12歳の誕生日に自分で縫ってプレゼントしたものだ。

 学ランの中に入れてあったのを、そのまま持ってきてしまっていたのだ。

 カナタの中二病歴は長い。



「はいはい、調子に乗らないの」

「ついやっちゃうんだ。……じゃあまず、1番近くのから倒そうかな。桜…練習した通りに、俺に補助魔法をかけて。攻撃と素早さの…とりあえず3回ね」

「まかせて」



 サクラはカナタにおおよそ3度、攻撃と素早さの真に当たる補助魔法をかけた。

 カナタのステータスは飛躍的に上昇する。



「これスゲェな」

「ふふふん! あ、私はあとはどうすれば良い?」

「10秒ここで待ってろ」


 

 そう言うと、カナタは桜の前から姿を消した。

 10秒待つこともなく、すぐに豚のようなDランクの魔物の死体を持って戻ってきた。



「はい、いっちょあがり」

「はやっ…」

「なんか一撃で倒せた」

「そうなんだ。やっぱりEランクなんかじゃ足りなかったんだね」

「そうそう。あのままあの城に居たら非効率なレベル上げをする羽目になってたよ。…あと何匹か倒してくる」



 カナタはまた姿を消す。

 そして40秒後、3匹の魔物の死体とともに桜の前に出現した。



「これでもうDランクの魔物は4体倒した」

「レベルが上がってるみたい」

「うん、かなりレベルが上がったね。桜、悪いんだけどこの魔核、俺に使わせてくれない?」

「そう言うのは叶に任せるって、前に言わなかったっけ?」

「ああ。じゃあ使わせてもらうね」



 カナタはDランクの魔核を使い、探知を大探知にし、SKPをMAXまで割り振った。

 その他にも、解体などに割り振ったりした。


 その後、カナタは狩った魔物を桜が持ってきた袋に吸い込ませた。



「よし、これで良い。もっと奥に移動しよう。ここら辺は少なくなってきた」

「うん。わかった」


 

 二人は瞬間移動で3キロほど移動した。

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