第246話 初めての戦闘 (叶・桜)
「ヒャッハァーーッ!」
カナタは嬉々としてパルチザンを、とてもではないが、今日初めて持ったとは思えないような手捌きで振り回していた。
「お、おい…」
「ヒャハッ!? あ…ごめんなさい、取り乱してしまって」
カナタはキリアンに話しかけられると、やっとやりを振り回すのをやめた。練習を始めてから、すでにずっとカナタはこの調子だった。
勿論、とんでもなく、槍のSK2が上がった。
「その…今日の鍛錬は終わりだ」
「あ、終わりですか?」
「あ、ああ。終わりだ」
カナタはどこか名残惜しそうにしながら、練習用の槍を元の場所に返し、サクラの元へと向かった。
一方、桜は目が見えないながらも剣を振り回すだけで勝手に上がっていくSK2のおかげで、なんとか問題なくやれていた。
今や、剣を持っていれば、後ろから誰かが襲いかかってきたとしても、切り捨てる事ができるだろう。
「はあ…はあ…ふぅ……」
「うむ、ごくろうであったっ! 今日の鍛錬は、惜しいがこれで終わりだっ」
「はあ…っ…ありがとうございました」
「凄い汗だぞ、昼飯の前に風呂に入ると良い」
「はいっ……」
クルーセルがサクラから剣を受け取り、物置にしまおうとその場を去った時に、カナタはサクラに近づいた。
「どう、桜。何もされてない? ちゃんと習得できた? ケガとかは?」
「大丈夫、心配しすぎよ。そういう叶はどうなの? なんか、変な声が鍛錬中にずっと聞こえてたんだけど」
「キノセイダヨー」
「………。どうせ、槍を持てて嬉しかったんでしょ」
「はい」
キリアンの声掛けにより、2人は城内に戻って普段着に着替え直し、鍛錬を終了した。
風呂に軽く入り、かなり豪華な昼食をとると、玉座の間に呼ばれた。
「カナタ、ノリノリで鍛錬をしてたそうだな?」
「はい…」
「サクラは、なんとかやれたようだな」
「はい!」
「うむ、では次は魔物を討伐する実習訓練だが、その前に一つ、2人にはして欲しい事がある」
そう言いながらローキスは、いつの間にか1人のメイドが持ってきていた、玉のような物を2人に見せた。
「これは、本来ならば冒険者ギルドで登録したり、パーティを組む時に使うものだ。お前ら2人は冒険者ではないが、パーティとして登録しておけ」
「は、はいっ」
2人はローキスに促されるまま、その玉に手を置き、パーティ登録をした。
これで、経験値がどちらか一方が入手すれば、もう一方も手に入るようになった。
「よし、あとはトールに任せよう」
「ガハハ、やっと俺の番だな!」
声がした方に、2人が向くと、トールがいつの間にか居た。
そのまま2人はトールに連れられ、武器と防具を渡され、それらを装備した後に外に出た。
「おう、お前ら! 一昨日、自己紹介したよな。トールだ。実習に入る前に一つ言っておく。SSSランカーとして、だ。レベルは市民共が思ってるより、かなり大事だぜ?
ちなみにこのことに気付くのは、SSランカーかSSSランカーだけで……」
「……それは、この世界に来た時点で気付いてますよ」
「おう、それは有望だな! ………えーっと……」
「カナタです」
「そうか、ナカタ!」
「カナタです」
そういうやりとりの後に、3人は城を出て、針葉樹のような木が生い茂る森の中に入る。
「いいか、魔物にはランクがある」
「それはデイスさんから一通り教わりました」
「なら、話が早い。とりあえず、Fランクの魔物、ワタッコを何体か討伐するぜ! えーっと」
トールは目をつぶって暫くすると、カッと目を開き『そこダァッ』と言うなり、肩に背負っていた巨大なハンマーを投げ飛ばした。
しばらくして、そのハンマーは自動的にトールの手に戻ってくる。
「えーっと、今は何を?」
「今のは、探知っつースキルを使って魔物を探し出し、俺のこの自慢の武器、ミョルニルで仕留めたんだ」
「なるほど」
その光景を見てすぐに、カナタとサクラにも、探知というスキルを習得した事が知らされた。
「あ、探知を入手しました」
「それは良かったな。ワタッコは半数残してるから、残りをお前らで狩ってこい」
2人が、そのハンマーが飛んでいった方向に行くと、白いワタに赤い目が二つ付いたようなものが、6個ほど浮かんでいた。
Fランクの魔核も5個落ちている。
「桜、俺がやっても経験値は桜にちゃんと入るらしいし、そこで待ってろ」
「えっ…いや、私も戦えるから」
「初めての戦闘なんだし、未知の相手だ。俺は桜にあまり戦わせたくない」
「ん……しょうがないわね。わかった。今回は待ってるね」
そう言って、桜はその場に佇んだ。
カナタは槍を取り出し、ワタッコに向かって突撃をする。アルティメタルでできたパルチザンの刃が、ワタッコをいとも簡単に切り裂いた。
「……桜、やっぱりやってみる?」
「もお、どっちよ。……わかった、やるね。……探知のおかげ、目は見えなくても敵の場所はわかる」
今度は桜が剣を取り出し、一番近くに居たワタッコを切り捨てた。
その後、数秒のうちに群集していたワタッコを全滅させた2人の身体には、暖かい感覚が流れ込んできていた。
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本当にこれも全て皆様のお陰で御座います。
誠にありがとうございます!
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