第218話 到着 (叶・桜)

「着いたぞ、降りろ」



 ローキスは二人に馬車から降りるように言った。



「わかりました。桜、馬車から降りるよ」

「うん…」



 カナタはサクラの手を握り、自分の腕まで持ってきた。

そして、サクラに自分の腕を掴ませた。

 サクラが腕を掴んだことを確認すると、馬車の出口まで歩き始めた。



「今から降りる。段差に気をつけて」

「う…うん」



 こうして二人は、馬車から降りて、エグドラシル神樹国の城の敷地内に足を踏み入れた。



「うわぁ……」



 カナタから、そう声が漏れる。



「ど、どうしたの? 叶」

「本当にゲームの中の世界みたいな感じなんだ! すごいよ、これは……」

「へぇ…そうなんだ…」

「クックックッ、我が邪王の心が疼くっ……!」

「……アホ」



 そんなやり取りをして、立ち止まっていた二人に、ローキスは注意をした。



「何をしてるんだ、二人共。早くこないか」

「あ、ごめんなさい」



 カナタとサクラは再び、城に向かって歩き始めた。

 二人の後ろから、やはり、多くのヒョウのような皮を被った者や甲冑を着た女性らがついてきている。


 3分ほど歩き、一行は城の入り口まで辿り着いた。



「さあ、ここが僕の城だ。ついてくるがよい」

「はっ…はい!」



 二人は城内へと入った。

 叶はキョロキョロと周囲を見回しながら、その情景や、見つけたものを逐一報告している。

 桜はただ、頷きながら聞いているだけだった。


 しばらく歩くうちに、階段まで差し掛かる。



「ここを登って…2階が王座の間だ。そこまで来い」



 ローキスは二人がモタモタとしている理由に気が付いていないのか、スタスタと階段を登っていってしまう。



「あっ…ローキスさん、先行っちゃった」

「……いいよ、叶。手摺とかあるでしょ? 私はそれを辿っていくから、先行ってて」

「いや、そういうわけにはいかない…。ちょっとごめんね」



 カナタは自分の腕からサクラを離させる。そして、サクラの後ろに回りこみ、方と膝裏に手を添え、そのままお姫様だっこをし始めた。



「うっ…うわぁっ!? ちょ、ちょっと叶!?」

「あ、ごめん。驚かせて。でもこれが一番効率がいいから。ちゃんと、俺に掴まっててね」

「えっ……あっ……その…うん!」



 サクラは手探りでカナタの首を探し、それに両腕でしがみつく。

 それと同時にカナタは彼の全速力で階段を駆け上がっていき、そのままローキスとほぼ同時に王座の間へと入った。

 ゼェゼェと息を切らしつつ、カナタは、そっと、サクラを床に降ろす。



「……結婚式の時にする、その抱き方で駆け上がってくるか…」



 一部始終を見ていたローキスはそう呟いたが、お姫様だっこをされたことに若干のパニックを覚えているサクラと、サクラを抱いて駆け上がったことで、半日分の体力を使ったカナタには聞こえていない。


 今のを見て、ローキスはやっと、サクラがもしかしたら目が見えていないのではないかと悟った。


 

「なぁ、カナタよ」

「はぁ……はぁっ……。はい?」

「もしかして、サクラは目が見えていないのか?」

「………ええ、ほとんど。ほんの僅かにしか」

「そうか…………」

 


 目のことをきいたローキスは、カナタにそれだけを言うと、二人をあとにし玉座まで行き、座った。

 そして手を二回叩く。

 すると、サクラとカナタが入ってきた入り口とはまた別の場所から、メイド服をきた女の人や執事の様な人…その他大勢が、この部屋に入ってきた。



「カナタとサクラよ、僕の前まで来い」

「はい」



 カナタはサクラの手を引きながら、ローキスの前まで来る。

 二人が来ると、ローキスは話し始めた。



「さて……僕が、僕達がお前らにして欲しいことは、馬車の中で伝えたな?」

「はいっ…」

「そして、サクラはほとんど目が見えない。そうだな?」

「はい…」

「ふむ…なら良いものをやろう。あれを持ってこい」



 ローキスがそう言うと、執事っぽい服装の男の人の一人が、どこかへ去っていった。

 そしてすぐに、手に1本のガラス瓶を持ってきて戻ってきて、それをローキスに差し出した。



「カナタよ、これが見えるな?」

「はい、赤い液体……ですか」

「ああ、これはな。マスターポーションという物だ。飲めばHPが完全回復する他……身体の欠損部位を再生することができる。無論、視力もな」



 それを聞いたカナタは、そのマスターポーションに注目した。

 是非とも欲しい、そう、カナタは考える。

 


「それで、もし、お前らが僕が言った通りの事をこなすか……、このマスターポーションの市場の値段、120万ベルを払えば、これをサクラに渡さんこともない」

「ほ…本当ですか?」

「ああ」



 カナタの中ではもう、答えは決まっていた。

 はやく、なんとかして120万ベルとやらを稼いで、サクラに使ってあげよう…と。



「サクラ…目、見える様になりたいよな」

「えっ…あ…うん、そりゃあ………でも…」



 サクラがその先を言う前に、カナタはローキスに返事をする。



「わかりました、ローキス…えっと…」

「ローキス国王で良い」

「わかりました、ローキス国王。どちらかを俺はこなしてみせます」



 カナタがそう宣言するのを見たローキスは、一瞬だけほくそ笑んだが、それは誰も見ていなかった。



「ああ、期待しているぞ………。二人共、もう下がって良い。おいお前、この二人に城を案内しろ」

「はい」



 ローキスは一人のメイドを指名した。

 そのメイドはローキスに一礼をすると、二人の前まできて、また一礼をする。



「カナタ様、サクラ様、城内をご案内しましょう」

「…あ……お願いします」



 そうして、3人は王座の間を出て行った。

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